娼館の攻防Ⅱ
クリス「はい、此方だと『ダルク』のクリスと言えば分かりやすいですか?」
キョトンとした顔が何だか年上の女性なのに、可愛らしく見えた。
どうやら今回は、攻略するパターンじゃないようだ。
しばし着替えをするマダムリヨンを待っていると。
『まま~おはよう』
『あらあら、珍しく早いわね~』
『う~ん、だってままの話し声が聞こえたから、何だか優しげな声が気になってね』
『マリーナは相変わらず目敏い、この場合は耳ざといかしらうふふ♪』
なんだかゲームとは思えない日常会話である。
『それで、それでまま~、誰が来てるのかな?』
『あらあら内緒よ、実は‥‥‥‥』
『えっ!、凄い、あの噂の‥‥‥‥‥』
余計に会い辛いような気がするんですが‥‥‥‥。
マダムリヨン「入るわね、さあ~リリカ入りなさいな」
リリカ「はあ~いまま!」
やたらと元気な女の子が、ニコニコしながら入ってきた。
リリカ「えへへ~、よいしょ♪」
多分クリスが居るのは応接間。
お金持ちか、裕福な商人、貴族、またはそれに準ずる者を摂待する部屋だろう。
クリス「ちょ!、わざわざくっついて座らなくても」
リリカ「あらら照れちゃて、可愛いのねクマのお兄さんは♪」
ゾワリ、肌が粟立つような何とも言えないさわり方をされた。
リリカ「あらら♪」
チロりと舌がなめまかしく唇を濡らした。
マダムリヨン「こ~ら、あんまりからかうんじゃありません」
リリカ「はあ~い、クマのお兄さん『今度は夜に来てね』」
クリス「なっ‥‥‥‥」
チュッとクリスの頬に啄むようなキスをして応接間を後にした。
やや呆然とリリカが出ていった。扉を見ていたクリスは、ハッと我に戻る。
マダムリヨン「うふふ♪、あらあら、あの子ったらクリス君のこと気に入ったのね」
クリス「はっ、はあ~」
(なんだかクマのお兄さんって呼ばれるのは懐かしかった。それに‥‥‥‥)
ウータン、ヨッシー、ミィーの三人に何処と無く似てる気がしてドキドキしたなんて、言えるはずもないクリスだった。
マダムリヨン「それはそうと『ダルク』はいつの間に、貧民街の外れから、歓楽街にまで足を伸ばしてるのね~」
意味ありげな眼差しに、思わずクリスは背を伸ばす。
ここ娼館があるのは歓楽街の外れ、ちょうどスペクターの支配地に重なる地に娼館リヨンの建物があった。
世情に敏感になっているようだ。
クリス「そうですね~『ダルク』のためにと言うよりは、自分の都合の為に、城門まで馬車が通れる範囲の支配をしてしまおうかと思いまして」
マダムリヨン「‥‥‥‥それは、それはまた」
呆れたように苦笑いしていた。