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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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主君は喜び、父は

天正二年(1574年)七月五日

美濃国 岐阜城内にて


「本願寺の勢力は少しずつ削いでおる。しかし、あ奴らは毛利からの支援で今だに抵抗を続けておる。


そして、武田も我々が全軍を本願寺に出さぬ様に小賢しい動きを続けておるな。信玄坊主が死んだというのに、これ程動けるとは」


吉六郎が未来を変える為、元服する事を決めて5日後、岐阜城内では信長を中心に石山本願寺への最期の詰めと、武田への対策を話し合っていた


そんな時に


「失礼します。柴田殿の領地より御嫡男の吉六郎殿からの文でございます」


「ほう。武田の動きが小さい今に文とは。また、何やら面白そうな予感がするのう。なあ権六?」


「殿。拙者は嫌な予感しかしないのですが」


「そうか。ならば儂が先に読むぞ」


そう言って信長は文を取った。読み出して数分後


「はっはっはっは!!ご、権六!やはり、お主の倅は面白い!此度の文の内容、儂にとってはとても喜ばしい!


だが、親父であるお主は複雑な気持ちになるじゃろうな。声に出して皆に聞かせてやれ。あ、先に言っておくが、読み終えても破るでないぞ?」



「は、はあ。では読ませていただきます

「父上へ。この文を読んでいるという事はお元気だと思いますので、


単刀直入に言いますが、今年か来年にぶつかるであろう武田との戦にて、元服後の初陣を迎えたいと思い、文を送りました


父上の事ですから、十歳の小童が何を言う。と思うでしょうが、父上が常日頃から口煩く仰っていた


「織田家の戦では、常に柴田家が先陣を切る事」をそろそろ拙者も経験しないといけないと思い、


元服をお許しいただけますか?吉六郎より」


「あ奴め〜!戦を何だと思っておる」


読み終えた勝家は、文を今にでも破りそうな程、腕が震えていた


それに気づいた信長は


「権六。怒りたい気持ちは一旦抑えよ。元服が早いと、お主は言いたいのであろうが、


文の中には「今年か来年ぶつかる武田」と吉六郎は言っておるぞ。


これは領地で師として鍛えておる藤四郎の教えが吉六郎の血肉となっているからこそ、


この様に思ったのじゃろう。それに、元服前に初陣は既に経験しておるから、戦はそれなりに知っておるではないか」


「それは、そうですが」


「権六。遅かれ早かれ元服の時は来る。儂とて初陣は十三歳の頃であったが、父上の側に居ただけで、大した武功は挙げておらぬ。


ならば吉六郎も、お主の側に置いておけば、それでも一応「元服後の初陣」にはなるではないか」


「それは確かに」


「二郎三郎の生母の於大殿が以前送ってきた文を思い返してみよ。その文の中で吉六郎は「武士の子に産まれた以上、歳は関係ない」と


言っておったではないか。それは元服の歳も含めて。だと儂は思うぞ」


「ですが」


「権六よ。吉六郎はお主の子だから、この様に言っておるのじゃ。それに、藤四郎からの定期的に送られてくる文には


「吉六郎殿は家臣達を鍛え、まとめ上げている。元服後に、この者達と共に戦場に出たら一軍の将として期待しても良いと思われます」


と書いてあった。その者達と共に出陣させれば大丈夫と儂は思うぞ?」


「殿」


「心配するな!とは言わぬが、勘九郎達より下の世代では、元服した時には戦が無い世になっているかもしれぬ。


それならば吉六郎にも一応、元服後の戦を経験させるのもありではないか!安心せい!


ちゃんと配置は考える!」


「ははっ」


「元服の儀礼は、来年の弥生にやろうではないか!お主の倅なのじゃ!皆が期待するに違いない!


なんと言っても「柴田の神童」じゃからな」


「拙者はあ奴の事は、神童とは思えないのですが」


「親とはその様なものじゃ。とりあえず権六よ、今宵は吉六郎の事を話しながら呑もうではないか」


「ははっ」


こうして吉六郎の元服の願いは、信長が勝家を説得する形で成就した。

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