ようやく気付いたワイゲン公爵、あまりにも遅すぎた失態
『王国軍』
★ワイゲン公爵視点
午後の会議はようやくヤリー・チーンノ・ランベルク王弟と、王妃捕縛についてようやく目処がたったこともあり和やかに進んでいた。
「ようやくであるなワイゲン公爵よ」
「はい、ようやく肩の荷がおりそうです陛下」
「うむ、その方には多大な支援を受けておるゆえな、苦労を掛けた!」
「はっ、ありがたき幸せ」
どうやら陛下も軽口を言う程度には余裕が出て行てきた様子である。
「ところでバローゼよ。我はある噂を商人より聞いてな。その噂があまりなことゆえに思い、その方に訪ねなければならなくなったのだ」
ワイゲン公爵は、眉を潜めると身に覚えが無いゆえに首を傾げていた。
「ふむ・・・、その方の様子では知らなかったようだな、これはなかなか思った以上に強かな男よのうクリスは」
嬉しげにしたり顔で笑う陛下とまさかここでクリスの名前が出てくるとは思わず、戸惑いを浮かべていた。
それを見て国王は再びしたり顔で頷いていた。
さて、ここで国王から語られた話をまとめるとこんな感じある。
「その方も耳にはしておろう、我が王国軍の陣営に兵糧を運んでくる商人が集まって小さな集落が形成されたことをな」
「はっ、そのなかでもクリスタル商会が中心になって、見事に多くの必要な物質を集めてくれておることは存じ上げます。
また集落の一つを開拓して大きな商店を作り上げ、先日クリスより我が領地で起こった不手際を見事な裁きを見せたことで、開拓した地をクリスタル商会の物として褒賞を与えることになりましたが・・・」
なるほどなと国王は苦笑を滲ませる。
(これはすっかりやられたか・・・・)
と国王でも気付かなかったであろう絶妙なバランス感覚であろうか、
(いやはやある意味は、下手な貴族より貴族らしいな、そう褒め称えるべきであろうな)
「そなたの話を聞いてな、ようやく理解出来たわ。あやつかなりのタヌキよのぅ。くっくくくくく、これは中々やる男がここまで牙をようも隠して居たものよ!」
、くっくくくくくこれは中々やる男がここまで牙をようも隠して居たものよ!」
国王がしきりにクリスを誉め称えるのを聞いては、益々ワイゲン公爵は違和感を覚えるのだった。
ようするにワイゲン公爵に与えられていた情報は確かであった。
細かい部分は大貴族故に伝えられず大まかなことだけを伝えられていた。
クリスはそれを実に理解していたのだ。その上で最も褒賞として与えやすい開拓地であるクリスタル商会の本店と開拓した土地を、ワイゲン公爵からの褒賞で与えると言質を取っていた上に。
しっかりと書類まで求めたと言うのだからから、クリスの容赦ない行動に感心するばかりであった。
「・・・・・・なっ、なんと」
ようやく細かな詳細を聞かされて、顔から血の気が引いていた。
そのような詳細な情報を国王から聞かされてようやく理解出来たことであった。
そんな絶妙なタイミングでクリスは最小の行動で、最大の利益をワイゲン公爵から奪って行ったのである。
「・・・・そうか!」
ようやく理解した。クリスの強かな笑みの理由に。
「クッ・・・・・、してやられたわ!」
「フフフフフフ、あはははははは!こうも見事にバローゼを出し抜くとはな、お主もなかなか骨のあるものを見付けたものよ」
(上機嫌に笑う陛下に悪いが、これは確かに我の失態であったな・・・)
しかも、失態ではあるが、ワイゲン公爵、ランバルト王国に損が無いゆえ国王も楽しげに笑い話としてくれるのだ。
「これは認識も改めてなくては成りませんな陛下・・・」
(愉快ではないが、実に小賢しい事であるな。が、我の失態に気付かせる意味合いもあったに違いあるまい。やってくれる)
苦笑いしたワイゲン公爵は、改めて身を引き締めていたのは言うまでもない。