自慢?いいえ報・連・相です
天正二年(1574年)七月二十五日
美濃国 柴田家屋敷内にて
場面は於大達が屋敷を出立して、数時間後
「若様。念の為に聞いておきますが、於大様を始めとした方々からの於古都様を嫁にもらっていただきたいとの嘆願の件、
大殿や織田様に報告はしておりますよね?」
「それは於大様が徳川様を通して殿へ話が行くから、儂からする必要あるのか?」
「若様。こういった主君や同盟相手の身内が関わる話は、された側も一応、「こう言う事を言われましたが、自分では決められないので、
殿達に決断をしていただきたく」くらいの内容でも良いから、先に送っておくものです」
「そうなのか?それでは今から書いて、早馬で殿や父上に伝えておくか」
皆さんおはようございます。家臣の利兵衛に小言を言われながら、殿や親父に報告と相談の文を書いております柴田吉六郎です
利兵衛に言われて内容を簡単に分かりやすく書いて、さくっと使いに渡したら、あとは殿達次第です
天正二年(1574年)八月一日
美濃国 岐阜城内にて
「また権六の倅からの文か。しかも、此度は権六ではなく、儂にあててじゃ」
「倅が申し訳ありませぬ」
「待て待て権六。別に何かやらかした訳ではない、はずじゃ。とりあえず中を見てみよう」
そう言って信長は文を読み出した。そして
「権六よ。お主の倅は、儂らの常識では計り知れぬ!」
「ど、どの様な内容なのですか?」
「うむ。先ず、徳川家において二郎三郎の元に双子が産まれた事は知っておるよな?」
「はい。その双子と双子を産んだ母親を、守る為に拙者の領地に避難させていたはずですが」
「そうじゃ。しかしな、その母親と二郎三郎の母である於大殿が双子の妹を、吉六郎に嫁にもらってくれと頼んで来たそうじゃ。
しかし、吉六郎は「自分は何の権限も無いので、殿同士話し合い次第にて」と留めたそうじゃ」
「良かった。正直、あ奴の事なので何も考えずに「有り難く嫁に貰います」と言ったものと」
「はっはっは!倅に対して全く心が落ち着く事が無さそうな言い方じゃな。だが権六よ、儂はこの話は受け入れても良いと思うぞ?」
「と、殿?」
「考えてもみよ?双子というだけで忌避する者はまだまだ多い。はっきり言ってしまえば、双子である事を親ですら気にする者も居る。
それでも親であるなら、我が子の幸せを願うもの。しかし、先に言ったとおり双子である事を忌避する者が多く居る以上、
政略結婚の駒に使う事も難しい。それならば、その様な事を気にしない者に嫁がせた方が幸せにしてくれるかもしれぬ。
と双子の母親が思ったからこそ、於大殿を通じて吉六郎に話したのかもしれぬな」
「母親はやはり我が子の事を最優先に考えておりますな。しかし、倅では徳川家の姫君を嫁に貰うには色々とと問題が」
「権六。その事は徳川家でも話に上がっていると思うぞ?それこそ、「織田家の一族の者ならまだしも、家臣の倅だと家格が」と
言っておるであろうな。だから、儂はこの話を解決する為に、いくつか策が思いついた」
「どの様な策が?」
「うむ。ひとつは、再び権六と吉六郎を客将として徳川家に行かせて、戦で武功を挙げさせて、それに二郎三郎が褒美として
娘を嫁にもらってくれ!と一芝居打つ。これに関しては戦で無くとも、徳川家の財政を改善させた褒美としてでも良いであろうな
だが、これは徳川家の状況次第だから難しい。ならば織田家側から解決するならば、こうじゃ
吉六郎が戦で武功を挙げたなら、一芝居打たせて、その褒美で権六、お主が儂の妹や織田一族の娘を嫁にすれば、柴田家は織田家の一族になる
さすれば、徳川家から見ても何の問題も無く、双子の姫を嫁入りさせるじゃろう」
「それは確かに妙案ですが」
「その内、徳川家からこの件で使者が来るはずじゃろう。その時に話し合えば良い。ただし権六、その時はお主も同席するのじゃぞ」
「はい。倅の事ですので、親である拙者が」
「そう気負うな。吉六郎がやらかして、その尻拭いをするわけでもないのだから、な?」
「ははっ」
「さて、訳ありの子と神童の縁組なんぞ、滅多に無い事じゃ。どの様にまとめるかのう」
情勢が織田家有利に落ち着いているからか、楽しそうな信長だった。
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