ほんの些細な奇跡の始まり9
朝、伯母さんからじいちゃんに呼ばれてると聞いて、じいちゃんの住まいである洋室に向かった。
それはそうと、朝の鍛練が終わって汗を流したらなんだか、別邸で騒ぎがあったようだけど何かあったのかな?、
まあ~、五美も一緒だし。変な事にはなってないだろうしね。
「じいちゃん、栗栖だけど」
『うむ、入って来なさい』
こうしてじいちゃんの部屋に入るのは、じいちゃんに弟子入りした時と、
飛鳥井流の蹴鞠を学ぶことを決めた時以来だから・・・、中学に上がって直ぐの頃かな。
「失礼します」
「うむ」
じいちゃんと差し向かいでこうして、二人だけで顔お合わすのは結構久しぶりかもな、
ここ最近は東京で新しい道場を開いた内弟子のために忙しいと聞いていたからね。こっちに戻ってくれば弟子の指導で忙しいが、今日はシルバーウィークだし。平日の午後みたいに、県警の道場に指導しにでることもないからね。
「・・・栗栖、一つ聞きたいことがあるのだが、式神を知っておるかの?」
「・・・・・?、式神って何」
不思議そうに首を傾げる栗栖に、厳しい顔をしていたじいちゃんが安堵の吐息を吐いていた。
(ふむ、栗栖ではないか、しかしあの子猫達にかかっていた強い霊気は栗栖の物であったが、ああも霊気がきれいに消えておったしの・・・、気にはかかるが、何かしらの力か加護をあの娘に与えるため使われたかの?)
そう考えれば理解出きるか・・・、
一先ず。孫が仙人、陰陽師になってた訳ではないと知り安堵する。
(それにしても、栗栖は随分と呼吸法を物にしておるな、ならば来年の夏は京に行かせるべきかの~)
「うむ、先に言っておくがの来年の話になるが、飛鳥井本家から、栗栖が呼吸法を身に付けたのであれば修行しにくるよう言われておる。それゆえ来年の夏は二週間ほど、あちらに向かうと了解しておくがよい」
「・・・えーと、豪雪師匠の所だよね?」
「うむ、おそらく色々と知らぬこともあろうが、まあ~、世の中には不思議なこともあるのだとそう心得とけ。よいな」
「・・・あっ、はい」
あまり理解は出来ないけど、あの豪快な豪雪さんとまた会えるのは嬉しい限りである。来年の夏が楽しみかな~。
栗栖が退出して、東は深くため息を吐いていた。
「まさか、家から裏の才能があるものが生まれるとは、あの子も数奇な奇縁を持つゆえ心配ではあるが、あれは不思議とそういう力を持った存在に好かれるから、悪いことにはならんだろう」
栗栖が知らないところで、なんだかよく分からない付属がある模様です。