運営からのメールとお詫び
『クリス様にお知らせいたします。運営』
「運営からメール?」
首を傾げながら、メールを開いた。
『この度は、イベント期間中にも関わらず隠しクエストが始まると言うバグがありました。
しかしクリス様が、歓楽街にあった拠点を奪ったため隠しクエストは停止致しました。
この度は誠に申し訳ございませんでした。つきましてイベント終了後に改めてご挨拶に伺います。運営』
「・・・マジか、これ・・・、バグだったのか・・・」
『PS、クリス様には引き続き内戦イベントをお楽しみ下さい』
膝から崩れ落ちそうになったほど、ガックリと脱力感に襲われたクリスだった。
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『開発部』
高柳「いや~、危なかったわ~、しかしクリス君はなんと言うか、良い仕事してくれたな~」
「ですね~。こうもピンポイントに拠点奪ってくれて。本当にクリス様々ですよ~」
さっきまでの緊張感が消えて、嫌な汗を拭っていた。
開発部の面々はホッとしていた。
「本当になんて言うか、めちゃくちゃ運が良いのか、悪いのか分かりませんけど」
「これ多分、リアルの才能なんでしょうね~、でも現代だと使い処の難しい才能ですよね~」
高柳「まあ~、そのお陰でこっちとしては助かったがな」
「そうすっね~。クリス君には悪いですけど。離れててくれたお陰で良い感じに混沌としてますし」
運営側の本音としてはあまりにもあれだが、まさか召喚魔方陣が前半で破壊されるとは思いもよらずにいた。
しかしながらクリス君がイベントから離された結果。
王弟側が盛り返していたのだ。
現在、王都では第一騎士団と手柄ほしさの貴族軍が対立していた上に、王弟は更なる魔法道具、アイアンゴーレム24体を動かしたのだ。
本来なら王宮を守るガーディアンであったが、現在王座に座る王弟によって、王城の前に24体のゴーレムがいてどうにも出来ない状況となっている上に。
闇ギルドから分裂した賞金稼ぎギルドが暗躍して、貴族を煽ったことで勝ちを意識した貴族軍と第一騎士団との間に溝が出来てしまった。
一度生まれた溝はそうそうに塞がることはない。
そういった意味では今の膠着は運営にとって都合が良かった。
その上に、危なかったバグまで発見できてそれをプレイヤーとはいえ、会社が認めたモニターであるプレイヤーが何とかしてくれたのである。
クリス君には悪いが、高柳達にとって感謝の言葉しかなかった。