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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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英雄の到着

天正三年(1575年)五月十五日

三河国 某所


「つ、着いた!岡崎に着いたぞ!!」


声の主は長篠城から1日半かけて、川を泳ぎ、道を走る事、推定60キロ。疲れはあったが、目的地まであと少しに来た事により、気力が漲っていた。


そんな強右衛門は岡崎城の城門まで行くと、


「何者じゃ!」


と、門番に当然止められるが


「拙者は長篠城城主、奥平家に仕える鳥居強右衛門でござる!長篠城が武田の大軍に囲まれて攻撃を受けているので、主君の奥平美作守様より。徳川三河守様に援軍の密書を渡す命令を受けた次第。


三河守様へ何卒、この事を、お、伝え、くだ」


そこまで言うと強右衛門の意識は無くなった。


〜数時間後〜


「ふむ。確かにこれでは、簡単に援軍の要請は出来ぬか」


「これは、この鳥居強右衛門とやらを褒め称えるべきでしょうな」


「こ、ここは!?」


「起きたか強右衛門。疲れておるであろう。まだ休め!」


「強右衛門よ!奥平家の危機、よくぞ伝えてくれた!!お主の命懸けの働き、見事じゃ!この徳川三河守、褒め称えようぞ!」


「え!?徳川三河守様!で、では、この場所は岡崎城で間違いないのですか!?」


「うむ!十五里もある長篠から岡崎までよくぞ来た。しかも、奥平美作守からの密書には武田の警戒網に見つかり殺された伝令は多数と有る。


これでは我々に武田の情報が伝わらないわけじゃ。その様な危険な状況でも、よくぞ役目を果たしてくれた!」


「そのお言葉だけでも過分な、有り難き幸せなのですが、何卒、長篠城へ援軍を!」


強右衛門は家康に平伏した。そんな強右衛門に家康は


「安心せい!いつでも出陣出来る様に準備は整っておる!それに、儂の軍勢だけではないぞ!ですな、三郎殿」


「二郎三郎の言うとおりじゃ!鳥居強右衛門よ。お主の命懸けの働き、この織田弾正忠からも褒め称えよう!よくぞ役目を果たした!」


信長の言葉に強右衛門は


「お、織田弾正忠様?徳川家と同盟関係なのですから、共に岡崎城に居てもおかしくはないですが」


強右衛門の質問に信長は


「武田の動きを危惧していたのじゃが、情報が入って来なかったから動けなかった。まさか、一万以上の軍勢に囲まれていたとは。


そんな死ぬ可能性の高い中でも、よくぞ伝令の大役を買って出た上に、完璧に遂行したお主の働き、誠に見事じゃ!この戦、当然織田家も参戦するぞ!」


「ま、誠でございますか?これで殿を始めとする城の者達が助かる」


そう言うと強右衛門は泣いていた。そんな強右衛門に家康は


「強右衛門。とりあえず腹に何か入れよ。飲まず食わずで来たのであろう」


「お心遣い大変ありがたいのですが、飯が出来る時すら惜しいのです。早く城の皆に伝えないと」


そんな強右衛門に信長が


「もう既に出来ておるぞ!直ぐに食えるから食っていけ!六三郎!持って来い!」


「はい!ただいま!」


信長に呼ばれた六三郎の持っているお膳には、うどんとおにぎりがのっていた。それを見た強右衛門は


「ありがたく頂戴します」


と、おにぎりを三口で食べて、うどんを一気に啜った。すると、


「力が漲ってくる様です!とても美味い飯、忝うございます。ところで、この若武者殿は、織田様の小姓なのでしょうか。拙者の様な足軽と違い、風格というか威厳を少なからず感じるのですが」


「はっはっは。強右衛門よ。六三郎に少なからず風格や威厳を感じるか」


「は、はい」


「まあ簡単に紹介しておこう。こ奴の名は柴田六三郎。柴田権六の倅じゃ」


「あの「鬼柴田」と呼ばれる柴田様の御嫡男ですか。それはそれは失礼しました。拙者の様な足軽でも、その武名は知っております」


「強右衛門よ。此度の武田との戦、織田家と徳川家の双方を合わせたら三万もの軍勢にもなる、落ち着いて戦えば我々の勝ちは揺るがぬ」


「ま、誠でございますか?しかし、武田の足軽は一人で他国の足軽五人分の強さを有すると言われておるので、拙者は不安なのですが」


「そう思うのも仕方あるまい。じゃがな強右衛門よ、お主も聞いた事があるはずじゃ。三年前に美濃国で武田の三千の軍勢が、元服前の童が総大将の、数にも質にも劣る織田家の軍勢に敗北した戦の話を」


「その話は聞いた事が有りますが、正直なところ信じられないのが本音です。それに、その時の総大将が元服前の童という点が、より疑惑を強めるのです」


「そうか。まあ、そう思うのも仕方あるまい。だがな強右衛門よ。今、お主の目の前に居る、この柴田六三郎が件の戦の総大将だった童じゃぞ!」


「え?ま、誠にございますか?」


「ああ。誠じゃ。そもそも、その様な軍勢で武田とまともに戦えば、普通は全滅するか、負けた家の者は立場を問わず奴隷にされるのが常であろう」


「で、では。あの戦は」


「ちゃんと本当に起きた戦で、本当に織田家が勝った戦じゃ。そして、その戦での見事な策と行動の結果、この六三郎は「柴田の神童」と呼ばれだした。そうだったな六三郎」


「拙者としては勘弁願いたい呼ばれ方なのですが。とりあえず鳥居様。殿にも徳川様にも油断無く、家臣の方々も油断無く戦えば武田は倒せます」


「有り難きお言葉です。お三方のお言葉、早く殿や皆に伝えたいので、そろそろ出立したいと思います」


「我々の出陣と共に戻らぬのか?」


「そうじゃぞ!その方が安全に」


「大殿。織田様。有り難き提案なれど、少しでも早く皆に援軍が来る事を伝えたいのです。御免」


強右衛門がそう言って部屋から出ようとした時に六三郎から


「鳥居様。出立の前にこちらを」


「柴田様。これは?」


「美濃国で武田に勝った時に使った武器です。使い方は、この出ている紐に火をつけて、筒の中に入っている硝石に火が入りますと、爆発します」


「は、はあ」


「もし、戻る道中で武田に見つかったなら、この武器に火をつけて、武田に投げてくだされ」


「その様な武器を五つも。誠に忝うございます。それでは改めて、出立します。御免」


こうして強右衛門は長篠城に向かって走り出した

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― 新着の感想 ―
なるほどこうしてフラグを折るのですね
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