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マジック・リヴァイヴ・ホロウネス  作者: 海森 樹
第一部 新たなる戦い
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1-4-6 休息(6)

「うわぁ……!!」


 寝ている俺と俺の腹部に跨るリーリアを見て、ルイアンが手で目を覆った。

 いや、勘違いする気持ちは分かるが、これは違う。


「ちょっと!! 昼間から破廉恥な!! 男女の営みをするなら夜にしなさいよ!!」


「だ、男女の営み!」


 何故かリーリアが叫んで顔を赤くする。

 なんでリーリアがそんな反応をするんだ。

 そこまで行かないにしても、無理やりあれだけのことをしたお前が顔を赤らめるのは違うのではないだろうか?


「すまないが俺の上から降りてくれないか?」


「はい……申し訳ございません……」


 今更恥ずかしくなってきたのか、リーリアは顔を真っ赤にしながら退いた。

 思わずため息をついてしまう。

 理解できないことが次々と起こって頭が混乱している。

 ひとまずリーリアのことは後回しだ。


「お前は誰だ?」


 ルイアンの隣にいる赤髪の少女に俺は尋ねた。


「ルイアン!! 紹介して頂戴!!」


 赤髪の少女は偉そうにルイアンに命令した。

 ルイアンの知り合いなのだろうか。


「レイン様、療養中のところ申し訳ございません。止めたのですが、言うことを聞いてくれなくて……こちらは私の学院時代の友人のミアです」


 顔を赤くしたまま伏し目がちなルイアンはそう紹介した。

 ルイアンの学生時代の友人、ということは魔法使いの卵ということだろう。

 一体何の用だろうか?

 というよりどうやってここまで入り込んだのだろうか?

 頭の中が疑問点でいっぱいになる。


「ルイアンがわざわざハイリーンまでそのミアを連れてきたのか?」


「いえ、違いますが……?」


「……どういう経緯でここまで連れてきたのか詳しく教えてくれ」


 ミアという少女は何か言いたそうにしていたが、目で黙らせる。


「はい……魔族との戦闘でレイン様は重傷となり、エルレイ様がレイン様のことを背負って私とエーデルロンド様が待機していた場所まで連れてこられました。魔族との戦闘は決着し、討ち倒したということでしたのでエルレイ様とエーデルロンド様と私はレイン様を馬車に乗せて、ハイリーン城に帰還いたしました。私はハイリーン城に来て日が浅かったので知らなかったのですが、偶然ミアに出会い、こちらに勤めることになったと……ただ、レイン様とはまだ直接話す機会が得られていないので紹介してほしいという話でした。一応エーデルロンド様の許可はいただいたのですが……なんでもミアのご両親とエーデルロンド様はお知り合いだったそうで事情は知っているということをおっしゃっていました」


「事情……?」


 ミアという少女のことをエーデルロンドから聞いた記憶はない。

 魔族との戦闘で頭がいっぱいになって忘れてしまったのだろうか。

 いや、俺の直感がこいつは怪しいと告げていた。

 同時に城内の不審人物には心当たりがあった。


「お前はあれだな? 以前から城内の食料庫にこっそり忍び込んで食べ物をくすねていたノラ猫だな?」


 いつだったかシアンが食料が消えているという話をしていたことを俺は思い出していた。

 その犯人はおそらくこいつだろう。


「ノ、ノラ猫? ちがうわよ! ちがいます! 私はそんなことしたことありません!」


「なるほど……俺は城内に勤めている人間全員の名前を記憶している。その中にミアという者はいなかった。しかもルイアンの学院時代の友人ということは魔法使いの卵だな?ハイリーンにはまだ魔法使いは少ないから、そんな少女がいるのであれば俺が知らないはずがない」


 城内の人間の名前を全員分覚えているというのはもちろん嘘だ。

 そもそも俺は人の名前を覚えるのが苦手だし、使用人はだいたい俺のことを怖がっているから目を合わせようともしない。

 不興を買ったら何をされるかわからないと怯えているのだろう。

 俺が使用人の中でまともに会話をするのはシアンくらいのものだ。


「ほんとに! ほんとに雇われました! 私はレイン様の弟子になりたくて!」


 ミアという少女は半泣きで訴えるが尚更嘘と言っているのと同じだ。

 それに俺の弟子になりたい?

 本気で言っているんだろうか?

 だがその度胸があるのであれば試してみよう。


「ミア。お前は俺が戦争で何をしたか知っているのか?」


「え?……ハーフレイルとの戦争で二十万人に『支配』をかけたという話は聞いてますが……?」


「なるほど。それなら話は早いな。お前が嘘を言っているのか本当のことを言っているのかを判断するのに最適な魔法がある」


「え!? まさか私に!?」


 これから俺に何をされるのか分かったようだ。


「何も無理に、とは言わない。お前が本当にハイリーン城に勤めている人間であると証明できる何者かを呼べるのであればそんな野蛮なことはしない。だが、いない場合にはただでは済まない。王の寝室に近づいた不審者ということで最悪死刑もありうると思ってもらおう」


「死刑!?」


 表情がくるくる変わっておもしろいな。

 死刑はただの脅しで実際にそんなことをするつもりはない。

 気が強そうで面倒そうな少女だが、魔法使いの卵であるのであれば無駄に死なせるわけにはいかない。


「どうだ? 『支配』を受けたらお前の身の潔白は保証される」


「わ、わかりました……受けます」


 観念したのか、ミアは『支配』を受けるつもりのようだ。

 怖いのか手をぎゅっと握りしめて肩に思い切り力が入っていた。



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