クロエの予想を軽く越えてきたクリスに驚愕です
『商会長執務室』
「クリス様はそちらにお座りくださいね」
ニッコリ艶然と微笑んでいるが、有無を言わせない迫力があるので、クリスは素直に随う。
お茶がクッキーと一緒に運ばれ、軽く舌を湿らせるのを待ってから。
「それではクリス様、どうなりました?」
毅然とした顔である。どうなったとしても自分の力でどうにかして見せる。
そんな意気込みすら滲ませていた。
「率直に言えば、ワイゲン公爵に全て飲ませたよ」
「・・・・・・はあ?」
一瞬、クリスが何を言っているのか理解出来なかったのである。
「あの~、クリス様、全てとはどういう事ですか・・・」
「うん、驚くのも無理ないから、最初から説明するね」
「・・・はい、お願いいたします」
そもそもの問題が幾つかあったことにクロエは勿論、為政者であるワイゲン公爵も見誤る事があったのだ。
それは予想外に王都に突入してから、王弟側が粘っていること。内戦がまだ続いていると言うことだ。それによってワイゲン公爵側の調査不足とクリスタル商会の凄まじい発展の仕方が、理解を超えていたことである。
クロエの認識では、こちらに切り札はあるが、決め手に欠けるのも確かで、ワイゲン公爵と商会長であるクリスが良好な間柄でも、莫大な利益を生み出す可能性のある。この衛星都市になりうる地の利権交渉は、難航するとの認識であった。
しかし今は内戦である。とは言え経済は回るものだ。それも戦争はお金が湯水の如く消えて行く物である。
食料、武器防具等の消耗品、薬や魔法使いの魔力回復薬等々高額な物がどんどん消費されて行くのだ。
それらを輸送する商人は大忙しである。そこで作られたのが集落2つてあった。
何せ生産系プレイヤーも集まってくるとどうなるか、理解出来るプレイヤーも多いだろう・・・、
生産系あるあるで、マッド系と呼ばれる重課金プレイヤーがいたりする。
そうクリスタル商会の副マスターに二人いたのだ。
優秀なクロエがそんな二人を見逃す筈もなく瞬く間に。
『越後&三河屋』は大きな見世となったのは言うまでもないことである。
さて二つの集落が衛星都市になりつつあるのも向こうにもマッド系生産プレイヤーがいたからで、
優秀なクロエはいずれこの二つの都市に貸し倉庫を確保しとけば莫大な利益を生み出すと気付いた訳だ。
それに気付いてるのは今のところクロエとクリスだけであった。
クリスの場合は祖母の薫陶が厳しいので何となく。その方が利益になると理解しての本能での行動であったが、
まあ~、リアルチートと言うほどではないが、何となくその方がいいと予感がして行動することが、結果として良いことになるのだから、
伯父はクリスを連れ出したくもなるのも頷けよう。
それらを一通り説明されて、クロエは頭を抱えていた。
(言われるまで気付かなかったわ・・・、どうして、いまの状況が可笑しいと思わなかったのかしら)
クロエは力無く笑っていた。
そう、ワイゲン公爵も優秀なクロエも気付か無かったこと。
プレイヤーの趣味に掛ける情熱であった。
こちらのNPCにとっても予想外に発展していたから、ワイゲン公爵としては常識的に考えても自分の功績の割には随分と低い願いとの認識であった。
クロエとしては、側で見ていたがあまりに忙しく働いていたので、認識が狂っていたことによる。
ワイゲン公爵には不幸な、クロエにとって以外な結果としてクリスから聞かされた訳だ。
「それで・・・、クリス様はなぜ説明をせずにワイゲン公爵から言質を取られたのですか?」
ニヤリ、クロエが見たのは・・・。