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マジック・リヴァイヴ・ホロウネス  作者: 海森 樹
第一部 新たなる戦い
17/222

1-2-10 準備(10)

「うう……本当は話したくないんだけどね~。お父様の遺言でも絶対に家の者以外には話すなって言われたし……」


「『魔法起源』が禁忌というのは知っていても、ディーテオルヴという名前までは知らないやつのほうが多い。魔法使いであってもそうなのに、魔法使いでもないお前がどうして知ってる?」


 エリーテは鞄から布に包まれた板を取り出して俺に渡した。


「ガルイード家の家宝で割れやすいものだから落とさないように気をつけてね~」


「何が入っているんだ」


 布を取ると中からガラス板が出てくる。

 張り合わせた二枚のガラス板の中には古ぼけた紙が一枚封印されていた。


「これは……」


 紙は茶色くなってしまっているし、端のほうが切り取られたようにギザギザになってしまっている。

 どう見てもただの古びた紙だ。

 それなのに二枚のガラスを張り合わせて封印されているということはよほどの価値があるのだろう。

 紙にはびっしりと文字が書き込まれているので内容を読んでみる。



 ――生憎私は肉体と精神を分離させる魔法についての知識がない。死者を使役する魔法使いである彼であれば何か知っているかもしれないが、彼の行方がわからなくなってから随分経っている。もっといろいろ聞いておけばよかったと今更ながら後悔した。


 この筆跡には見覚えがある。

 興奮で手が震えていた。


「もしかしてこれはディーテオルヴの手記か!?」


「そうだよ~。全部読んでみて~」


 ――魔力紋章の実験を行った。私のこれまでの研究によれば、魔法の発動に人間の精神が必要なことはすでに分かっていた。そして、今回の実験の結果から判明したのは、魔法の発動に必要なのは「発動する」という意志である。つまり、本当に必要なのは人間の精神ではなく、人間の意志なのである。これまで魔力紋章にどのような意味があるのかは分かっていなかった。今回の実験で明らかになったのは、魔力紋章は魔法を発動するという意志の現れであるということだ。今回証明することができたように、魔法使いが魔力紋章を刻みこめばただの物体が魔法を発動するようになる。私はこれを複合魔法『刻呪』と名付けた。ただし、魔法を同時に五つ発動させねばならないため、これができる魔法使いは限られるだろう。


 そして『刻呪』の詳しい発動方法について書かれていた。


 まず『放出』によって自分の中にある魔力を取り出す。

 次に『移譲』によって対象に魔力を注ぎ込む。

 その後、『同化』によって自分と対象を一つの存在とする。

 そして発動させたい『魔法』を使う。

 同時に『影写』によって自分の魔力紋章を対象に刻む。


 これで魔力紋章を刻まれた物体は魔法を発動できるようになる。


「これは……すごい……こんなことが可能なのか……」


 興奮しすぎて心臓の鼓動が速くなっていた。

 こんな重大な発見がこれまで秘匿されていたなんて人類に対する裏切りだろう。


「これをどうやって手に入れたんだ?」


「四代前の当主……私のひいおじいちゃんがたまたま手に入れたらしい~。すぐにやばい代物っていうのは分かったんだけど、魔道具を作りたかったからうちの人以外には隠してたみたい~。でもこれって魔法を五個同時に発動させないといけないから普通の魔法使いの人には無理なんだよね~。主席魔法使いさんも同時に発動できる魔法は四つって聞いたし……」


 魔法使いの技量を測る指標として、同時魔法発動数がある。

 多くの魔法使いは魔法を二つ同時に発動することができない。

 同時に三つ発動できたら天才と呼ばれるだろう。

 四つ同時に発動できるエーデルロンドはかなりすごいレベルだ。

 エーデルロンドはまだ若いから今後も修行を続ければ、もしかしたら五つまで到達する可能性があるかもしれない。

 魔法使いの中でもトップクラスの人間が生涯を通じて努力をしてようやく五つまで行けるかどうかという世界である。

 国としてそこまで魔法に力を入れていないアイルゴニストにそれだけ卓越した魔法使いが出現する確率は低いだろう。


「そこに俺が現れたというわけか……」


「そうなんだよ~レイン様は一体いくつ発動できるの?」


「俺はじ……いや、秘密だ」


「え~教えてよ~」


「そんなことより、お前が魔道具を作ったって嘘だろ」


「えへへ~ばれた~?ああでも言わないと話を聞いてもらえないと思って~」


「……まあいいけどな。俺はとりあえず五つは同時に発動できるから、この魔法も使えるぞ」


 しかし、そう簡単には行かなかった。



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