出陣と吉報
天正三年(1575年)五月十七日
三河国 某所
「いよいよですな若様!憎き武田との戦が!」
「そう慌てるな源太郎。殿と徳川様がどの様な場所で武田と戦うかも決まってなければ、我々の布陣する場所も決まっておらぬから、地形も含めて色々やりたいのだがな」
皆さんおはようございます。原作、武田との一大決戦に向けて進軍するおります柴田六三郎です。昨日、伝説の足軽、鳥居強右衛門に飯を出しただけでなく、
彼の運命というフラグを折る為に、簡易ダイナマイトを武器としてプレゼントしたんだけど、どうなったかな?史実の様に武田に見つかって、磔から串刺しで死亡!
なんて事になったら、親父も俺も運命から逃れられないかもしれないから是非とも生きていてほしいんだけどさ。
ただ、俺の近くには
「六三郎殿!「柴田の神童」と呼ばれる程の戦、しかとこの目で見せてもらいますぞ!」
「待て待て三郎。一応、六三郎は初陣なのじゃぞ。あまり武功を挙げる事を強要してはならぬ。だが、儂も六三郎の戦は楽しみじゃ」
「勘九郎義兄上も、やはり本音は楽しみなのではないですか。きっと、我々の想像を超える事をやってのけると拙者は期待しております」
と、何故か俺への期待値が上がりまくってる勘九郎様と三郎様の嫡男コンビが居ます。小姓でもない俺が2人の近くに居るのは、あまり良くない気がするんだけどな。
で、そんな俺の考えなんて2人は知らないので、色々盛り上がってますが、
「勘九郎!軍議を行うぞ!早く来い!」
「三郎!お主もじゃ!」
それぞれ父親に呼び出されて、俺から離れていった。これで少しは控えめにすごせるはずだよな
六三郎は少しだけ気が楽になったが、この後、今以上に働かされる事になる
〜軍議場にて〜
「さて!皆、武田との一大決戦が近づいて来ておるが、気合いは入っておるか!!?」
「勿論です」
「早く戦いたいと血が滾っております」
「武田を叩けば、様子見をしている腑抜け共も織田家に膝を屈しましょう」
「うむ!織田家は気合い充分じゃな!二郎三郎!徳川家はどうじゃ?」
「三郎殿!我々も負けておりませぬ!皆、三年前の三方ヶ原の敗戦の屈辱を忘れておらぬな!!?」
「当然じゃあ!」
「殿や我々を守る為に死んだ者達の為にも、武田を倒す!」
「三河武士の意地にもかけて、徹底的に武田を叩きましょうぞ!」
「うむ!皆の気持ちは充分伝わった!三郎殿。我々も気合い充分ですぞ」
「うむ。ならば、これから軍議を行う。二郎三郎、お主が武田と野戦で戦うならば「此処が的地である」と決めた場所は、何と言う名の、どの様な場所じゃ?」
「三郎殿。これより向かう場所は設楽原という場所で、我々の総勢三万が鶴翼の陣を展開しても大丈夫な広い場所なのですが、少しばかり難点が」
「どの様な難点じゃ?」
「少々勾配が有り、騎馬で進もうとするには腕を要する場所であり、言うなれば汁椀の様な地形。とでも言いましょうか」
「ふむ。単純な野戦をするには少々難しい場所ではあるか。ならば、この為に買い溜めたと言っても過言ではない種子島の大量投入の使い所じゃが、どの様に使うか」
「種子島の有用性は拙者も知っておりますが、発射する前に突撃されたら、その有用性も消えてしまいますからな。野戦の中に種子島を組み合わせるとなると」
家康が言葉に詰まると、一旦軍議が煮詰まった。そんな時、
「殿!長篠城の守りに着いております、服部様からの文でございます」
徳川家の足軽が半蔵からの文を家康に渡した。その文を家康が読み出して間もなく
「はっはっは!な、何と!信じられぬ!三郎殿、是非とも読んでくだされ!間違いなく、三郎殿も大笑いしてしまいますぞ」
「そうか。どれ」
家康から文を受け取って文を読み出した。すると、
「はっはっはっは!ま、誠か!?俄には信じられぬが、あ奴ならば、この様な事も巻き起こしても納得じゃ!」
信長も家康同様に大笑いした。両家の家臣達は訝しんだが、落ち着いた信長から
「ああ、済まぬな。この戦の発端である長篠城を攻めていた武田の警戒網を援軍要請の使者として岡崎城まで来た鳥居強右衛門という名の足軽がな、
権六の倅の六三郎から貰った武器のおかげで命からがら生き延びて、我々が来る事を伝えただけでなく、
その武器が武田の調略で寝返った愚か者に奪われそうになったが、扱いを誤った結果、その武器で死んだそうじゃ。これは吉報であり、吉兆じゃ!
権六!お主の倅も軍議に参加させる!儂達では思い浮かばない策を出すかもしれぬ。そうでなくても、何かしらのきっかけを得られるかもしれぬ」
「それは良いですな。柴田殿。儂からも六三郎殿の知恵を聞いてみたい」
「殿と徳川様がお決めになられたなら、拙者としては異論ありませぬ。あ奴の様な若造の悪知恵でも、戦の勝利に役立つならば、どうぞお使いくだされ」
こうして、六三郎はもう一度軍議に参加する事が決まった。
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