閑話・貧民街の噂2
どうなったか、ある意味分かりきっていたが、噂好きがこうまで言うのだ。マシナ結果になったことを祈る。
一瞬暗い影を落とす腹ペコに対して、ニヤニヤ楽しげな顔をしている噂好き、流石に訝しみ睨む。
噂好きな貧民「俺は見ていた。あのヤブ医者が似せ医者だと断言した冒険者が『ダルク』の者だと名乗った時をな」
そこからヤブ医者がギャングスペクターの者だったこと、
冒険者に暴かれ、スペクターの傭兵が出てきたこと。
その冒険者が、用心棒を倒して、あの辺りが『ダルク』の物になったことを話した。
ごくり、
今度の唾を飲み込んだ音は、息を飲んだからだ。
噂好きな貧民「彼奴な、『ダルク』に入ったぜ、娘さんをその冒険者が助けてくれたんだ」
腹ペコな貧民「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥そうか」
噂好きな貧民「俺は行くよ」
腹ペコな貧民「そうか‥‥‥‥」
噂好きな貧民「炊き出しをやってる所まで案内するから、後は、好きにしろよ」
腹ペコな貧民「‥‥‥‥‥ああ」
男には分かった。噂好きが、誰かに案内されて炊き出しを食った事を。
男は、ゆっくりと立ち上がった。
ここは西城ワイゲン、貧民街である。
夢も希望も失った。掃き溜めが集まる底辺の居場所。
顔を上げた男の眼に、ほんの少しだけ、光が宿っていた。
やがてこの小さな歩みが、大きなうねりへと変わる。
そんな夢物語があるかもしれない。
小さな物語は、少しずつ。
貧民街に広がり始めていた。
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《元空き地2・現在『ダルク』貧民市場》
ジャンヌ「ようやくここまで来ましたね」
ユーノス「ですね~」
何もない空き地をジャンヌ達が購入して、名実共に『ダルク』の物である。
サイモン「おお~此方に居ましたかジャンヌ殿」
ローサ「お父さんいたね!」
ジャンヌ「‥‥‥‥?、ええーとあなた方は」
ジャンヌが戸惑うのも仕方がない。ここは外れとは言え、貧民街の中である。
薄汚れてはいるが、貴族では無いだろうか?、
サイモン「おお~これは失礼をした。ワシはサイモン・グリンバーレ」
ローサ「私は、ローサ・グリンバーレ」
ジャンヌ「ええーと、そのお二方がどうして此処へ?」
当然の疑問である。
サイモン「うむ、昨日の事であるが、ワシはクリス殿に娘の命を救われたのだ。聞けば貧民の救済組織を運営してると知って、馳せ参じたのだ!」
ローサ「宜しくね」
ジャンヌ「クリス様に!、歓迎する」
後日、噂好きの情報屋ルカン、
何時も腹ペコの料理人エイビスの二人が『ダルク』の幹部となるのだが、それはまた別の話だ。