料理の新作は挑戦からうまれる
天正元年(1573年)七月十五日
美濃国 柴田家屋敷内にて
「若様。言われていた物を持って来ましたが、こちらと麦粉が合わさると、どの様になるのですか?」
「儂も父上から話を聞いただけだから、絶対成功するとは言えないが、まずは挑戦してみよう」
皆さんおはようございます。朝から柴田家の財政改善の為に、京や堺で小麦粉を使った料理が売れる為に試作品を作ろうとしております柴田吉六郎です
今から作るのは、この時代の京や堺では既に有るだろうパンなんですが、前の人生で見た戦国時代へ料理人がタイムスリップして、
殿こと織田信長に仕える事になった、漫画原作でドラマにもなった作品の中で見たやつなんだけど、
あの作品の中では、パン作りに必須な酵母が入ってる酒粕を売ってもらえなかったけど、
あれは権力者の根回しのせいだからなんだけど、ここでは酒粕は呑兵衛達が酒の肴と一緒につまむくらいだから、それ程消費されてない
だからこそタダでもらえたりする。あ、遅くなりましたが、利兵衛が言っていた「頼まれた物」は酒粕の事です
で、ここからが本番です。小麦粉に少し水を入れて捏ねて、粘りが出てきたら再度捏ねてを繰り返して
捏ね終えた物に酒粕を投入して、濡らした布を被せて、しばらく待つ。
時間にして1時間後、
「これじゃあ!」
俺は生地が膨らんだ事に喜んだ。それを見た利兵衛も
「おお!先程までは小さく丸いだけだったのに、今は大きくなっておりますな」
で、生地を程よい大きさに切り分けて、急遽作った石板の上に置いて、釜の中で30分じっくりと焼く
そして30分後
「出来たぞ!見た目は話に聞いた物と同じじゃ」
「先程までは白一色だったのに、見事な茶色になっておりますな」
「利兵衛。これが南蛮人が故郷でいつも食べているパオンというものらしい。
京や堺では殿達は既に食べたらしいから、お主が日の本で最初に食べた者にはならないが食べてみてくれ」
「では」
利兵衛がパンを真ん中から割る
「おお。湯気から麦の香りが。それにこのもちもちとした感触も素晴らしい。では、失礼」
そう言いながら利兵衛はパンを食べた。味わう様にじっくり咀嚼していた。そして
「若様。これはこの地で取れた良質な麦だからこそ、とても甘く感じます。大変美味しいです。
しかし、このパオン単体では日の本の民は飽きて、米に戻ると思われます」
まあ、そう思うよね。前の人生でも、余程のパン好きか経済的に苦しい人じゃない限り、食パンとかをそのまま食べる人なんて居なかったし
「利兵衛、その懸念はもっともじゃ。だからこそ、このパオンの中に詰められる物も作っていく」
「どの様な物をお考えですか?」
「それは材料を回収してからじゃ」
次は戦国時代版の菓子パン作りじゃー!




