閑話・それからの北条家での出来事
時は少し戻り・・・、
【8月25日】
遠縁である方城家の本家がある長崎県を訪れた翌日のこと。
色々画策していた北条夫妻にとって好都合であり、最早娘のためならどのような無茶を通すことづもりであった。
その事を遠縁とは言え方城方には知らせずに訪れとのは、女の望みなど失われた状況であった。
今はまだよい。現実でさ無いのだが、VRと言うゲームの世界でようやく娘と息子はほんの少しの楽しみを見付けたのだ。
(もう五年近くなるのか・・・)
あの事故が無ければ、また方城栗栖と言う青年とまさかゲームの世界で知り合い。また娘が仄かな思いを抱いたことに気付いたから、無謀をも押し通すつもりであった。
・・・しかし。
その日の夜に何か、不思議なことが起ったのだろうか、北条夫妻は慌てることとなる。
それもそのはずである事故で、二度と歩けないと言われていた双子の姉の北条 利奈であったが、
翌朝。急に足の感覚が戻り少しだが、動かすことができたのであった。
その為、北条夫妻は当初の予定を全て白紙に戻して、急遽東京にトンボ返りしたのであった。
【北条医療センター】
★北条医療センター医院長視点
とても信じられないことが、医療の世界でもごくごく僅かであるが、奇跡と呼ばれる事が起きる。
一度、〇大で見て貰い脊髄の損傷が回復してきていると診断され、うちに転院された利奈お嬢様の歩行訓練プログラムと、うちの関連メーカーで開発された。補助具をお嬢様に合わせてオーダーメイドしているところである。
このまま訓練が上手く行けば、杖は必要であるが、歩行出来るまで回復する可能性が見えてきたのであった。
いち医療関係に経つものとして、奇跡を目の当たりに出来る幸運は・・・、
辛い現場に立つ我等にとって、どれ程の救いをもたらせるのか、計り知れない宝である。
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★北条 兼光視点
奇跡とは本当にあるのだな・・・。
未だに娘の足が回復の兆しを見せた事で、方城栗栖君との婚約を推し進める計画が白紙となってしまった。
「果たして、良いことなのか娘の為にはよく分からんがな」
ただ、苦笑に止めるに気持ちを切り替えるしかないものだ。