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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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閑話 主君の元服を見た日の夜

天正三年(1575年)三月一日

美濃国 岐阜城内にて


「若様の元服のお姿をこの目で見る事が出来た。それだけで儂は満足じゃ。孫娘の道乃が、その若様の側室になるかもしれぬ上に、孫の三吉は数年後に斎藤家を再興させて当主になるやもしれぬとなると、


儂はこの世で成せる事は全て成したかもしれぬ。あとは何をしたら良いか分からない程じゃ。儂が今年中に死んでしまっても、娘の紫乃が居るから安心じゃろう」


声の主は六三郎の家臣の利兵衛。傅役的な役割も担っている利兵衛からしたら主君の元服の場に立ち合わせてもらい感無量であった。


そして、幼い孫達の行く末にも安心しており、心の中ではいつ死んでもいいと思っていた。そして、いつの間にか眠りについた利兵衛は、不思議な夢を見る


〜利兵衛の夢の中〜


「ここは?見た事の無い場所じゃが」


「利兵衛!!」


突然、後ろから呼ばれた利兵衛は振り向いた。そこには


「殿!!え!?殿が目の前に居るという事は、此処はあの世と呼ばれる場所なのですか?ならば、拙者は」


利兵衛が軽いパニックになっていた。目の前にかつて仕えていた、「美濃の蝮」の異名で呼ばれていた斎藤道三その人が居たのである


「と、殿。拙者は殿の元へ来たという事なのでしょうか?あのまま死んだと」


「まあ、先ずは落ち着け」


「は、はあ」


道三に言われた利兵衛は深呼吸をして、自らを落ち着かせた


「落ち着きました。殿。慌ててしまい申し訳ありませぬ」


「ふふっ。若い頃から利兵衛は変わらぬな。戦では鬼神の如き働きを見せるのに、儂と二人だけになると慌てて」


「今となっては懐かしい話にございます。改めてですが殿。拙者は死んで殿の元へ来たのですから、これからは」


「待て利兵衛!儂から先に言わせてくれ」


「は、はあ」


「先ずは儂の孫を連れて落ち延びた事、そして、孫の子である曾孫達を育ててくれた事、ただただ感謝する」


「殿。勿体なきお言葉にございます。それに最早、拙者は死んだ身でございます。これからは拙者の最期の主君であり、殿の曾孫の一人の道乃の夫になる六三郎様が、道乃と三吉の事を守ってくださるでしょう」


「利兵衛。その事じゃがな」


「何でしょうか?」


「お主は未だ死んでおらぬぞ!?」


「え!?では、殿と拙者が居るこの場は一体?」


「この世とあの世の間。とでも言えば良いかのう。まあ、それよりもじゃ。利兵衛!よく聞け!」


「は、はい」


「お主はまだ死んではならぬ。それこそ、最低でも二十年は生きよ!」


「そ、それはいくらなんでも」


「よいか!お主が現在仕えておる若者は、婿殿の天下統一の為には絶対必要なのじゃ!」


「六三郎様が織田様の天下統一に絶対必要」


「そうじゃ!あの若者も、その父もじゃ!あの親子を支える為に、お主は今死んではならぬ!お主が今死んでは、あの若者を支えられる者が居なくなるばかりか、儂の曾孫、つまりお主の孫達まで巻き込まれてしまう程、


戦の世か長引いてしまう。だからこそ利兵衛!儂の元へ来てはならぬ!」


「殿」


「それに、言わせてもらうが婿殿は甘い!あの様な家中のまとめ方では、必ず家臣から裏切者が出る!それこそ、天下統一まであと少しの所で、裏切者に殺されるであろう」


「と、殿。それはいくらなんでも」


「利兵衛。無いと言い切れるのか?」


「それは」


「だからこそじゃ。婿殿が天下統一を成し得たなら、帰蝶も曾孫達も戦無き世で生きていける。その為にも利兵衛!お主は生きて、あの親子を支えよ!」


「と、殿」


「儂から言える事はここまでじゃ。ほれ、早く戻れ」


「し、しかし」


「戻れと言っておるのが分からぬか!!」


「は、はい!!」


道三に怒られた利兵衛はいつの間にか、その場から消えていた。そして道三は


「曾孫達と帰蝶の事を頼んだぞ」


そう言って姿を消した


そして利兵衛はと言うと、


(夢であったのか?今は亡き道三公に会うとは。しかし道三公は、織田家家臣から裏切者が出て織田様が天下統一まであと少しの所で殺されると仰っていた。


それを六三郎様や大殿が止めるからお二人を支えていけと、道三公は儂に今死んではならぬと。織田家による天下統一が成されたなら


帰蝶様も道乃も三吉も平穏無事な人生を生きる事が出来る。それが道三公の望みと申されますか?


分かり申した。老骨なれど、しぶとく強かに生き延びてみせまする。あの世から見ていてくだされ。道三公。いえ、殿!)


利兵衛が新たな決意を持った時だった


ドタドタドタドタドタドタ


騒々しい足音が聞こえて来た。足音が止んだと同時に


スパーン!


襖が勢いよく開けられた。開けたのは六三郎だった。後ろに源太郎達もいる。それだけでなく、勝家も居た


「利兵衛!無事か!ちゃんと呼吸出来ておるか!?」


「六三郎様?一体どうしたのですか?」


「源太郎達が利兵衛が朝食の時になっても起きて来ないと言うから、嫌な予感がして走って来た!」


「六三郎様。ご心配かけて申し訳ありませぬ」


「儂の元服を見たから安心してそのまま。など許さぬぞ!まだまだ長生きせよ!」


「利兵衛。とりあえず何とも無いのじゃな」


「大殿まで。申し訳ありませぬ」


「利兵衛。お主も儂と同じくらいの年寄りじゃが、戦無き世が来るまで、死んではならぬぞ?


倅の世話役や、他の家臣達をまとめる仕事、更には幼子への文字の読み書き等、利兵衛しか出来ぬ役割はあるのだから、身体に気をつけて長生きしてくれ」


「大殿。ありがあきお言葉にございます」


「利兵衛の爺様に何かあったら、我々では小吉に教えられるのは武芸しかないのですから、小吉に内政の基礎を教える為にも長生きしてくだされ」


「利兵衛殿しか出来ぬ事は多々あるのですから」


「我々も手伝える事は手伝っていきます」


「先ずは身体を大事にしてくだされ」


「とにかく無事で良かった」


主君達にこれ程まて信頼されていると実感した利兵衛は


「申し訳ありませぬ。改めて頑張っていきます。先ずは朝食をいただきます」


決意も新たに晴れやかな顔をしていた

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