閑話・貧民街の噂
ある噂を最初に聞いたのは、暑い日が続いた日の事だ。
噂好きな貧民「おいお前知ってるか」
腹ペコな貧民「あん、なんだお前、どこかで食える残飯でも拾ったか?」
噂好きな貧民「違うぜ!」
腹ペコな貧民「なんだ違うのかよ、お前は相変わらず元気だな」
噂好きな貧民「おうともさ。腹が減って暇だからな」
腹ペコな貧民「はっ!、違いないぜ」
鼻を鳴らしていた。
腹ペコな貧民「それでどんな噂聞いてきたんだ~、お前」
どうせ暇ならと話を仕向けた。
噂好きな貧民「おお!そうだよ。俺ら貧民と同じ貧民が、立ち上がったてのは知ってるか?」
腹ペコな貧民「はあ?、お前もそんな夢物語のような噂話。嘘に決まってンだろ!」
ここは夢も希望も失った。掃き溜めが集まる底辺、町の者からごみを見るような目で見られ。
何もかも諦めた人間が、絶望しながらも惰性で生きていく小さな世界である。
噂好きな貧民「ところがだ。『ダルク』って呼ばれる組織はあるんだぜ」
腹ペコな貧民「へえ~。そうかい、どうせ‥‥‥‥‥」
毒のような諦めの言葉をつむぐことは無かった。
噂好きな貧民「ギャングじゃないぜ!、ほらよお前にだ」
腹ペコな貧民「食い物じゃないか!、良いのかよ」
噂好きな貧民「ああ、食えよ。俺は『ダルク』の炊き出しを食ったからな」
腹ペコな貧民「なっ、まっ、マジか?」
受け取った黒パンは、まだほんのり温かく、冷めてるが蒸かした芋まであった。
ゴクリ、喉がなってしまう。
腹ペコな貧民「ほっ、本当に食って良いのか?」
噂好きな貧民の頷きを見て、最早我慢できなくなって、ただ涙ながらに黒パンを食べていた。
噂好きな貧民「旨いだろ、俺も昨日同じ思いをしたんだ」
にこやかな笑みを浮かべた噂好きな貧民に、黒パンを食終えた腹ペコが顔を上げていた。
噂好きな貧民「お前も知ってるだろ、あの娘と彼奴のこと」
腹ペコな貧民「ああ、昨日、ヤブ医者の所に連れてったよな‥‥‥」
貧民街ではあまり見ない優しい娘だったなと呟いた。
噂好きな貧民「昨日な、俺もいたんだ。噂の『ダルク』の様子を見に行った時によ」
どうなったか、ある意味分かりきっていたが、噂好きがこうまで言うのだ。マシナ結果になったことを祈る。
一瞬暗い影を落とす腹ペコに対して、ニヤニヤ楽しげな顔をしている噂好き、流石に訝しみ睨む。