思い伝えし動くは少女
新年あけましておめでとうございます。この作品を書いて早4年、何とか今年中に完結させたいと思っております。
天正三年(1575年)二月十四日
美濃国 柴田家屋敷内にて
「よし。これで向こうに持っていく物は全て揃ったな」
「若様。元服はまだなのに、既に元服しているかの様に見えます。若様達を信じて拙者達家族の秘事を伝えた事は間違っていなかった事を実感しております」
「利兵衛。元服してやっと第一歩じゃ。戦無き世を殿や徳川様。そして父上と共に作る為に働くのじゃ。
ここから先は数年に一度は領地変えで、あちこちに移動するかもしれぬ。その時は着いてきてくれ!」
「当然でございます。この年寄りが若様のお役に立てるなら、どこまでも着いていきましょうぞ」
皆様おはようございます。元服を岐阜城で行う為に出発準備をしております柴田吉六郎です。
昨日、殿から問題文付きの許可状が届いて、答えは全く出ない状態で出発するのは不安ですが、岐阜城に着く前に答えを考えておきましょう
で、俺と利兵衛が出発準備をしていると、
「「「若様!!!出立の共は誰にするか決まりましたでしょうか?決まってないならば、是非とも拙者を!!!」」」
赤備え全員が「自分を共に!」と希望してきました。まさかの赤備えのリーダーの源太郎までも希望してます。とりあえず落ち着かせて、大広間に移動して
「皆、何故そこまで共を申し出る?岐阜城に行っても何かするわけでもないし、道中どこかに寄る予定もないのだぞ?」
「若様!我々全員、若様の元服の御姿を元服の日に見たいからこそ共を希望しておるのです!ですが、全員を共に連れて行く事が不可能だと分かっているからこそ、自分だけでも!と思っておるのです!
本来なら皆をまとめなければならない拙者も、思いは同じです」
と、源太郎が思いを口にしました。
「う〜む。皆の気持ちは誠にありがたいが、儂としては全員を平等に扱いたいからなあ。どうするべきか。利兵衛、何か良い案は無いか?」
「若様。籤で決めたら如何でしょうか?」
「籤か。確かに籤ならば、己の運だけの勝負になるな。よし!籤で決めよう!人数は5人!確率は40分の1!それで恨みっこ無しじゃ!良いな!?」
「「「ははっ!!!」」」
と、いう事で籤作りの始まりです。本当なら出発してる時間だけどしょうがない。太さがほぼ同じ10センチくらいの棒を200本準備して、その内5本の先端に赤の墨汁で色付けして、乾いたら完成です
その籤200本を箱に入れて皆の前に持っていきまして
「待たせたな。今から籤の説明をするぞ!この箱には200本の3寸程の棒がある。その中に赤の墨で先端が染まっておる当たりの5本の棒を引いた者を、此度の共の者とする。恨みっこは無しじゃ!」
「「ははっ!!」」
「では、今から儂が箱を持っていく。1人ずつ籤を引いて、同時に結果を見る為に目を伏せておく様に!」
「ははっ」
「では、源太郎から」
ガラガラガラと棒を掻き混ぜる音がして、一本だけ引く。俺は結果が見えたけど、何も言わないで次へ
「次は」
「次は」
と、籤を引かせて200人全員が引き終えました。そして
「では皆!目を開けて結果を確認せよ!」
俺の声で皆が籤を見ると
「よおおおし!」
「当たったあ!!」
「来たああ!」
「うおおお!」
と、喜びの声が4名、声にならない程喜んでる1名が居ました。まあ、その1名は源太郎なんですけど
「さて、共として連れて行くのは、加藤庄左衛門勝広、新村三四郎勝道、土屋銀次郎勝次、内田喜三郎勝明、そして飯富源太郎虎昌の5名じゃ
本来なら、今日出立する予定だったが、皆の準備もあるだろう。出立は明日に変更する」
「若様!その心配は無用にございます!我々赤備え全員、誰が選ばれても良い様に準備は済んでおります」
「源太郎よ、誠か?」
「はい。後は部屋に戻り、荷物をまとめている風呂敷を取ってくるのみです」
「そうか。ならば5人全員、急いで取ってまいれ」
「ははっ!!!!!」
で、5人が荷物を取りに行ことした時、
「「吉六郎様!お願いしたい事があって来ました!お時間有りますでしょうか?」」
光と花の姉妹が来ました。何故か道乃も連れて。いきなりの嫁の登場にそれぞれの旦那が
「光!その様に不躾なのは」
「花。若様は今は」
「「今は吉六郎様にお話があるのです!!お叱りは後で聞きます!!」」
嫁を止めようとしたら、逆に止められてしまいました。まあ、最悪出発は明日でも良いから、話を聞きましょう
「源太郎、源次郎。とりあえず話を聞いてからじゃ。で、光と花よ。道乃を連れて、どの様なお願いがあるのじゃ?」
「「はい。と、言いまして私達姉妹ではなく、こちらの道乃ちゃん。じゃなかった、道乃様からのお願いなのです」」
「ほう。道乃から。道乃、言ってみよ」
「はい。爺様含めて多くの人が居る中で言うのは恥ずかしいですが、吉六郎様!元服しましたら、私を側室として嫁にしてください。正室は於古都様で決まっているのですから、せめて側室として」
は?え?何でいきなりの逆プロポーズ?俺がパニックになっていると利兵衛が
「道乃!いきなり何を言うかと思えば!」
利兵衛が道乃を叱ってます。それでも道乃は
「爺様に何を言われても、私は吉六郎様のお側に居たい!」
俺への側室希望を口に出している。こんな状況だと俺がまとめるしかないか
「道乃」
「はい」
「道乃の気持ちは誠にありがたいが、道乃は殿の御正室の帰蝶様の数少ない血縁者。少なからず武家の姫じゃ。儂としては道乃が側室になりたいと思うのは喜ばしい。
だがな、殿や帰蝶様が道乃を何処ぞの大名の正室に。とお考えなら、儂は何も出来ぬぞ?とりあえず殿と父上に話してからじゃ。それでも待てるか?」
「吉六郎様の側室になれるならば、私は待ちます。側室になれないのであれば」
「待て待て待て!そこから先は口にするな!道乃。先ずは儂に元服をさせてくれ」
「はい。申し訳ありません。ですが、私は本気で思っております」
「分かった。
で、何とか場をおさめて源太郎達に荷物を取りに行かせて、全員集合してから
「全員揃った様じゃな。では、岐阜城へ出立じゃ」
少々遅めの出発です。
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