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スキルも決まったことだし。軽く朝食を食べたら、冒険者ギルドへ向かった。
「おはようございます。クリス様の貢献度ですと、後5回Fランククエスト達成なされれば、Eランクに上がることでしょう、今クリス様がお受け出来るクエストは、こちらになります」
朝一番のせいか、冒険者ギルドはわりと空いていた。それから受付NPCが違った。小さな変化だが、細かい作り込みだな。昨日いたきつめの美人から、今度は人好きする柔らかな印象の女性NPCだった。思わずまじまじ見つめていると、視線に気づいたのかにこやかな微笑みで返され、ハッと息を飲んでいた。ちょっぴり照れてしまったのは内緒だ。
「最新のAIは凄いな、本物の人間臭いし」
妙な感心をした。始まりの町から先の町に行くと、成人男性待望のゲームにも関わらず、フーゾク関連もあるらしい。俺なんかは年齢が引っ掛かるため通うの無理な筋だてだが。おっと今日もゴールド稼がなきゃ、なんだかモヤモヤがあった。世の中ゲーム内でも世知辛い気がした。
クエスト
森ウルフ討伐×5
毒草採取×20×2束
町の地図制作の3つを受けた。
まだ時間も早いし。ログ使ったスキップして町の南。森側に出るのではなく、遠回りになるが、歩いてマップ埋めしながら向かうことにした。
「おっ雑貨屋発見。ついでに微回復薬とどくけし薬3本ずつは、買っとくか」
混雑してる始まりの町だと、回復薬1つ買うのも一苦労だから、正直助かる。せめてBPに余裕があるなら、初級の製薬くらいは覚えときたい、
「いらっしゃい、おやおや稀人の冒険者さんかい」
妙に古風な風貌で、雅な口調の中年おばちゃんが、にこやかに挨拶してくれた。ここは日本人として無難に挨拶を返す。
「おはようおばちゃん、微回復薬3つとどくけし薬3つあるかい」
「ええ、あるよ全部で850ゴールドだよ」
「はいよ。ついでにラビィの毛皮買い取り出来る?」
「おやおや、家の店で良いのかい」
「ああ~雑貨屋の方が、多少安くなるんだっけか、でも混み混みギルドまで行くのはちょっとね」
「おやおや稀人さんは、冒険者ギルドだけしか売り買いはしてないのかい?」
いかにも意味あり風な口調のおばちゃんに、あれっ…………そう言えば、ギルドって、他にもあるって聞いたような、
「おばちゃんさえよかったら、次も売るので、その辺教えてくれる」
何時ものノリでたずねてから、あれ大丈夫かな~とか思っていたら、にんまりホクホク顔で、二つ返事、
「おやおや今度の稀人さんは、商売人のこと良くわかってるじゃないの。よしおばちゃんがその辺色々教えて上げるさね」
『シティクエスト、商業ギルドに登録せよ、報酬BP30』
おっといきなりだな。
「稀人さんて呼ぶのも失礼だったね。あたしゃマレンダってんだよ」
「俺はクリス、おばちゃんよろしくね」
「あぁよろしくねクリス君」
人好き?世話好きオーラ全開で、実に嬉しそうなおばちゃんに。あれ?、このパターンってもしや、長話かな…………
「まずは冒険者ギルドの他にも。町にはギルドがあるのは知ってるかい?」
「確か商業ギルド、王都エルダにある魔導師ギルドだろ」
「あぁそうさ、その他に農業、ハンター、傭兵、薬師ギルド、鍛治ギルドがあるのさ、珍しいところだったら、海辺の町には漁業ギルドなんてもあるよ。冒険者なら鍛治ギルドにはお世話になるだろね。職人と仲良くしとけば、もしかしたら紹介状書いてくれる店主もいるさね」
へえ~意外にも他のシティクエストらしき情報貰えたな、それにしても色々なギルドが多いな。
「例えば各ギルドに登録すれば、ギルド毎にクエストがあってさ、市民と違って、稀人さんには特別に重複登録がゆるされてるんだよ。ただし3つまでだよ」
なっ、なるほど、おばちゃんに釘を刺されなきゃ、俺みたいなやり込みタイプの無課金プレイヤーならば、適当に全部さがして、片っ端からギルド登録していたかもな。それでクエスト三昧とか、もしかすると運営もプレイヤーが、迷走しないようにと登録出来る数を決めたのかもな。後は課金すると
その辺も優遇されたりするんだろうな、
「中にはあまり知られてない危険な『闇ギルド』、なんてのもあるそうだよ。おばちゃんみたいな真っ当な商売人には、関係ないがね」
とても真剣な眼差しだった。こちらを――俺を心配するような。
「わたし達商売人が登録してるのが、商業ギルドさね。ただし商業ギルドに登録するには幾つか規定があってね、商業ギルド準幹部、又は幹部からの紹介、あるいは大商会の番頭以上の紹介が必要さね」
おっとゲームを始めたばかりの俺には、かなり厳しい条件だな。
「だがね安心おし、わたしゃ一応始まりの町の商業ギルド幹部の一人さね、あんたがわたしの頼みを受けてくれたら紹介状書いてあげるよ」
なるほどこうやってクエストに繋がるのか、一安心した。