親父の説教後
「六三郎!!元服もして初陣も経験したのにも関わらず、殿にあの様な事を!無礼である事を分かっておるのか!?」
皆さんこんにちは。午前の合戦終了後の事後報告を兼ねた評定で、殿に希望を出したら親父に怒られております柴田六三郎です。
親父が怒るのも仕方ない程、自由な発言をしたけど、俺は天正の先の時代も生きたいし、親父にも生きて欲しい!
その為ならこの場のお説教くらい、なんて事ない。でも親父はかなりのお怒りの様で
「良いか!殿は当面の敵は畿内は摂津国の本願寺と定めておるのに、その先の西国と言えば中国、四国、九州であり、
そこの勢力とは現状、戦う理由も無いのだぞ!それをお主は!要らぬ戦を期待するでない!そもそもお主は!」
あ〜もう、親父。そんな戦う理由なんて、殿は朝廷を使って無理矢理にでも作るに決まってるだろ!
これは言わせてもらおう!親父だって頭の中では理解してるはずだ
「父上!お言葉ですが、本願寺を下して畿内を織田家が完全に制圧したからといって、西国の者達が、
「織田家に従います」と言うとお思いですか!?その様な事は有り得ないと、これまでの歴史が物語っているではありませぬか!
どの時代の天下人も、その家臣達も東に敵が居たなら東へ、西に敵が居たなら西へ。と、東奔西走を繰り返した結果、全ての勢力が臣従したからこそ、
およそ百年程の戦無き世が作られたのではありませぬか!それに、父上はいつまでも前線で戦い続けるおつもりか?
いくら拙者でも、今すぐ家督を継がせろ!とは言いませぬ!ですが、父上がどれ程身体を鍛えても、歳には抗えませぬ!
いつか必ず来る戦場を去る日に、父上が1人で屋敷や城で過ごしていたら、拙者は気が気でなりませぬぞ!
拙者の母上が亡くなる前に、新しい嫁を取るな。と言われたわけではないのならば」
「もう良い!」
あれ?親父の小言が止まった。珍しい。それでも
「父上!ちゃんと考えた上で拙者は、殿に希望しました。父上も少しずつ、次の事を考えてくだされ」
「小童が偉そうな事を言うな!」
親父はそう言いながら部屋を出て行ったけど、多分、親父も理解しているよな?
同日夜
岐阜城内 信長私室にて
「権六よ。昼間は随分と六三郎と言い争いしておったな。離れた儂のところまで声が届いておったぞ。
犬に至っては「止めた方がよろしいでしょうか?」と聞いてきた程であったしな」
「申し訳ありませぬ。倅が殿に希望を聞いてもらっているのに、その内容が」
「六三郎が越前国で新たな銭を作る事か?新しい嫁の事か?それとも西国の戦の事か?」
「新しい嫁と西国の戦の事です。まだ戦を一、二度しか経験してないのにも関わらず」
「権六は六三郎に調子に乗るなと言いたいのだろうが、六三郎の言い分も理解出来る。いつまでも儂や権六達が前線に立ち続けては、
勘九郎達の世代が戦を知らない世代になってしまう。そうなったら、儂や権六が生きている時はよいが、死んだ後に問題だらけになってしまう。
それを六三郎も危惧しておるのだろう。今と先の事を考えて六三郎は西国の戦に参戦したいと発言したに違いないはずじゃ
今すぐに西国で戦をやるわけではないのだから、その時が来るまで、しばらくそのままにしておこうではないか」
「殿がそう仰るなら」
「それとじゃ、六三郎が権六の新たな嫁をと言っていたが、六三郎も元服して武功も挙げたのだから、
これから新しい嫁を取って、六三郎に弟か妹でも作ったら、今以上にしっかりして働くかもしれぬぞ?
それに六三郎も言っておったではないか。「母上に新しい嫁を取るなと言われたわけではないのならば」と」
「それは確かに。亡き嫁には「自分の事は気にせず、新しい嫁を」とは言われたのですが」
「権六。改めてじゃが、六三郎は元服したのだから子育ては終わったのじゃ。お主はお主の嫁との暮らしをしても良かろう」
「殿のお言葉に甘えたいところですが、倅に家督を相続させても大丈夫だと思えるまでは、まだ」
「まあ、それに関しては権六の決断次第じゃ。儂はうるさく言わぬが、新しい嫁はあてかうぞ。六三郎の希望どおりの女傑をな。楽しみにしておれ」
「ははっ」
勝家は複雑な心境を抱えたまま、新しい嫁をもらう事が決定した。




