栗栖の遠い~。親戚姉弟さんと出会った~4
僕が早く着きすぎたのか、おじいちゃんは内弟子との稽古中で忙しく、五美は子猫のお世話と友達が遊びに来てるので僕が遠慮していた。
そうなるとたまたま比較的暇をしていた六美伯母さんが、珍しくお茶を立ててくれた。
本当に、大変珍しいことである。
「結構なお手前でした」
「お粗末様ですねぇ~、時期は早いどすが、新しい芋羊羹ですよって、栗栖はんお上がりなさい」
「はい!、あっ、これ美味しいです」
ねっとりとしたコクとホロホロと口内で崩れ溶ける口どけから、しっかり裏ごしした物だと分かる。
「もしかして、表面が焼かれてるのは」
「ウフフフ、さすがどすな~、うちの人や五美ではそこまで気にしないし、ちょっと舌が大雑把ですやろ~、うちも張り合いがありません~、でも栗栖はんはさすがやね~、もてなす方も気付いて貰えるのはとても嬉しいものですよ~」
ウフフフ、とうれしそうし笑うと、五美の機嫌の良いときとそっくりで、髪型を変えたらもっと若く綺麗に見えるので、時折姉妹と間違えられる伯母さんは、コロコロと毒を吐くので時々ドキドキする。
ただまあ~大雑把な伯父さんや五美だと、繊細な見た目を愛でる和菓子をじっくり見て、
そんでお話してりお茶を楽しむなんて感性が乏しいので、
まあ~そこは仕方ないかと・・・、
僕もそこまで、褒められたレベルではないけど。これでも世界レベルのモデルやそのコンセプトを見通せるデザイナーの作品を沢山見てきたから、多少は季節を感じさせる和菓子の見た目を見て感想を述べるくらいの目は鍛えて来たのですよ。
まあ~、それなりには・・・、かな?。
多分、伯母さんとお茶を楽しむくらいは出来てると思いたいです。
案外なのは、じいちゃんかな~。
一芸に秀でてる人間って、不思議と芸能にも通じるのかな?。意外と茶道、能、歌舞伎等の芸事から古典文学に精通していたりするから驚きだ
こうして伯父さんが戻るまでまったりした時間を楽しんだ栗栖であった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
★北条 兼光視点
とうとう来てしまったな・・・、
娘には本当に悪い事をしてしまった。
私達夫婦の願いは、二人の大切な宝物に再び笑顔が戻ることを願っている。
たとえ遠縁の親戚の子供がどうなろうと、私達は無理を押し通すのみだ。
「もしも神がいたら、私達夫婦に罰を与えるのだろうか・・・」
北条兼光は静かに呟いていた。
そして・・・。
一乃辰が運転する車は、方城家の裏手に到着した。