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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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198/623

興味を持つ嫁候補

天正三年(1575年)八月二日

尾張国 織田三十郎屋敷にて


「さて、市よ。昨日の続きを話すが、微々たる程度の興味でも構わぬ。最終的に「仕方ないから、その家に嫁いでも構わない」と思ってくれたらよい」


「三十郎兄上。とりあえず話は聞きます。娘達も、「美味しい物を作れる武士」に興味がある様ですから」


「うむ。済まぬ。では、昨日の続きじゃが、その大名家の末裔を保護し、保護を頼んで来たのは元家臣であり、その末裔の子達の祖父じゃ。


そして、件の嫡男は、その様な複雑な事情の家族を領地の村に戻すわけにもいかないと判断したのだろう。


自らの家臣に召し抱えたのじゃ。そして、祖父が家臣になって一年後、その領地に敵が攻めて来た。


嫡男は岐阜城の兄上に援軍要請の文を出したのじゃが」


「お待ちください兄上。今、嫡男が援軍要請の文を出したと言いましたが、父親は何をしているのですか?自らの領地が危機だと言うのに」


「父の方は、兄上の命令で別の場所で出陣準備をしていた。父も自らが行きたい気持ちはあったが、兄上の命令で最初に行く事になった場所に行き、援軍は他の者達が行く事になった」


「その父は何を考えておるのですか!!領地と我が子の危機なのですよ」


お市が思わず怒りだした。


「まあ待て市。まだまだ途中じゃ。その援軍の者達が到着する前に、嫡男は領民達に避難する様に伝えたが、領民達が「若様が自分達を生かしてくれたから、


若様と共に戦う」と言ったそうじゃ。しかしじゃ、領民と援軍を合わせても三千には届かぬ。


対する敵は三千で、全員武士じゃ。数だけでなく質でも負けておる」


「お待ち下さい兄上。今の話はもしや」


「やっと気づいたか。そうじゃ。美濃国で武田軍三千が、数にも質にも劣る、元服前の童が総大将の織田家に負けた話じゃ」


「あの戦の話は本当だったのですね」


「ああ。その話を聞いた兄上は、儂には勿論じゃが、同盟相手の徳川様にも、各地で戦っていた家臣にも、その事を伝えて士気高揚に使っていたのじゃ」


「兄上。戦の話は本当だと分かりました。ならば尚更、その嫡男に茶々を嫁入りさせた方が」


「まあ待て市。まだまだ途中じゃ。その話を聞いた徳川様が父と嫡男を客将として、城に招き、嫡男の方に


「どうやったら武田を撃退出来る?」と聞いてきたのじゃがな。兄上を通じて、この時のやりとりを聞かせてもらったが、その嫡男は、兄上に勝るとも劣らぬと思える程、


肝が太い言葉を徳川様に言ったのじゃ。市、どの様な言葉だと思う?普通の童ならば、この様な言葉は言えぬ言葉じゃ」


「分かりませぬ。何と言ったのですか?」


「「武田が馬鹿正直に徳川様の思惑に付き合ってくれるとお思いですか?」じゃ」


「まあ!なんと。しかも、それを徳川様の城の中で言ったのですよね?家臣の方々は、お怒りになられたのでは?」


「怒りくるっていたそうじゃ。中には「斬られたいのか?」と言う家臣も居たそうじゃが、当の本人は横に居る父も見ないで涼しい顔をしていたそうじゃ」


「確かに肝の太さは三郎兄上に勝るとも劣らぬ様ですね。尚更、茶々を嫁入りさせたいです」


「市が気にしておる、嫡男の嫁取りもな、不思議なものである大名の末裔の子が、姉と弟なのじゃが、


その姉がな「側室でもいいから、嫁にしてくれ」と嫡男に求めたそうじゃ」


「あらあら。でも兄上。「側室でも良い」という事は、正室の座が」


「その正室の座も仮であるが、決まっておるぞ?」


「話に聞く嫡男は三郎兄上が間違いなく気に入るであろう、若武者ではありませぬか。兄上ならば、その若武者を織田家の一門に入れたがるはず。


それでも嫁取りを進めないのは何故ですか?まさか、男色の気が強いのですか?」


「そうではない。その仮の正室候補が、徳川様の実の娘なのじゃ」


「は?え?意味が分からないのですが?徳川様の娘ならば、三郎兄上の子の誰かしらに嫁入りさせたら良いではないですが。


何故に織田家一門でもない家臣の嫡男に嫁入りさせるのですか?」


「これも出来る限り簡単に話すが、徳川様が遠江国で武田と戦い敗れた時、徳川様の嫡男の三郎様を始めとした面々が、


その嫡男の領地へ避難したのじゃ。そこで三郎殿と正室の徳が、その避難先の嫡男に頼んで家臣達の嫁取り、女中達の婿取りを頼んだまでは良かった、


いや、良くないか。その避難先の家に銭を出させておきながら、徳川様と兄上に銭の無心の文を出してな」


「何ですか、その恥知らずな話は!世話になっている家に銭を出させておきながら、その尻拭いは親頼みなど」


「くっくっく。市よ。やはり、お主も同じ反応じゃな。勿論、兄上も徳川様も同じ反応じゃ。そこで叱る役として、兄上は嫡男の勘九郎様を送って、


二人を叱りつけた上で、避難先の家に銭を半分返したそうじゃ。もう半分は徳川様が出す事になったのじゃが」


「叱りつける役目の方と一緒に二人の元へ来たのですね」


「そうじゃ。ただな、その叱りつける役目を請け負ったのが、まさかの徳川様の御母堂の於大様なのじゃ」


「そ、それはとてつもない大物が」


「まあ、そう思うのが普通じゃな。その於大様は二人を叱りつけた後、しばらくその家に世話になって、


嫡男の方に色々聞いたそうじゃ。最初に聞いたのは

「貴方が何歳の時に母親は亡くなったのか?」で、


嫡男は「自分が三歳の頃なので六年前です」としっかり答えたそうじゃ」


「お待ちください兄上。その話、誠でございますか?三歳で母親を亡くして、父親は六年も嫁取りしなかったのですか。


それは幼子には辛いはずです。なのに、何故その嫡男はすんなり答えたのですか?」


「これも、その嫡男なら有り得ると思ったのじゃがな、嫡男曰く「自分が歳相応の童だと、父上は心配のあまり戦に出られなくなります。なので余程の事でなければ、自分の事は自分でやらないと」と


言っていたそうじゃ。これが九歳の子の言葉かと、於大様は思ったそうで、浜松城へ戻った時も徳川様と話していたそうじゃ」


「それで、於大様がその嫡男ならと思ったから、仮とはいえ正室に徳川様の娘が」


「いや。その様にすんなりと決まったわけではないのじゃ」


「では、どの様に決まったのですか?」


「うむ。時系列で言うと、徳川家が武田と戦った翌年じゃが、徳川様が侍女に手を出して、その侍女が懐妊したのじゃ。しかも、ほぼ同時期に三郎様の正室の徳も懐妊したのじゃ。


徳川様の御正室は築山様じゃ。今川の姫で、気位のとても高いお人じゃ。徳川様は露見したら大変な事になると分かった上で、於大様に話したそうじゃ。


於大様は「産まれてくる子も三郎と同じ可愛い孫だ」と言って、徳川様に言い聞かせたそうじゃ。


そして、月日が過ぎて、徳が産んだ子は男児じゃった。それはそれは徳川家は喜んだそうじゃ。


その二ヶ月後くらいに侍女が子を産んだそうじゃが、この子が男女の双子でな。先の築山様の件も含めて、於大様と徳川様が話し合って、兄上に相談した結果、


前年に三郎様一行が世話になった嫡男の領地へ、時期が来るまで避難する事になったと」


「その嫡男殿は、訳ありな人を引き寄せる力でも有る様ですね」


「そうじゃろうな。改めてじゃが、その侍女と子供達と世話をする者達は勿論じゃが、お願いをする為に於大様まで一緒に来たそうじゃ」


「それはまた、重要だと分かりやすい人選ですね」


「そこで、嫡男は「この双子は徳川家の宝なのだから、何も気にしないで良い。此処にいる我々は貴女達家族を大事にします」と言って、安心させたそうじゃ。


そして、その母になった侍女が、於大様を通じて「娘を嫁にもらってくれ」と頼んだそうじゃ。じゃが、その嫡男はやはり賢いから


「自分は良いが、殿と徳川様の話し合い次第なので」と言って、兄上達に託したそうじゃ。これが、徳川様の娘が仮とはいえ正室候補になっている理由じゃ」


話を聞いていた市は


「何て見事な子なのですか」


少しだけ泣いていた


「弱い立場の者を慈しむだけでなく、自らの判断で動かない理性もあるとは。より茶々を嫁入りさせたいです」


「これこれ。茶々の嫁入り話ではなく、市の嫁入り話なのだぞ。話を戻すが市よ、ここまで話したのじゃ。その家が家臣の誰の家が知りたいか?」


「是非とも」


「良かろう。その家は柴田家であり、市の再婚候補は権六じゃ」


「あの権六殿ですか。しかし、権六殿に話に出ている素晴らしい子が居るとは」


「まあ、当時の権六は目立たない所に居たからな。しかし、権六の子は幼い頃から働いて結果を出している事で、


織田家中では勿論、徳川家中でも「柴田の神童」と呼ばれておった。元服して戦で見事な武功を挙げた今では


「柴田の鬼若子」とも呼ばれておるそうじゃ。戦で討死しなければ、更に出世するかもしれぬ。じゃが、元服したと言えど、歳はまだ十一じゃ。市よ。その様な家に嫁ぐ覚悟は」


「有ります!むしろ、どうにかして茶々を、その「柴田の鬼若子」殿に嫁入りさせたいです」


「方向性が少し違う気もするが、権六と再婚する事を了承したと兄上に伝えておくぞ」


「はい!お願いします」


そんなこんなで勝家の新しい嫁が決まった。

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― 新着の感想 ―
おつやの方が生きていればここの歴史も変わったかもしれない まぁ生きていたら生きていたでおつやの方は5回目の結婚になる上に婚姻した相手が全て死別という疫病神も裸足で逃げ出す特級呪物だからさもありなんと…
ここは史実通りなのね、まあ、他にいないとも言えますけれど。
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