音楽家ヘリオス子爵2
ファルナンド『(ふむ、礼儀作法はいまいちだが、異界の民とは随分と礼儀は弁えているようだ)』
(おお~、テロップがあるからまだいいが、感触は悪く無さげ~)
クリス「早速で恐縮ですが、風の噂で、あのヘリオス家の天才が、新しい音楽に悩んでると聞き及び、もしもほんの一滴でもヘリオス様ほどの天才の気を引ければと‥‥‥‥」
フェルナンド「フフフ、なるほどね(ほほ~う、よく調べてるではないか!、しかも口上も悪い物ではないな)。良かろう見てやろう」
クリス「ははあ~」
恭しく一礼したクリスの顔に笑みが浮かぶ。
インベントリー160から『熊の物語』を出してヘリオス子爵に渡した。
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『(うむ、動物だけの、いや熊だけの物語か‥‥斬新ではある)』
《熊の物語》
主役『レッサー白黒パンダ』
(動物を主役にした物語は今までなかったが、着眼点が実に面白い)
レオナルド『僕はレッサー白黒パンダのレオナルド、森の外れに住んでいる』
(主役の他に三匹の熊が出るが)
意地悪『白熊』ベイズ
凶悪『黒熊』ディゴス
詐欺『パンダ』ヤルン
(グヌヌヌなんと凶悪な熊達であろうか)
いつの間にかフェルナンドは健気なレッサーパンダのレオナルドに感情移入していった。
レオナルドは底抜けのお人好しであるが、本当の幸せを知るパンダだった。
三匹は、ただのレッサーパンダのレオナルドが、自分達より劣るものと蔑んでいたのだが、
中盤では、ただでかいだけの黒熊、足の臭い白熊、腋臭のパンダが織り成す。コメディーとなり暗い気持ちが明るくなっていて何時しかフェルナンドの顔にも笑みが広がって、時折クスクス笑っていた。
その様子に驚き、執事、護衛の兵士、はたまたメイドまで集まり。何時しか楽しげな笑い声が漏れ聞こえていた。
終盤になると、森に火事が起こり、森の動物が逃げ惑う中、嫌われ三匹をレッサーパンダのレオナルドが、あの手この手と機転を利かせ三匹を助けて見せた。
最後は三匹が改心して、レッサーパンダと仲直りするヒューマニズム溢れた動物物語だった。
フェルナンド『(これは素晴らしい作品だ。今まで見たこともないジャンルである!、ああ~、今私の頭にはあの物語の音楽で溢れている!)』
フェルナンド「クリス君と言ったね。ぜひ書かせて貰うよ」
クリス「ありがとうございますヘリオス子爵様」
こうして音楽はどうにかなりそうな気がした。
クリス「次は、職人かな?」
子爵家を後にしたクリスは、チャーター馬車に乗り込み中町にある。職人街に向かった。