ある日の運営会議
今日も昼は、ランチ会議である。各チームのチーフが集まり、週末に向けて。エンドアースの世界の運営を話し合う訳だ。
要するに我が社が作ったゲーム、VRのことについて話し合う場である。
各チームの中でも私達ゲームマスターとしては、いかにプレイヤーを飽きせず楽しませるか、毎日悩ましいことだ。
そうそう、イベントも考えなければならないし。会社から出る予算をいかに予算内に納めるのが、
これが毎回頭が、痛くなる話だ。
今やプログラマーの多くは会社のサーバー以外にプログラマー用サーバーを持ち、各チーム毎では貸しサーバーを借りているのが現状だ。
業務中のエンドアースにダウンロードする前にも、メンテナンスなんかは徹夜で不具合を調べたり、バグ取りをするのにも貸しサーバーは必要であると報告を受けていた。
今やインターネットゲームは、24時間稼働は当たり前。その為メンテナンスには、プログラムの直しを分野別に各チームと連絡して、メインサーバーとは分けてメンテナンスを行っているのが現状である。
今日のように週末に向けての定例会議があると部下達から羨ましがられるのだが………。
果たして本当に羨ましいかは疑問である。
定例のメインストーリーの進行具合に関する議題。
まだゲームとして発売したばかりではあるが、有り難いことに沢山のプレイヤーがエンドアースの世界を楽しんでくれていた。
集計は昨日までで国内8万人、国外22万人と右肩上がりである。
だが現実は厳しい。欲しがる子供は多いが、VRT機体自体がまだまだ高価な部類であるからだ。
ゲームシェアの多くがシューティングや剣と魔法の世界が人気だ。中でも異世界転生モノはいまや不動の地位となっていた。
我が社ではVR機を使って、医療機器に転用するためのデータが集められていた。
最近はインターネットの普及が色々と会社とプログラマー個人の負担になっていた。
その為我が社も来年四月には、国外に移転することが決まっていた。
どうしてもゲームシェアを考えると、国内のサーバーだけでは足りないのが現状だからだ。いまや国内のシェアに対して、貸しサーバーはもはや足りない。我が社でもサーバーの増設が急務だが……、都内では土地代、プロバイダー、サーバー機器を置く場所、サーバー機器
の冷却機器を置くと電気代とか考えると国内では厳しくなるのも仕方ないことだ。
「続きましてクエストの進行ですが、エンドアース本来の醍醐味であるレイドイベントはまだまだ出来ないのが現状です。」
「そうか、なら今はダンジョン&オークションに力を入れること、だが例の武器も出すんだろ?」
「はい、課金に繋がる可能性も高く。学生には制限を設ける予定です。ゲームとは言え父兄が問題にするガチャとは別にしております、しかし会社としては最低限の課金はしてもらわなくては、我が社だけでなく健全にプレイしているプレイヤーの為にもなりませんので」
「ふむ、だがあまりパワーバランスを壊すような武器は出さないようにね。あんなので会社にダメージがあるのは看過出来ないからね。」
「その辺りはしっかりと話し合っておりますので。」
「あっ増田。チーフは?」
「宮さん。チーフは定例ですがどうしました?」
「ああそうか、それは残念だったな。」
「へっ、それはどういう……… あれ?それって…」
ニヤリと笑う宮さんと呼ばれたよれよれのワイシャツをだらしなく気崩してる中年のおっさんは、
「始まりのメインストーリーが解放されるかもな」
宮さんが見ていたパソコン画面を見ると、あのチーフが問題作だと宣うトンでもレッサーミノタウルスが討伐された場面だった。
「あっ、あの曰くありのあれが討伐されたんですか」
「そうだ。しかものレアドロップだとさ。魔鉱石じゃなく延べ棒だ。まず出ないのだがな………」
ニヤリと不敵に笑っていた宮さんの眼の奥が、驚愕の色をしていた。
「まっマジかよ。一発で引きやがったのか!スゲーな!誰だよそのプレイヤーは」
赤熊族の大剣使いクリスと表示されていた。
「コイツはなステータスを見ると運が低い癖に、変な引きが強いタイプのようだな?」
気になったのでログを見ると、風の腕輪を持っているようだ。宮さんの言葉に納得である。
「大丈夫ですよ宮さん。例えレアドロップで出たとしても魔鉱を加工するのは……… あっ。」
増田も気がついたようだ。
そう、次のイベントはお金の洞窟にはあらゆる鉱石を加工できる魔方陣があるのだ。
コイツ本当に変な所で引き強いな。
「タバコ吸いたい」
社内禁煙になってから肩身の狭い宮野であった。