秋冬コレクション開催
『東京某所・会場』
本番当時、僕は裏方として『セレナ』の友人モデル仲間のマネージメントスタッフ達と行動していた。
僕らの仕事は表の世界を輝かせるための歯車である。
そのため一人で忙しくするよりも気心の知れた仲間で行動するのは、この世界では当たり前のことである。
こうした華やかなイベントこそ最善の注意が必要であったからだ。
そう、この世のなかには悪意を持っている者がなんと多いことか、
栗栖達はそういった悪意のある者から自分たちのマネージメントする商品を守ることも仕事にしていた。
所謂ボディーガードの側面があるのだ。
その為か、スタッフのがたいがわりとマッチであるのは、普段から最低限は戦える身体を作っているからである。
『よう~、栗栖、今回も頼むぜ』
『やあ、ロバートそっちこそ見逃すなよ』
どうしてアメリカ人はあんだけ砂糖食べてるのに歯が真っ白なのか不思議である。
僕らの挨拶は不審者が入り込んだ場合の合図である。
こうした沢山の人種やスタッフがいると知らない人が潜り込みやすいからだ。
悪意を持った人間が入り込んだら最低限お互いに合図を送りあい連携して、自分たちの大切な商品を守るのも仕事うちにはあった。
もっとも僕は未成年で高校生なので、貰えるのは3日で2万だけでその他は姉さんのロハで色々買って貰えるので感謝して仕事していますよ~。
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『ちっ、思ってた以上に護衛がいやがるな』
『今回はブランドの秋冬物らしい、いくら日本人のお人好し達が狙いでも、一流どころはそれなりの腕利きがいるだろうさ』
『確かにな・・・、で目標の場所は分かったのか?』
『ああ・・・、ちょっと厄介な場所に控え室を用意されてやがるな・・・』
奇しくも有名でない日本のゲストだったからか、会場の最奥にある倉庫に、控え室が用意されていた。
『確かにやっかいだな』
舌打ちした髭面の男は、一つの決断をする。
『プランBしかないか』
『そこは仕方ないだろ、強硬にやるしかないな』
こうして秋冬コレクション襲撃計画が密かに始まろうとしていた。
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ゆうみ「あっ、栗栖さんお早うございます!」
「「栗栖さんお早うございます!」」
蔦谷「お早うございます!」
「お早うございます。皆さん今日は頑張ってくださいね」
「「「はい!」」」
この間とは違ってやる気に満ちた目をしていた。僕はモデルの良し悪しなんて分からないけど、きっと彼女達は成功するような気がした。
『へえ~、日本人の子にしては中々ね。フフフフ』
珍しいことに姉さんが見ていたようだ。
『だといいね』
それは栗栖の偽りなき真摯な気持ちであった。