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マジック・リヴァイヴ・ホロウネス  作者: 海森 樹
第一部 新たなる戦い
12/222

1-2-5 準備(5)

「むぅ~まあいいや。どうぞお入りください~」


 家の中に入った俺達は驚いた。

 招き入れられた家の中には、ほとんど何もなくて空っぽだったのだ。


「エリーテ、これは一体……?」


「ほら、レイン様が王都を移すって決めたから、うちも引っ越そうと思って~」


「ハイリーンにか?」


「そう。うちの家って建築がメインだから新しい王都を作るとなったら行くしかないでしょ~。仕事回してって主席魔法使いの人には頼んでおいたから、そろそろ依頼に来るかな~って思ってたところ」


 この女、喋り方はゆるゆるだが頭は回るようだった。


「なるほど。それなら話は早い。新しい王城を設計してほしいんだ」


「うんうん~。新しく王都を作るとなったら一番最初に必要になるのがお城だよね~。そう思って設計図を作っておいた~」


「設計図を作ってある……? 結構だが、お前に頼みに来るかどうか確定していない状況でよく仕事ができるな。他に行ったら無駄になるじゃないか」


「そういう可能性もあったけど、城の設計できる人って数えるほどしかいないし~。うちに回ってこなかったらリーリアに泣いて頼めばいいかなって~」


「エリーテはまたそんなことを……」


 王女様が苦笑する。

 二人はずいぶん親しい間柄のようだ。


 エリーテは机の上に広げてあった設計図を俺に見せてくる。

 中央の王城と周囲には四つの塔が配置された設計図。

 周囲には堀と厚い石壁を作るようだ。

 これなら見栄えもいいし、攻められたとしてもそう簡単には落ちないだろう。


 しかし、俺が王都を移すと決めてからそれほど時間が立っていないはずなのに設計図を完成させている。

 エーデルロンドが推薦するだけあって、このエリーテという女は恐ろしく仕事が早い。


「いいだろう。これを作るとなったらどれくらいかかる?」


「一切滞りなく計画通りに進んで三年くらいかな~」


「やはり人の手で作るとなるとそれぐらいか……庭にある岩を1個貰ってもいいか?」


「うん? あれは置いていくやつだからいいけど~?」


 設計図を持ったまま、庭に出る。


「何をなさるんですか?」


 リーリアとエリーテは不思議そうな顔をしているが、放っておいて手頃なサイズの岩の前に立つ。

 硬そうな岩だ。これならいいだろう。



 じっくり設計図を眺めて、頭の中にイメージを作る。

 一度作ったイメージを消してもう一度作り直す。

 これを十回繰り返したところで、ようやく頭の中のイメージの出来に納得した。

 イメージ通りに岩を整形する。



『空断』



 風で岩を切り裂いていく。

 外側だけでなく、建物内部の部屋から階段の吹き抜けまで設計図通りに掘り抜く。

 しばらく魔法で岩を加工し続けて、ミニチュアの王城が完成した。


 自分でも満足できる完璧な出来だった。

『加速』でドウル麦を育てたり、岩のように固いものに繊細な細工を施したりと最近は魔法行使の幅が広がってきているので嬉しい。

 しかし、王女様やエリーテがいるので顔には出さなかった。


「レイン様すごいです……」


 リーリアは感嘆の声を上げる。


「まあ、これぐらいはな……」


「すご~い! ちょっと見ただけで模型を作れるなんて~! しかも、これすごく硬い石なのに~!」


 エリーテは出来上がった石のミニチュアを触りながら設計図通りだと驚いていた。


「魔法のおかげだな。岩山を一個持ってきて、魔法で部屋や廊下を掘って王城を作る。これなら一日で作れるだろう。しかし、出来るのは部屋や廊下や窓ぐらいだ。エリーテには内装を頼む」


「うん、わかった~。一瞬焦ったけど、失業しないでよかったな~。新しい王様は主席魔法使いさんよりすごい魔法の使い手だって聞いてたけど、ほんとなんだねぇ~。ここまで繊細な魔法を使う人は初めて見たよ~。他にもいろいろ力を借りたいことがあるから、王城を作り終わったら頼み事するかも?」


「まあ出来る範囲ならいいぞ」


 ハイリーンはまだまだ何もない場所だ。

 家や道など作らなくてはいけないものがたくさんある。

 こちらがエリーテに頼るようなこともたくさんあるだろうし、売れる恩は売っておきたい。


「あと、王城を作るところ私にも見せて~」


「いいだろう。どうせならエリーテにどういう岩が良いか教えてもらおうか」


 城を作るのに適した岩の種類は俺よりもエリーテのほうが詳しいだろう。


「じゃあ、明日城を作りに行くから朝になったら迎えに来る」


 そう言ってエリーテに別れを告げた俺とリーリアは城に戻るのだった。


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