ほんの些細な奇跡の始まり7
方城家本家が持っている山の一つに、内弟子、近隣の武道をやる学生が鍛練を行うのに整備された本家の山を解放している。
いわゆるアスレチックコース、初級、中級、上級者コースと分かれていて、足場の整っているランが初級コースで、学生、体力作りの訓練生が走るコースである。
もちろん栗栖、五美には子供のころから本家にいるので、二人は上級者コースを走る。もう子供のころから走ってるので、夜目もある程度利くので足元が不安定でも転けることなく、上級者コースを走りきることが出きるので慣れたものだ。
ただ栗栖の場合は基礎の呼吸法をやりながら鍛練を行っていたので、知らない間に、山伏の修験者と同じような修行を行っていたのだが・・・、
それをしるのは基礎を教えた飛鳥井 豪雪のみであった。
「五美ちゃん、栗栖君おはよ~」
「あっ、七奈美さんおはよ~ございます~」
「二人とも今日はよろしくね」
丹内さん含めた縁戚の北条家の護衛5人も、2日だが、本家道場で僕たちと鍛練を積むことになっていた。
「じゃ、軽くランから、山登りで、下りに上級者コースかな?」
「そうだね~、栗栖兄はペースメーカーヨロ」
「了解、あっ、皆さんランから行きます」
『『『『『はい』』』』』
5人は、全国大会に出たこともある。レスリング、空手、柔道、テコンドー、剣道の有段者であった。
だから、武道の鍛練を甘く見ていたことを、間も無く後悔することになるのだが・・・、
それはほんの先の話であった。
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格闘技には、試合時間と言うものがある。だいたい3分~5分ひと試合が柔道、空手、レスリングで行われる。
ボクシングでも、一ラウンド3分戦い30秒休むアマチュアでニラウンド~四ラウンドを繰り返すが、
古武術に試合時間と言う概念は存在しない。
あるのは打ち込み、組打ち込み稽古を一秒でも長く行うことだ。
つまり経戦能力の向上である。いかに無駄を省き、長く戦えるかを鍛え、余力を残して相手を倒すこと。または一対多数の敵を倒すことが目的である。
特に六道は、あらゆる武器を用いることと扱えることを目的で作られた概念の武芸である。
一人、二つ以上の技を学んでいるのは当たり前である。
五美は剣道、薙刀、空手、合気道、投擲、軽身功
栗栖は弓、短刀術、合気道、投擲、蹴鞠であった。
因みにベッキーは、槍、棒術、日本拳法、一子気合い法である。
軽身功とは、自分の腰より深く掘った地面からジャンプして飛躍を鍛える技を言う。
一子気合い法とは、自分の力を瞬間的に地球の重力を扱い倍以上の力とすることで、相手の力を使う合気道とは逆の考えから、瞬間的なパワーを扱う技術のことを言う。
「・・・ひぅ、はっ」
「はっ、はっ・・・」
「ぜは、ぜは、ぜは・・・」
「・・・・・・はっ、はっ」
「・・・」
丹内さん以外の四人は上級者コースを降りたところでダウンしていた。
「皆さんお疲れ様~、一休みしててくださいね~」
「やっぱりなれないと上級者コースはきついですよね~」
「栗栖兄!、組打ちやろうよ」
「ええ~、僕も久しぶりで疲れたんだけど~」
「ええ~、お願いい!、栗栖兄」
「・・・しょうがないな~、あっ、汗流すなら道場の裏手に温泉あるんでどうぞ」
「「失礼します」」
先に道場に向かった内弟子の後を、大して息を切らしてない五美に腕を引かれて、嫌そうな顔をしてるが仕方ないな~と、諦めたため息を吐いた栗栖がとおざかっていった。
「・・・なんなんですかここは、体力お化けの巣窟ですか」
近藤七奈美が、崩れ落ちるように座り込んでいた。
(これは根本的に考え直さないとダメかもしれないな・・・)
護衛隊長の丹内は何処か遠い目をしていた。