針のむしろ
《作戦会議場》
騎士「お待ちを、これより先に入るには動物を連れて入場させるわけには参りません」
ワイゲン公爵様の後に続いて、仮で作られた巨大天幕に入ろうとしたら、王都の騎士に止められてしまった。
クリス「ミズリー、変化」
ヒタチ「フラノ」
ヒナタ「ハウル」
それぞれミズリーは腕輪に、フラノのはピアスに、ハウルはペンダントに変化していた。
騎士「!?、ほっ、宝石獣!、しっ、失礼いたしました」
なにやら慌てる騎士に向かって、ワイゲン公爵がにこやかに笑みを浮かべていた。なにやら思惑通りと言わんばかりの反応である。
「こやつらは特別でな、あまり表には出てこない護衛だ。内密にの」
騎士「!?」
さっと血の気の引い顔色が真っ青になった騎士は、コクコク何度もうなずいていた。
なんだか、ワイゲン公爵様の機嫌がよい気がした。
クリス達は知らなかったが、宝石獣の主になるのは特別な才能がいると言われていて、また持ち主は聖職者と同様に敬われると。
そうこの国には少ないのでクリス達には実感
が無いだろう、宝石獣を聖獣と崇めている国がある。
『聖国』
エンドアースに宗教はあるが、宗教国家と呼ばれる国は一つだけである。
まだドワーフ王国にも行ってないクリス達には、宝石獣の契約者と言う意味合いが分かっていなかったのだ。
そうは言っても現在、会議場にワイゲン公爵と共に入場したクリス達を、値踏みするような様々な眼差しが集中する。
ヒナタ「・・・・・・」
ちょっと怯えた顔をしたヒナタは、ヒタチの服の裾を摘まむ。
ヒタチも緊張してるのが分かる。
クリスは二人の前に立って、平然とした顔でワイゲン公爵の為に椅子を引いて、素早く補助を済ませると
二人を連れて後ろに下がる。
これにはワイゲン公爵も満足げに微笑する。
そんなこと関係無いとばかりにいかにも見習い騎士にしか見えない三人を、何故ワイゲン公爵が、大切な御前会議場に連れてきたのか、訝しげな眼差しと、敵意剥き出しの若い青年達の視線が、
ガラスの針のように刺さり、痛みすら幻視出来てしまう。
(嫌な視線ばかりだ・・・、これは、二人にはきついかも)
二人の少し前に出て、嫌な視線を一手に引き寄せる為にうっすらわざと気を纏う。
すると視線はクリスに集まる。値踏みする視線ならまだまだましである。
明らかな敵意剥き出しの視線の中には、ワイゲン公爵に向けて殺意が含まれた物もあった。
(これは、針のむしろだね~、ワイゲン公爵はよくこんな場所に平然とした顔で座っていられるよ)
感心するばかりだ。