返済完了。さあ出発
天正二年(1574年)十一月二十八日
尾張国 織田三十郎屋敷内にて
「改めまして三十郎様。こちら、光と花が借りた路銀の利息を含めた返済分です。ご確認ください」
「貸した分だけでもよかったのだがな。まあ、とりあえず確認するぞ」
皆さんおはようございます。現在、殿の御舎弟の織田三十郎信包様に、家臣の嫁の借金を利息込みで返済して、確認してもらっている柴田吉六郎です。
今更ながらに思ったのですが、勘九郎様が京での売上の内、柴田家の取り分を持って来たから、親父はその金で三十郎様から借りた金を返せ!だったんだろうな。
まあ、考えても仕方ない。
「吉六郎。確認し終えたぞ。貸した分の倍の銭が入っていたが、誠に良いのか?」
三十郎様に呼ばれましたので
「はい。父上ならば、「これくらいお返しせよ!」と言うでしょうし、その銭で、光と花が無事に領地に着きました。更には此処にいる家臣の、飯富源次郎が花の婿になり、源次郎の兄の源太郎が光の婿になりましたので、家臣の嫁取りにかかった銭と思えば、安いものです」
「はっはっは!そうか!家臣の嫁取りの為の銭か。流石、神童と呼ばれる子供じゃ。考えや視点が儂らとは違うのう。源次郎とやら、吉六郎の考えは難しくないか?」
「いえ、むしろ我々が理解出来る様に少しずつ、じっくりと共に考えてくださいます。それに、敵として戦った我々が捕虜だった時も人としては勿論、武田では足軽だった我々を一介の武士として扱ってくださる等、返しきれない恩を受けております」
「「生涯の主君を得た」と言っても過言ではない様じゃな。吉六郎、そこの三人と同じく、領地で留守をしている者達も同じ思いじゃと思うが、家臣達に恥ない主君にならぬといけぬぞ?」
「肝に命じます」
「うむ。そろそろ寒さが強くなるじゃろうから、早いうちに出発せよ。挨拶は此処でしたという事で良い」
「では、お言葉に甘えたいと思います」
こうして俺達は借金の返済を完了して、三十郎様の屋敷を後にした。
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