父の頼み
日曜日
ラブリンの散歩を終えた僕は、
お昼まで勉強するか、図書館に行くか、中間の予習するか迷う所だ。
「ぬっ、おはよう栗栖、散歩か」
ぬう、2m以上の大柄な偉丈夫が、窮屈そうに身を屈めながら、トイレから出てきた。
「おはよう父さん、この時間にいるの珍しいね」
「うむ、課長とゴルフに行く予定であったが……。相手方の一人に不幸があっての」
楽しみにしてたゴルフが中止になって残念そうだね。
見た目こそ強面の薩摩隼人だが、実は下級だけど貴族の家系とか言うから、何か違うんじゃないかな?、父さんを見てるとそう思うよ。
「今日な父さん急に休みになったんだが……、母さん伯父さんがらみの仕事受けちゃっててね」
ん?、何か問題でも、首を傾げて父さんを見上げる。僕も72。あるんだけどね~。
「ああ~。本当に悪いんだが………、母さんの代わり頼む!?」
替わり……、代わり……、えっ、代わり!?
「ベッキーは夕方まで戻らない。急な法事でな……、そのな……栗栖に悪いんだが、母さんにも手伝って貰わないと色々とな………」
いやいやいやいやいや。無理でしょ、相手はあれですよ。父さん?、
「まあ~今回は、母さん曰く、危ないこともないようだし、義妹セレナの買い物と荷物持ちだ。栗栖なら大丈夫!、小遣い弾む。がんばれー、な、お前も方城の男、成せばなる。アレでもきっと大丈夫だ」
「うわ、よりによってセレナ叔母さんか………」
ゲンなりしたよ。ただセレナ叔母さん見た目は良いんだ。モデルしてるし、一応は母さんと変わらないレベルの才女だから。本当に見た目だけね。ただ中身はオッサンだけど………。
「母さんからと父さんからだ」
二万のバイト代か、叔母さんじゃなきゃ嬉しかったかもな。
「頑張ってみるよ」
「よし!、これで何とかなる」
実に嬉しそうな父とは違い、せっかくの日曜日が終わりを告げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『オラ~栗栖、元気だったかしら?』
『オラ~セレナ姉さん元気だったよ。ベッキーはあれだけどね』
間違っても叔母さんとは言わない。女性に年齢の話はNGそれがとても大事だと、
『うん、やっぱりセレナ姉さんは何時見ても綺麗だよね』
軽く容姿を誉めることを忘れては駄目だ。
『あらあら栗栖ったら、おませさんね、お姉さん嬉しいわ、ウフフ♪』
上機嫌で笑うセレナ叔母さん、スペイン男の伯父さん曰く、男は、女を見たら綺麗だねくらいは、必ず言うべきことだってさ。だいたい容姿を最初に誉めると。だいたい上手く行くとのこと。掴みとして間違って無いようだ。
伯父さんはあれで、伊達男なのは間違いない。
『姉さんは残念だったわ、久しぶりに姉妹で、買い物楽しみにしてたんだけどね~。たまには甥っ子とデートも。まあ~良いわね』
『はい、こんな素敵な姉さんとでしたら。大歓迎です』
『あら、ウフフ、栗栖ったら。貴方は義兄さんと違って、会話のセンスが良いから。モテそうね』
それから5時間。ただひたすらセレナ姉さんは洋服から、靴、小物まで選ぶのに掛かった時間だ。
回らないお寿司をご馳走になったけどさ、精神力がゴリゴリ削られ過ぎて、何を食ったか覚えてないや。
ただ、女性の買い物は、当分ごめんでゴサル。