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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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1から学ぶ子の姿

天正三年(1575年)二月五日

美濃国 柴田家屋敷内にて


皆さんおはようございます。家臣の利兵衛が楽しそうに文字の読み書きと計算の指導をしている現場に立ち会っております柴田吉六郎です


「い、ろ、は、に、ほ、へ、と。利兵衛様。今日は綺麗に書けましたか?見てください」


「うむ。どれどれ。ふむ、昨日より少しだけ綺麗に書けておるな。次は数を漢字で書いてみなされ」


「はい。壱、弐、参、肆、伍、陸、漆、捌、玖、捨。書けました。合ってますでしょうか?」


「どれ。おお、昨日よりも書けておるな。では、小吉よ、若様からお主達家族への褒美で米俵が八俵あって、それを一人何俵頂いたら、八俵が平等に分けられて、何俵余るか計算してみよ」


「はい!ええと、八つある米俵を一つずつ渡しても残り五つ。その五つを一つずつ渡したら、二つ残るから。利兵衛様。八票の米俵を三人で分けたら、一人二つ頂いて、二つ余ります」


「うむ。その通りじゃ。米俵と出陣した軍勢の数が増えれば増えるほど、分けられる数が減っていく。それでも出来る限り同じ数に近づけないと、統率が取れなくなり、最終的にどうなると思う?」


「兵達が大将を守らずに逃げて、大将が討ち取られてしまいます」


「そうじゃ。それをこの柴田家に当てはめてみよ。若様や、若様のお父上の大殿が討ち取られてしまう事になる。そんな事があってはならない事は分かるな」


「はい!若様や大殿だけでなく、出来る限り誰も討ち取られてほしくありません!」


「その為にはな小吉。赤備えの皆が腹一杯食えて、戦の時に動き回れて、敵の軍勢を叩きのめすと同時に、撤退戦でも早く逃げられる様に、空腹な時を無くさないといけぬから、米や銭、更には武具をしっかり管理出来ないとな」


「はい!」


「うむ。今日はこれまでじゃ。しっかりと飯を食べて、ちゃんと眠るのじゃぞ」


「はい!若様、利兵衛様ありがとうございました」


トテトテトテと小吉の足音が聞こえなくなると、


「利兵衛、大変そうじゃが、楽しそうでもあるな」


「若様。小吉が領地に来ておよそ二ヶ月、全てが初めてのものばかりの中、真面目に読み書きを覚え、計算も覚え、更には三吉とも仲良くなっております。


三吉にとって、共に学ぶ歳の近い者だからこそ、良い刺激にもなるのでしょう。水野様からも「前よりも覚える事に貪欲になっている。最近は軍事を午前、内政を午後と分けて教えている。前まではどちらかひとつを一日中教えていたのに」との事です」


「確かに良い刺激じゃな。小吉の頑張る姿を見て、源太郎が光から「早く子作りを!」とせっつかれておるからな。来年か再来年か、その翌年には赤備え初の子持ちが居るだろうな」


「それは良い事ですが、そういう事を考えると、時が過ぎるのはあっという間に感じますな。若様の初陣から早二年。拙者だけだった家臣も増えて行き、今では二百人もの軍勢を率いる大将ですからな」


「それでもまだまだじゃ。戦無き世への道はまだまだ半ば。儂としては父上に生きて、儂の子、父上から見て孫と静かに生きて欲しいからのう。父上は還暦まで十年もないのだから、戦の負担は儂が受けられる部分は受けたいのじゃ」


「若様。その言葉を大殿に直接言わないのですか?」


「言ったら間違いなく、「小童が偉そうな口を叩くな!」と言われるのがオチじゃ。それならば、小さくとも口だけではない事を示す為に、武功を挙げるしかあるまい」


「若様」


「それと、まだ先の話じゃが、利兵衛。儂に男子が複数居たら長男の傅役はお主にしてもらうぞ。次男は源太郎、三男は源次郎に傅役をしてもらうか」


「え!?よ、良いのですか?拙者は大殿と歳がほぼ同じ年寄りですが」


「年寄りであるからこそ、色々教えてやれるではないか。それに、まだ先の話じゃ。そう気負うな」


「は、はは」


「まあ、改めてじゃが利兵衛。儂や儂の子の事だけでなく、道乃や三吉の為に長生きせよ。よいな?」


「ははっ!」


小吉の頑張る姿を見て、吉六郎は前よりも自らの将来を思う様になった

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