閑話 夫婦は父へ金を無心する①
元亀四年(1573年)三月二十日
遠江国 浜松城内大広間にて
「武田の軍勢が駿河国との国境と三河国との国境に移動したが、数は大分減った様だな」
「はい。推定になりますが、両方を合わせても一万以下かと」
「それならば撃破は容易い。が、信玄坊主が動けないか死んだのならば、三河国との境にいる武田から撃破しよう。とりあえずは、武田の動きを注視するに留める」
「「「ははっっっ!!!」」」
家康達は軍議を開いていたが、内容は早い段階で決まった。全員帰ろうとした時、
「殿!美濃国に避難しております築山様と三郎様と徳姫様からの文にございます」
「三人まとめてか?」
「いえ、それぞれ単独でございます」
「美濃国で何か起きたのか?とりあえず見てみよう。どれ。瀬名は何と書いてある」
「殿へ。お身体に大事ありませぬか?私は日々健やかに過ごしております。早く武田の脅威が遠江国から無くなり、殿にお会いしたいです。
現在、私は殿と織田様が避難先に指定した柴田家で日々薙刀を振り、健康的な食事を食べた結果、もう一度殿に見惚れていただけると思う程、美に磨きをかけています。そこで殿にお願いがございます。
三郎や徳からも同じ内容の文が届くと思いますが、此度三郎の家臣と、私と徳の侍女達で大掛かりな集団での見合いをしました。
三郎と徳が吉六郎殿に頼んだ結果になりますが、新しい夫婦が四十も成立してめでたいのですが、
かなり柴田家へ負担させてしまったので吉六郎殿を始めとする柴田家の皆様へ金銭の援助をお願い出来ませんか?」
「はあ?瀬名が儂に見惚れてもらう為に頑張るという事は嬉しいし、理解出来る。
だが、何故にそれが家臣達と侍女達の集団見合いに繋がるのじゃ?
しかも、その集団見合いを柴田家に負担させてしまったから、援助してくれとは」
「殿。三郎様の内容も確認してみては」
「それもそうか、何々」
「父上へ。無理をなさっておりませぬか?拙者は避難先の美濃国で問題なく過ごしております。
現在拙者や周りの者達は、吉六郎殿の家臣達が毎日実施している訓練と身体によい食事のおかげで、腕や足が丸太の様に逞しくなり、身の丈も伸びてあります。
その結果、家臣達に男としての自信が芽生え、惚れた女子に思いを伝えたい。と石川を通して伝えられました。これはどうにかしてやりたいと思い、
吉六郎殿に頼んだ結果、集団での見合いになったのですが、柴田家に金銭で無理をさせてしまったので、金銭の援助をお願いします」
「三郎も同じ内容じゃ。ここまで来ると、徳の文も。ええいしょうがない。徳からの文を寄越せ」
「義父上へ。お身体は大丈夫ですか?義母上と三郎様からの文で知っているとおもいますが、
三郎様の家臣の方々が、義母上や私の侍女達に思いを寄せて居た様に、侍女達もまた、思いを寄せる殿方が家臣の中に居たのです。
義母上と共に毎日薙刀を振り、健康的な食事で美しくなって女としての自信がついて、殿方に思いを伝えるにはどうすべきかと話しているのを聞いてしまい、
何とかしてあげたいと思い、吉六郎殿に集団での見合いを開いていただいてもらったのですが、無理をさせてしまったので、金銭の援助をお願い致します。
勿論、義父上だけでなく、我が父にも同じ内容の文を届けてます」
「三郎殿にも届けておるとな?これは徳川家中の話なのに!あの嫁御は。石川も瀬名も、浜松か岡崎でやる様に何故言わん!」
「殿。確かに出費は痛いですが、三郎様が家臣の心を掴んで兵達が屈強になったと思えば、いくらかましと思えませぬか?」
「そう考えるしかないか。とりあえずこの件で三郎殿とじっくり話し合うか」
のんびり書いて100話目です。
少しでも面白いと思えましたら、ブックマーク登録お願いします。




