プロローグ
サラっと読めるラブコメを目指して書きました。
短めなプロローグですが、楽しんで頂けたら幸いです。
朝、天蓋付きのベッドで柔らかな感触に挟まれながら、相川祐樹は目を覚ます。
「ん……」
「むにゃ……」
祐樹の耳元で共に寝息を漏らすのは、そっくりの顔をした少女達。髪も同じ烏の濡れ羽色で、夢の中に沈んだあどけない寝顔は、彫刻の様に整っている。
浅い呼吸が耳を撫でる度祐樹は心を無にし、彼女達が半裸の下着姿であることを頭から締め出す。
十八歳の祐樹にとって刺激の強過ぎるこの状況は、最近から半ば日常と化している。
何せ祐樹のお仕事は、この美少女姉妹の抱き枕になることも含まれるのだから。
細身でも肉付きの凹凸がはっきりとした上半身を祐樹の腕に絡めて、ぴったりと寄り添う少女達を眠りの淵から引き上げるべく、祐樹は声を絞り出す。
「慧様……。郁様……。
……もう、目をお覚ましになっては如何ですか?」
彼女達を起こすのも、自分の務めである。
目覚まし時計を嫌った我儘な主人達に、小鳥の囀り以上に優しく呼び掛けるも、
「だぁめ……ゆーくんも、まだ眠るのぉ……」
たわわな胸を祐樹の右腕に擦り寄せ、湊楼慧はセミロングの黒髪を両頬に惰眠を貪り、
「ゆーき……安眠……妨害……却下……」
ショートの髪を頭から滑り込ませ、湊楼郁も姉に負けない実りを祐樹の左脇腹に押し付け抱きついてくる。
未だ瞼を開く気配もない彼女達は天に二物も三物も与えられた双子で、世間一般では家柄から才能までも羨望される、由緒正しき生まれである。
そして祐樹は、そんな二人に仕える身である。
のだが、何故か主人を侍らせている。
「どうしてこうなった……」
途方に暮れるも、健やかな寝息しか、返ってくるものはない。
ひとまずもう一回寝よう――と、祐樹は現実を忘れ抱き枕に徹するのだった。
美味しいところから書きたかったので書きました。
次回からあらすじ部分掘り下げていきますので、良ければ宜しくお願いします。