ほんの些細な奇跡の始まり3
★近藤 七奈美28視点
旦那様の急な思いつきでございますでしょうか、遠縁の方城家に行くことになりました。
わたくし北条 莉奈さまの護衛兼お世話をしております近藤 七奈美と申します。
あっ、博多駅を降りまして、遠縁の方城一乃辰様を見た瞬間、そちらのかただと信じてましたよ。
ええ~、あの改造車の中を見てからすこしだけ見方が代わりましたが、
皆様、ゴホン、ここで戦国時代には隠し名前と言う者がありました。有名な武田氏も武田で分家を幾つかに分けておりましたが、隠し名の分家は本家筋の血が流れていることを言います。遠縁の方城家がそれに当たりますし。
あの伊達家にも田手家、井手家が有名ですね。戦国の時代は命よりも家の名前を残すことが大事だったそうですので、今では理解出来ませんが、
そうこうするうちに目的地に到着したようである。
「ここはお嬢様には大変そうですね。お手伝いをお願いいたします」
「はっ、了解した」
旦那様、奥様、坊っちゃまの護衛に我々も同行しておりますので、都内とと違ってお嬢様には地方は生きていくのに厳しい土地があまりにも多いのが、わたくし達の悩みでございます。
「おっ、栗栖済まんが手伝え」
「了解でーす」
私達が降りた所に、坊ちゃまと近いお年の青年が軽快な足取りで降りて来ました。
「おお~、伯父さんまた改造したんだね。今度のコンセプトはバリアフリー搭載とか、見た目に反する優しい車にきっと。警察の人は動揺するね~」
「だろ~!、絶対止められるからな~俺の車は、ガハハハハ!、彼奴ら毎回の事だしよ。中を見て驚く顔が見たいんだ!」
うわぁ~、確かに私が警察官でも絶対に止めてますしね。
なかなか良い性格してませね。
「よし、栗栖しっかり支えろよ」
「任せてよ~」
「「せ~の~」」
驚く事に私達が手を出す間も無く、じつに手際よくお嬢様と車椅子は上まであっという間に運ばれて行きました。
「へえ~、慣れてるようだな」
「そうね、私はお嬢様のお世話に入ります」
「了解した」
私達5人は護衛チームである。都内では交代チームがいるのだが、今回はシルバーウィークである。独り者チームでの遠征である。
ある意味貧乏くじかと思ったのですがね。
「お嬢様(お手洗いは)」
「お願いいたしますわ」
「旦那様、お嬢様のお化粧直しを行いたいのですが」
「ふむ、栗栖君お願いできるかね?」
「はい。別邸はこちらになります」
そのまま青年こと栗栖様の案内で別邸に向かいました。
流石は北条家の分家ですね。駐車場では不安でしたが、しっかりとした石畳があるので邸宅内なら異動も楽ですね。
栗栖様の話では、別邸はバリアフリーの邸宅だそうで思ってたよりもお嬢様には快適にお過ごし頂けるようですこしだけ安心しました。