初陣は放火からスタート
かなり、ご都合主義な展開ですが、ご容赦ください。
天正三年(1575年)五月二十日
三河国 鳶ヶ巣山砦付近にて
「さて。良き頃合いじゃな。皆、早く戦いたい様じゃが、まだ待つ時じゃ」
「「「ははっ!」」」
皆さんおはようございます。これから初陣に挑む柴田六三郎です。赤備えの皆は俺の命令で待機してくれていますが、酒井様、水野様両名の家臣の皆様も
待機してくれています。まあ、どんな事をやるのか楽しみで見ている人がほとんどだと思いますが。
とりあえず、武田を炙り出して叩きのめす事を早くやれば、俺の役目は恐らく終わりだろうから
「では!始めましょう。赤備えよ、儂と共に火付に参るぞ!武田が我々に気づいたら、あっという間に最前線で戦う事になる。その時は、皆に儂の命を託す!
だからこそ!皆の命を守る事を受け入れよう!鬨の声は要らぬ。では、参るぞ」
俺が言うと赤備えの皆は、静かに頷いた。良かった。テンション爆上げで大声出す奴は1人は居る覚悟してたけど、流石に俺より戦経験有る奴らだから、
時と場合を弁えているという事にしとこう。
で、移動しながら、簡易ダイナマイトを埋め込んだ基礎部分に到着したわけですが、赤備えの皆と土木作業も一緒にやっといて良かったと実感する程、
岩と岩の隙間に綺麗に埋め込まれています。特に下の方に重点的に埋め込まれてます。これは地震と勘違いする揺れが来るでしょうね
では、改めて
「皆。火をつけたら本陣との中間まで一気に走るぞ」
赤備え達は静かに頷く。そして
「では。それ」
俺は持っていた松明を基礎部分に投げた。そして、
「走れ!」
俺の合図で全員ダッシュした、いくら山道と言っても、領地での坂道ダッシュを毎日やってる皆には、走りやすい道だった様で、砦から目標の中間地点にあっという間に到着して様子を見ていたら
ドーン!ドーン!ドーン!と爆発音が鳴ると同時に
ズズズ!と砦が地滑りをしている様な音も聞こえて来た。ここだな!
「赤備え達!砦に再び走り、砦の中でも外でも構わぬ!武器に火を付けて投げつけて来い!そして、武田が炙り出されたなら、
源太郎!お主の采で、皆と共に暴れて来い!儂は水野様、酒井様に戦況を伝えてくる!さあ、暴れて来い!柴田の赤鬼達!」
「うおお!」
「若様の初陣じゃあ!派手に行こうぞ!」
「あんな砦!壊し尽くしてしまえ!」
「おおおお!」
こうして、皆はテンションマックスで砦に向かって行った。で、俺もダッシュで本陣に戻って、
「酒井様、水野様。現在、拙者の家臣達が二の手として暴れております。そろそろ武田が炙り出されるでしょうから、ご準備を」
「「うむ」」
そう言って2人と家臣の皆さんは、あっという間に準備して砦に向かって行った。
〜その頃の砦内部〜
武田の家臣達は、突然の爆発と揺れに右往左往していた
「な、何事じゃあ?敵襲か?」
「わ、分かりませぬ!いきなり大きな音が鳴ったと思ったら、地面が傾きだしております!」
「誰ぞ!外に出て、確認して」
指揮官が言い終える前だった。
ドーン!
「た、大変です。砦の壁が、どんどん削られております!更には中にも爆発する何かを投げ入れられており、一部の兵が確認すると同時に爆発四散したとの事。如何しますか?」
「くそ、こうなれば」
「ご報告いたす!此度の爆発の正体が分かりました!」
「誠か!申せ!」
「此度の爆発、織田徳川の攻撃によるもの!攻撃を実行しているのは、織田の重臣である柴田某の手勢!そして、その手勢は三年前に武田を出奔した飯富兄弟を中心とした者達と、砦の外から戻って来た者からの報告にございます!」
「おのれ〜!親父が武田に謀反を仕掛けたのに、連座から逃れた恩を仇で返しおって!やはり裏切者の子は、裏切者という事か」
「それよりも、この状況はどうしますか?」
「仕方ない。全軍突撃!裏切者達を蹴散らして来い!」
「おおお!」
こうして、砦を守る武田は六三郎の思惑どおり、外に出て戦う事を決めた。その数、およそ500
それを源太郎達赤備えも黙って見ている訳もなく
「兄上!若様の狙いどおり、武田が炙り出されましたぞ!」
「流石若様じゃ!その若様に采を託されたのじゃ!存分に暴れようではないか!柴田の赤備えよ!全員突撃じゃあ!」
「おおおお!」
「おおお!!!」
赤備えの数は砦を守る武田の兵よりも少ないのにも関わらず、鍛え上げられた分厚い身体と、その身体から発する声だけで威圧していた。その威圧に武田の兵の足が止まる
「ひ、ひいい。鬼じゃあ。赤鬼じ!」
「こ、殺され」
「い、嫌じゃあ。中に戻」
武田の兵で先頭に居た者達は言葉を言い切る前に、討ち取られていた。数の差が無意味になるほど、赤備え達は武田の兵達を討ち取っていった
そして、赤備え達は砦前に着くまでに、全員返り血を浴びていたが、テンションマックスだった為にそれぞれを見て笑っていた
その様子を見て砦の中に残っていた武田の兵達は、恐怖に駆られた。失禁してしまう者も出る程だった
武田が出てこない事で一旦冷静になった赤備え達は、
「源太郎殿。若様を待つか?それとも攻撃を続けるか?」
「源太郎殿」
「如何する?」
「兄上」
「皆、若様は間違いなく来るだろう。だからこそ、若様が来た時点で最期の一押しまで、武田を削ろうではないか!もしも、我々だけで制圧しても、若様は我々を叱責せずに「見事」と褒めてくださるだろう。とりあえず例の武器に火を付けよ。城壁にぶつけて、
奴らを丸裸にしてやろう!若様は酒井様に砦を壊す許可もいただいておる!遠慮なく壊して若様の武名を轟かせようではないか!」
「おおお!!!」
武田から見たら全身真っ赤な筋骨隆々の男達が凄まじい大声で叫んでいる異様な光景だったが、一旦攻撃が止んだ事で、再び外に出て攻撃を仕掛けようとしたが、
「投げよ!!」
「おおお!」
威圧感のある声と同時に、再び城壁が爆発していく。砦の中には火縄銃は支給されていなかったので、向かってくる赤備え達を迎撃する事も出来なかった
そして瞬く間に
「そうりゃあ!土屋銀次郎!一番乗りじゃあ!」
赤備えの中でも脳筋度合いの強い土屋銀次郎勝次が砦に一番乗りすると、他の赤備え達も雪崩れ込む。
そして、
「鳶ヶ巣山砦!織田家家臣の柴田家が制圧じゃあ!」
「おおお!」
「我々の主君は柴田の鬼若子じゃあ!鬼神の如き軍略の才、しかと広めよ!」
「我々は柴田の赤備えであり、柴田の赤鬼じゃあ!」
赤備え達は数的不利もなんのその、水野隊、酒井隊が到着する前に、簡易ダイナマイトの助けもあったとはいえ、自分達だけで、砦を制圧した。




