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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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殿経由で渡して欲しい文

天正二年(1574年)十二月二十八日

美濃国 岐阜城内にて


「帰蝶。儂は織田家の当主になり、戦の毎日だったのじゃが、これ程穏やかな年の瀬は初めてじゃ。全ての敵を滅ぼしたわけでも、臣従させたわけでもないが、


少しずつ確実に、敵の勢力を削っておる。まだ先の話じゃが武田を滅ぼし、本願寺を屈伏させ、紀州の雑賀衆を殲滅したら、東は二郎三郎に任せて西へ進む」


「ふふっ。殿の見据える、「日の本を統一して南蛮に負けない国作り」の形がうっすらながら見えてきた様ですね」


「うむ。武田が滅んだら甲斐国と信濃国を二郎三郎に渡して、越後の上杉に睨みをきかせてもらう。その間に織田家は西の敵勢力を滅ぼして、新たに地盤を作る。


そうすれば、南蛮の者達と商売をしている大名の多い九州の征圧も、この十年で達成出来るはずじゃ」


「殿。私に出来る事は少ないですが、殿についていきます」


「うむ。頼りにしておるぞ」


信長と帰蝶が和やかな雰囲気で話していた。信長は前年よりも侵攻が進んでいる状況だったので自らが前線に出ず、岐阜城で報告を聞くのみにとどめていた。


そんな時に、吉六郎からの文が届いた


「殿。柴田殿の嫡男の吉六郎殿からの文でございます」


「ほう。また何か面白い事が起きたのかのう。どれ」


信長は文を開いた。内容は


「父上へ。父上の現在の居場所が分からないので、一旦岐阜城の殿の元へ届けてからになります。改めてですが、殿へ。お手数で無ければ、拙者の父と近江国に居ります羽柴様へ文を届けていただけますでしょうか?


内容としましては、先月、殿の御舎弟の三十郎様からの借銭を返済する旅に出た時に、家臣希望者と、女中希望者を召し抱えました。


ですが、その者達のうち、家臣希望者が、畑を荒らしていた猪を退治した時に飯を食わせてもらった縁があったのですが、その者達は羽柴様の姉君家族だったのです。その家族の子供が武士になりたいと拙者達に言ってきたのですが、母である姉君は反対をしまして、


子供の歳が拙者よりも四歳も下な事も有り、先ずは文字の読み書きを覚える事から始めて、将来的に利兵衛達の代わりに内政を担える様に文官として召し抱える事にしました


その子の父、つまり羽柴様から見て義兄も同じく内政で働いてもらうつもりで召し抱えました。利兵衛達は父上と歳が近いので、次の文官も育てなければいけないのです。ご理解ください


ちなみに羽柴様の姉君は、つる殿達と同じく女中として働いてもらいます。そして、羽柴様の姉君家族以外で


召し抱えた者は、羽柴様の家臣の加藤夜叉丸殿の母君です。羽柴様の姉君家族とは身内らしく、夜叉丸殿が立場の無い自身の様な人を呼べる様になるのは、まだまだ時がかかるから、拙者の家臣になれば、もしかしたら会える可能性があると思い、柴田家で働きたいと希望してきました


柴田家で女中として働くと同時に、古茶殿の話し相手になってもらおうと思い、召し抱えました」


「ふむ。これが権六へ渡して欲しい文の内容か。相変わらず訳ありな人間に好かれるのう。帰蝶、権六への文を読んで感想を聞かせてくれ。儂は猿へ渡して欲しい文を読む」


「羽柴様へ。近江国で領地を手にしたと聞きました。おめでとうございます。これも羽柴様は勿論、家臣の皆様の獅子奮迅の働きの結果。更なる御武運をお祈りします


ここからが本題なのですが、拙者の新たな家臣並びに女中として、先ず羽柴様の姉君家族を召し抱えました。子の方が武士になりたいから召し抱えてくれと、希望してきましたが、母である姉君も最初は反対しておりまして、


とりあえずまだ歳も幼いので、先ずは文字の読み書きを覚える事から始めて、もしかしたら元服する頃には日の本から戦が無くなっている可能性もあるので、


そうなった場合、文字の読み書きや数の計算が出来れば文官として働けたり、商人や村の庄屋にもなれる可能性もあり、その様に鍛えております。その子の父、つまり羽柴様から見て義兄も、同じ様に召し抱えて、


同じ様に鍛えております。姉君は女中として召し抱えております。


そして、羽柴様の家臣の加藤夜叉丸殿。現在は元服して加藤虎之助殿でしたか?その加藤殿の母君も、女中として召し抱えております。母君曰く


「加藤殿が自由に人を呼べる程の出世を遂げるには、まだまだ時がかかり、何の立場も無い自身は親と言えど、会う許可を得ないといけない事になるが、


柴田家で働いていたら、もしかしたら会えるかもしれない、一目見る事も叶うかもしれない」との事で、


柴田家で働きたいと希望してきた次第。断る理由も無いので、召し抱えております。もしも、羽柴様が柴田家の領地を通る際、加藤殿を母君に会わせても良いとお考えならば、


我々に伝えてください。間違いなく母君も喜ぶと思いますので。加藤殿に母君は元気に働いているともお伝えください」


「猿の家臣の母君も女中として召し抱えるか。我が子の姿を見る為に動く母を吉六郎は無碍に出来なかったのじゃろうな」


信長が秀吉への文を読み終えた後


「殿。よろしいですか?」


「読み終えたか?帰蝶から見て何か思うか?」


「はい。あくまで私の直感ですが、藤吉郎の姉君家族が召し抱えられたのは、手出しされない様にする為なのでは?」


「どういう事じゃ?」


「はい。前年、浅井を滅ぼす為に藤吉郎は浅井の家臣だった宮部某を調略する際、信頼を得る為に養子という名目の人質を差し出したと文に書いていたのを思い出したのですが、


その養子の子は、この姉君家族の子だと私は思ったのです。そして、残っている子を取られない為には、藤吉郎より力の有る家で庇護してもらう必要が有ると思ったからこそ、柴田家を頼ったのでは?」


「ふむ。確かに有り得るな。我が子を二人も奪われてなるものか。と母の執念、その為ならば生まれ故郷も捨てる。


帰蝶の直感が当たっているなら、猿に届ける文は儂からいくつか足してから届けよう。権六への文も儂がいくつか手直しを入れてから出してやるか」


「殿。何やらお顔が楽しそうですが?とても怖い言葉を足すつもりでは?」


「ふっ。怖い言葉になるかどうかは、猿次第じゃ。くっくっくっ」

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