サニアお嬢様とその友人方
《闘技場・赤の広場》
その日、赤の広場にて、
ひときわ注目を集めた特別な馬車があった。
曰く、その馬車に御者はいない。
曰く、その馬車は石に乗り上げても揺れていないようだ。
曰く、乙女の守護者を契約獣にした。真の乙女が現れたと・・・・・・・。
件のサニアお嬢様は、護衛騎士カールが先導する馬の後、一角馬が粛々と付いていく。
レティ「お嬢様、スゴイデスネ~」
彼女にしては感嘆の溜め息を吐いていた。
今でこそ使用人であるが、仄かに気品を漂わせている彼女も、元を辿れば子爵家の三女と言う家柄、所謂お嬢様であった。
サニア「はあ~、また随分と注目を集めてしまいましたわね~、お父様の言うとおりにしましたが・・・・、今回ばかりは失敗いしましたわ・・・・」
何とも疲れた顔をしたサニアだが、父の進めもあって断り辛かったのもある。
娘として、御用商人から素晴らしい物を幸いにも手に入った事が、貴族として自慢したいのも分かるので、文句は言えず。
ただ闘技場に着くや沢山の謁見の申込みに些か疲れたので、ワイゲン公爵家の観戦室に逃げ込んでいた。
なんとも言えない顔のサニアに。レティとて何も言えなくなっていた。
ハナ「おっ、お嬢様!、たっ、大変でございますん!」
慌ただしく入室してきたのは、言わずとしれたうっかり者で、ちょっと毒舌なメイドであるハナ、彼女が大変です~!とか言うときは、大概こうして騒がしく入ってくるのは何時ものことであった。
二人は見合い少し笑っていた。
サニア「ハナ、どうかしたのそんなに慌てて」
ハナ「はい、それはもう大変が、山盛りなんですです!」
もはや意味すらなしてなく、語呂も怪しい。
レティ「ほら、とりあえずこれを飲んで落ち着きなさい」
ハナ「あっ、レティありがとうです~、ぷは~、冷たくて美味しいです~」
ごきゅごきゅ飲み干す勢いだったが、レティが奪う。
ハナ「ああ~、レティ!」
悲しげな顔をして、怨めしげにレティを。
上目遣いに涙目で睨む。
レティ「ハイハイ、ハナいい加減落ち着きなさい。残りもあげるから、なにが大変なのよ」
ハナ「あっ、そうだ、お嬢様!。青の広場で『食ワンGP』なるイベントがあるそうでございます」
レティ「ふ~ん『食ワンGP』ね~、それでハナ、何が大変なのよ~?」
ハナ「はい!、その『食ワンGP』こそ、私達使用人が審査員として呼ばれておりますのです~。むふ~」
一瞬、なに言われたのか理解出来なかったレティ、サニアお嬢様であるが、
レティ「はあ~?!、何で私達が、庶民のために。青の広場まで、行かなきゃならないのよ~」
かなり不満げに豊かな胸の下で腕を組む。
元々庶民出のハナは喜び、貴族出のレティは嫌がる。
サニア「ある意味それは・・・・、仕方ないことよレティ、ハナと楽しんで来なさいね」
ハナ「やった~、流石はお嬢様!、ハナはお嬢様にお土産をお持ち致しますので、楽しみに待っててくださいね!」
レティ「はあ~、仕方ないわね~」
サニア「はい!、楽しみに待っておりますわ♪」
サニアお嬢様から了解を得た二人は、審査員として、食ワンGPを楽しむこととなった。