クリスタル商会会長のお仕事が待っていました3
◆ワイゲン公爵視点
先日、待望のサニアか先触れに手紙を持たせてきた。
気が落ち着かない最中、戦争も終盤、王弟の抵抗が激しくなったため思ったよりも時間が掛かったが、第一騎士団、貴族軍もどうにか纏まり、もはやあと少しと言うところまで追い詰めていた。
そこでようやくサニアからの手紙が届いたのだ。気が流行るのも仕方あるまい。
『お父様、クリス様をよこして下さり感謝いたしますわ。なんとクリス様は、僅か1日で『悪魔の蠍』の動きを封じ込めてしまい。私は大変驚いていますわ!』
ワイゲン公爵「・・・・はああああ~!、なっ、なんだと、それはどうやったのだ!」
慌てるワイゲン公爵は、娘からの手紙の続きを読むのだが、治安が回復したのやら、今年の税収がクリスタル商会のお陰で上がりそうだとか、どうでもよい報告が書かれていたたげであった。
「・・・・・」
これには普段、木っ端貴族に睨みを利かせるワイゲン公爵も途方に暮れていた。
「・・・うっ、うむ、これはどうしたものやら・・・」
思わず頭を抱えながら嘆息していた。
後日、クリスタル商会のクロエを呼び出してワイゲンの情報を集めてもらったところ、
翌日には早馬を飛ばして知らせが届いた。
なかなか有能な人物を抱えておるようだ。
クロエが内々に調べたところ、西城ワイゲンの立地には、内乱を起こすならば要地となる要があったと言う。
元『スペクター』が押さえていた貴族町のごみ捨て場、歓楽街の二ヶ所であった。
歓楽街の1/3『オイデヤス』が押さえており残りも『スペクター』が押さえていた。
問題の残りの1/3にあたる店を『悪魔の蠍』が有していたのだが、クリスがこれを奪い取った上で『公爵家の兵舎』にしてしまったのだ。
これには我も驚いた物だ。
「流石ですわね~うちの商会長は、商売の原則を理解してますわ~」
「・・・よう分からんが、そうなのかね?」
「では簡単に説明いたしますと」
クロエと名乗る支店長は、何処からともなくワイゲンの簡易地図をとりだして説明してくれた。
それによってようやくクリスが放った一手に愕然とした。
「よくもまあ~、そのような封じ手を考え付いたものよ・・・」
呆れ半分、感心半分と言ったところかの~。
クロエ「ですわね~。でもこの一手は強力でしたわ。恐らくは今ごろワイゲンの治安がよくなってますわね~」
なにより『悪魔の蠍』『オイデヤス』『ダルク』裏社会を牛耳る者達を。公爵家が牽制できる拠点を得ることができたと言うわけだ。
こうなると内乱を画策していた『悪魔の蠍』は、身動きを封じられた上に下手に動けば、真っ先に公爵家を敵に回すことになるので、動くに動けなくなったと言うことらしい。
「・・・なんとも呆れるほど見事な手であるな」
軍事に関してなら早々負けることはないワイゲン公爵も。こと内政やこうした搦め手が苦手であったので、クリスの放った一手の効果を説明されて気が付いた故に舌を巻いていた。
これでは我が国の内政官よりも優秀ではないかと思ったほどであった。
最も、クリスとしては勢い任せで殴り込みに行ったら、運営が良い感じにしてくれただけの話であるが、
ワイゲン公爵やサニアお嬢様からすれば、クリスほど頼りになる者はいない。
そう思ったとしてもおかしくは無かったからである。
これからクリスは、色々と押し付けられる未来しか見えないのは、作者だけではない気がしないでもなかった。