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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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問題文付きの許可状

天正三年(1575年)二月十三日

美濃国 柴田家屋敷内にて


「若様。織田様からの文でございます」


「かなり早いな。これは利兵衛の同席の許可を期待しても良いかもしれぬな」


皆さんおはようございます。岐阜城へ出発する準備をしておりました柴田吉六郎です。三、四日前に殿へ利兵衛同席の許可を含めた事前連絡の文を送っていたのですが、返答が来たっぽいです。開けてみましょう


「え〜と。「吉六郎よ、お主が希望した利兵衛の同席、許可しよう。権六にも伝えておく。そして、この問いのお主なりの答えを、岐阜城に来た時に儂に聞かせよ


「お主が儂の立場だったとする。東と西、それぞれに兵が多数いる強大な敵がいて、西の敵は統率が取れているが純粋な武士の数が少ない。そこに家臣で兵の数だけは家中で一番多いが兵の質は精強とは言い難く、大将としての能力は並な者が当たっている。


敵に甚大な被害を与えておらぬが、味方にも大した被害は無く、凡戦を繰り返すに止まっておる。


対して東の敵は数年前に代替わりをして、家中の統率は取りきれておらぬが、戦慣れしている精強な武士を多数揃えている。


そんな東西それぞれの強大な敵を、どう対処するか神童の考えを聞かせよ!」


(え〜と、殿?これから元服する戦経験少ない人間にこんな事を聞きます?しかも、「俺が殿の立場だったら」と書いてあると言う事は、ちょっとした距離の東西じゃなく、日本全体の事を言ってるんだよな。


難しいな。殿は恐らく、どちらか片方に全軍をぶつけたら、もう片方から攻撃される可能性を危惧しているんだろう。う〜ん)


俺が悩んでいると、


「若様。織田様からはどの様な事が書かれていたのですか?先程から考えこまれていた様ですが?」


利兵衛が呼んでいた


「ああ、済まない。殿からの文にな、儂の元服の儀に利兵衛を同席させても良い。と書いてあるのだが、その後に、「岐阜城に来た時に、この問いについてお主の考えを聞かせよ」と書いてあったからな」


「同席のお許しを得られるとは!感無量にございます。しかし若様。若様がかなりお悩みになるとは、かなり難しい内容なのですか?」


「うむ。簡単に言うと、「東西を強大な敵に挟まれている場合、儂だったらどう動く?」と言う内容なのじゃが、殿は「儂の立場になって考えてみよ」と言っておる」


「若様、それは」


「利兵衛なら早い段階で分かるか。これは近場に反抗的な勢力が有る。とかの話ではなく、日の本の東西に一つでも対応を間違えたら織田家を滅ぼすかもしれない勢力への軍事において重要な話なのじゃ」


「その様な重大な事を若様に問うとは、織田様も神経をすり減らしているんですな」


「まあ、文の中には西の敵に当たっている家臣の兵が精強とは言い難く、大将を務める家臣の能力も並とある。それで、敵に甚大な被害は出てないが、味方も甚大な被害は出ておらず、凡戦を繰り返すのみとも有る


ただ、西の敵は統率が取れているが、純粋な武士の数は少ない。と有るから、百姓が中心かもしれない。そして、その百姓達を支援している者が、殿の仰る西の敵の本体なのだろう


対して東の敵は数年前に代替わりして、家中の統率が取りきれてないが、戦慣れしている精強な武士を多数揃えている。と有るが、分からん!」


「若様。ここは水野様にも聞いてみてはどうでしょうか?戦経験豊富な方ですので、何か得られる物も有るかもしれませぬぞ」


「ふむ。それもそうか。よし、利兵衛。水野様の元へ行くぞ」


と、言う事で水野様の部屋へ行きまして


「水野様。殿から拙者にこの様な文が届いたのですが、水野様のご意見を聞きたく」


「ほう。先ずは件の文を見せてみよ」


そう言って信元は文を手に取って読み出す。そして


(文の内容から察するに、西の敵とは本願寺。そして当たっている家臣は佐久間殿か。確かに佐久間殿の兵達は可もなく不可もなく。ではあるが、それでも凡戦を繰り返すのみ。とはおかしい。


これは佐久間殿は手抜きをしておるな。殿が嫌う事を、立場が上の佐久間殿が率先して行なうとはな。


このままだと佐久間殿は何かしらの処分を受けるだろうが、儂が口出しして余計な恨みを持たれても叶わんから、ここは静観しておこう


そして、東の敵じゃが。これは武田の事じゃろう。信玄坊主が死んで確かに代替わりしたが、殿は武田家中が統率されておらぬと読んでおられるか。それでも戦慣れしている精強な武士が多数いる事は事実じゃ。


しかし、殿がこれ程の重要な事を元服前の子に問うとは。相当、頭を悩ませておるのじゃろうな。いくら吉六郎か神童と呼ばれておるとはいえ)


信元も簡単に言葉が出なかった。それでも何とか絞り出して


「ふむ。吉六郎殿。お主はこの文を「殿の立場になって考える様に」言われておるが、殿の立場で考えて、どう思った?」


「一つでも動きを間違えたら、状況が織田家不利になってしまうと」


「ほう。何故、そう思う?」


「殿の文から察するに、どちらか片方に全軍を投入したら、もう片方から攻撃を受けてしまう事を危惧しているのだと。それに、もしも東と西の敵同士が手を組んだ場合、織田家が包囲されてしまい、徳川家と共に戦を行なう事が出来なくなるので、


慎重に考えて動かないといけないと思いました」


(殿の立場に立って考えたら織田家が包囲される可能性が出たか。この歳で日の本全体の事を考えるとは)


「ふむ、それでは吉六郎殿。殿にどうお答えすれば良いか、考えはまとまりましたかな?」


「残念ながら、まとまっておりませぬ。明日、岐阜城へ出立するので、その道中に考えをまとめたいと思います」


「それが良かろう。さ、明日出立するなら、早く寝ておきなされ」


「それではお言葉に甘えたいと思います」


そう言って吉六郎と利兵衛は部屋を出た。答えを聞く事は出来なかったが、信元はとても満足そうな顔をしていた。

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