強かな商人クリスの素顔を垣間見た
ニヤリ、クリスは強かな商人の笑みと貴族としての当たり前の常識的な答えを口にしていた。
「クロエ、僕はこのクリスタル商会長であり借りにも貴族に叙任されたんだよ~?、ワイゲン公爵はいくら忙しくとも最低限のことは調べていた筈だ違うかい」
クロエはハッとした。
(たっ、確かに常識的にはワイゲン公爵ほどの貴族が知りませんでしたとは言えない)
「ただ僕は知っていることをわざわざ教える義理はないとの認識なんだよね~」
「!?」
(ヽ(´Д`;)ノああー!)
心の中で叫んでいた。当たり前のことを当たり前にしただけで、こちらの利益になるのを理解して黙っていたが、
クリスは借りにも貴族であった。
貴族とは青い血が流れているとも言われる貴人である。
クロエは知らないが、クリスにも分家とは言え元々貴人と武人の家系である。
最低限の貴人としての知識、礼節は教わっていたのだ。
だから綱渡り程ではないが、面の皮が分厚い貴族として行動していた。
商人として商会の利益を優先した結果が、ワイゲン公爵ほどの貴族が知りませんでしたとは言えないとの認識があった上で、
向こうのワイゲン公爵は常識的な褒賞よりも低いと感じさせた訳だ。
「・・・なるほど」
(ごくり・・・、これがクリス様・・・)
運だけで貴族になったと思っていたけど。クロエの認識もだいぶ狂わされていたことになる。
(クリス様は、まさしく貴族になるべくして貴族に生られたのね)
どっと疲れが滲みながらもドキドキが止まらないクロエであった。
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★クロエ視点
一通り説明されたクロエは、クリスの商人としての強かさと貴族としての常識的判断力を既に身につけていたことに驚かされた。
(それにしても、クリス様もクリス様だけど、他のメンバーも優秀よね~)
先ほどまでクリスが座っていたソファーを見てそっと溜め息を吐いていた。
(クリス様の妹さんも大概だったわね~)
犬族の少女で、まさか血の繋がった兄妹であると聞かせれ驚かされたものだが、地頭がいいのと人の使い方になれてるのか、
私が見れない時などいつの間にかベッキーが指示を出している事があったのだ。
「クリス様の仲間も優秀ですし、冒険者クランとしても優秀でマスターは貴族になったと、なんだかサーガになりそうな成り上がり物語ね」
クロエは力無く笑っていた。
こうしてクロエの心配は杞憂となったわけだが、クロエの予想以上に強かな商人とわかって、困惑よりも楽しみで顔に笑みを浮かべていた。