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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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死兵と化した赤備え達

戦場の混乱の中、赤備えの大将の山県に訃報が届く


「殿!馬場様と内藤様が!」


「言わずとも良い。遅かれ早かれだったのじゃ」


「せめて殿は」


「これ!儂が討ち取られる前提で話を進めるな!」


山県は思わず家臣を一喝した。その家臣に対して


「お主は本陣に戻り、お館様の撤退を助けよ」


戦場から立ち去る様に命令した。しかし家臣は、


「拙者も殿達と共に戦いとうございます!」


命令を拒否した。そんな家臣に山県は、


「阿呆!お主の様な若武者が、この負け戦で成すべき事は、お館様を助けると共に、次の武田の礎となる事じゃ!


武田が再び天下を狙う為には!お館様が生きて、1人でも多くの兵が居なければならぬ!お主の様な若武者は、その為に必要なのじゃ!


だからこそ儂の最期の命令じゃ!生きて、お館様を、武田を支えよ!早う行かんか!」


そこまで言われた家臣は


「殿。御武運を!御免!」


涙を流して別れの挨拶を済ませると、勝頼の本陣へ戻って行った。無事に安全圏まで行った事を確認した山県は、


「さあ!赤備え達よ!織田と徳川の首を取るぞ!命尽きる時まで、突撃せよ!!」


「「「おおお!!!」」」


決死隊八千の半分、四千の兵の鬨の声は、前田利家が指揮する鉄砲隊の若武者達を震え上がらせた。


恐怖で火縄銃の射撃準備がおぼつかない。撃ち手を守る役目の槍持ち達も


「何をしておる!早く撃たんか!」


大声で射撃を促す。そうこうしている間に、


「柵が壊された!!」


柵の端の方から兵の声が柵の破壊を伝えてきた。それとほぼ同時に


「どけどけどけ!」


赤備えの一部が柵内に侵入し、撃ち手と槍持ちを討ち取り、柵も壊しながら、更に進む。


その様子を見て信長は


「いかん!このままでは!お蘭!犬達を助けに行くぞ!出陣じゃ!」


総大将である自らが援軍に向かおうとした。しかし、


「殿!なりませぬ!乱戦状態の彼処に行ってしまっては、殿が討たれる可能性が!」


「討ち取られる事を恐れて戦が出来るか!どかぬか!!」


「なりませぬ!!」


援軍として出陣しようとしていたが、小姓の蘭丸に止められていた。無理に行こうとしていたので、本陣は混乱状態になりつつあった。そんな中、


「三郎殿!」


家康が信長に声をかけ、


「三郎殿。拙者の家臣達が援軍に向かいましょう。大丈夫だと思いますが、万が一、家臣達が討たれてから三郎殿が向かわれても良いのでは?」


と提案してきた。提案を聞いた信長は、


「二郎三郎。良いのか?」


冷静さを取り戻した。そして、


「平八郎と小平太の軍勢ならば、大丈夫でしょう。我々徳川も働かないといけませぬからな」


家康にそう言われて


「済まぬ!此処は二郎三郎の言葉を信じよう」


「忝い。それでは」


信長にそう言うと家康は忠勝と康政の方に振り返り、


「平八郎!小平太!そして、二人の家臣達よ!我々の生まれ故郷の三河国を徳川家の者が守る為に戦ってこそ、


先祖に顔向け出来るというものじゃ!今こそ、三年越しの復讐を果たして来い!」


「「ははっ!!」」


「武田を蹴散らしてこい!」


家康からの出陣命令により、後の世で徳川四天王と評される4人の武将のうち、本多忠勝と榊原康政が援軍として、武田の赤備えに向かっていく


新たな軍勢が登場した事に気づいた山県は、


「新手の軍勢か!!赤備え達!あの者達を攻めよ!柵は一旦捨ておけ!」


攻撃対象を援軍に変えた。


「うおおお!」


赤備え達が徳川の援軍に突撃する。赤備えは既に千人程討ち取られて、残りおよそ三千人。対して援軍は五千人。しかし、赤備え達は死兵と化していたので


止まらない。援軍の方が数は多いのに、押されている。赤備え達は血だらけになりながらも


「さあ来い!お主達をひとりて多く道連れにしてやる」


と、気持ちだけで動いている様な状態で突き進む。それに恐怖した徳川の若武者達の足が止まってしまう


援軍と赤備えの激突は一進一退だった。しかし、赤備え達が少しずつ崩れていく。山県は


「怯むな!こ奴らを退けたら、織田と徳川の本陣まですぐそこじゃあ!」


と叱咤していたが、時折り後ろを振り返り、


(まだか!まだ、お館様は撤退しないのか?何をしておる!)


勝頼の撤退を確認していたが、まだ勝頼が動いてない事に内心の焦りが表に出てしまい、ほんの一瞬、戦況を見ずに本陣を長く見ていた


その一瞬だった。


ターン!


「ぐっ!」


「殿!」


1発の銃弾が山県に命中した。しかし山県は、


「まだじゃあ!まだ、戦は終わっておらぬ!この、赤備えの大将!山県三郎兵衛慰の首、欲しければ、取りに来い!」


落馬せずに自分に注目が集まる様に大声で吠えた


山県の咆哮は武田本陣まで聞こえ、勝頼は


「済まぬ」と一言残し、


「撤退じゃあ!殿軍は」


勝頼が殿を命じようとすると、


「お館様。殿軍は拙者達に」


山県が逃した若武者を中心とした者達が、殿軍に名乗り出た。その者達に勝頼は


「役目を果たせ!」


と激励の言葉をかけて、撤退を開始した。


そして、


「殿!お館様が撤退を始めました」


勝頼撤退の報告を聞いた山県は


「うむ。此処が勝負どころじゃ!赤備え達よ!戦はまだまだじゃあ!気合いを入れ」


ターン!ターン!タタタターン!


赤備えの士気を上げ、勝頼撤退の時間稼ぎをしようと、馬上で姿勢を高くした。その結果、


多数の銃撃が山県を撃ち抜いた。撃たれた山県は静かに落馬した。


山県の落馬は赤備え達を動揺させた。気合いだけで動いていた赤備え達は此処までの無理がたたり、援軍に一気に押された。


「よし!敵大将の首を」


赤備えが崩れた事で、大将首を狙う者も居たが、


「誰の首を取ると言っておる。貴様は儂と共にあの世行きじゃあ」


「ぎゃ、ぎゃああ!」


全身血だらけで動く事もやっとの赤備えに捕まり、山県の元に着く前に討死していた。


薄れゆく意識の中で、その光景を見ていた山県は、甲冑の中に入れていた文を取り、握りしめながら、


「兄、上。兄、上、から、引き、継いだ、赤、備えは、兄上の時、より、強い、軍勢、に、なり、申、した。


そち、らに、行った、ら、褒め、て、くだ、され。お、館、様。今、か、ら、行き、ます、る」


兄の飯富虎昌、主君の信玄の事を呟きながら、息を引き取った。山県が死んだ事で赤備え達は、


「殿、が」


全員、糸が切れた人形の様に崩れ落ちた。中には、そのまま死んだ者も居た。


武田の中心である赤備えはこれで全滅したが、信長は


「大将の四郎勝頼が逃げたぞ!追え!」


「おおおおお!!!!!」


追撃戦を命じた。織田家の足軽達は我先にと、勝頼達を追いかけていく。


こうして、長篠城包囲から始まった長篠設楽原の戦いは織田徳川連合軍の勝利で終わった。

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