閑話・その頃の北条さん家では・・・
『東京〇〇大学病院』
九州まで行った翌日にとんぼ返りすることになるとは、本当によく分からない1日であった。
「お待たせ致しました。北条様」
「・・・いえ、それで、結果は・・・」
「はい、とても信じられません話でしたが・・・、お嬢様の検査結果を見る限り。脊椎神経が間違いなく回復の兆しを示しておりました」
「・・・そう。ですか・・・」
まさかそのような奇跡が・・・。
このように突然起こるなど・・・。
とても信じられることではない。北条兼光も妻の香住さえも信じられない面持ちであった。
「まさに奇跡だ・・・」
本当に理解出来ない出来事であったため、暫く兼光は、ただソファーに腰を落とすしかなかった。
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★北条 莉奈視点
見慣れた白い空間。何年も私を閉じ込めていた閉塞な部屋たった。でも今は、
今日・・・。
世界が変わったように感じていた。まるで視界が広がったようにこの場所がとても居心地のよい場所になっていたのであった。
「・・・姉さん」
「・・・嬉しいの」
「うん」
姉が、呟いたその一言が・・・。
どれほど心が込もっているのか、莉奈しか分からないだろうが
、ただ一つ言えるのは、
「よかった・・・、本当によかったね」
莉央はただ涙を流していた。
そう、姉が少しだけであるが、歩行出来る可能性すら見えてきたのだから。
「よかった・・・」
莉央は心の底からそう思い。涙する姉を微笑を持って見つめていた。
こうして些細な奇跡が北条家に降り注ぐ事になったのだが・・・。
その理由に気付くことはなく、ただ奇跡を喜び方城栗栖のことをすっかり忘れていたことを思い出すのは、かなり先の話になるのであった。
フフフフフフ・・・・
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★方城 東視点
「親父、北条家の連中気付かずに帰って行ったぜ」
「・・・ふむ、そうか」
好好爺と優しげな風貌の東であるが、なかなか苛烈な一面を持っていることは、一乃辰、辰起兄弟だけは理解していた。
「此度のことは、北条の小倅の思惑を栗栖を気に入っておる神か精霊が嫌がったのであろうな」
「・・・はあ~、やっぱりか、この間も何かに好かれてた様子だったからそれかな~」
「まあ~、あやつは下手な霊能者よりも力を持っておるから大丈夫であろうよ。それよりも年末はスペインに行くそうだが、またぞろ事件に巻き込まれなければ良いがな」
「ま、大丈夫でしょう、なんだかんだいいながらあれはいざという時、人を躊躇わず殺せるタイプの人間ですので」
「さようじゃな」
方城本家では、殺伐とした会話が続いていたようだ。