本選第一試合
本選になると闘技場の主催者である侯爵のなんたらって、中年親父が不敵な笑みを浮かべて、貴族達が座る席の上段に立ち上がる。
『紳士、淑女の皆様ようこそおいで下さりました。今宵、異界の戦士達が、私の闘技場にてその力を見せてくれると。私は信じております』
侯爵が手にしてる魔道具だが、どう見てもマイクにしか見えない。そこは突っ込まないけどな。
『今宵、皆様のお耳汚しにならないよう進行させる司会を紹介いたしましょう』
撫で付けたブラウンの髪にスポットライトならぬ、照明の魔道具が侯爵を照らした。
『我が国が誇る美姫、第三王女カトレア様である』
「「「「「ザワザワ……………」」」」」
「「「「「おお~」」」」」
NPC達から歓声と。動揺のざわめきが上がる。
『カトレア・ロード・ランバルト第三王女』
ログが流れた瞬間。
一際スポットライトが、侯爵の後ろに当たる。
僕達プレイヤーは、一瞬ダレ、状態だったけど。
説明ログを読むのに忙しく、それ処ではなかったよ。
運営さん、もうちょっとプレイヤーに親切にして欲しいかな………。
今回のイベントは色々説明不足な気がするよ。
『風の魔法を得意とする王族の中でも、風の精霊に愛された。カトレア王女は、大きなイベントに引っ張りだこ』
へえ~。王族なのにね。
『武道派の姉に連れられて、冒険者の真似事もしばしば』
スポットライトに照らされた。いかにも御姫様って、格好の光に照らされて髪が光を放つように輝く女の子が、こんな子居ないよリアルにはな、ピンク色の髪を縦ロールに、悠然と現れ、カテシーの美しい淑女の一礼を見せていた。
『今宵は、バルツ侯爵の御厚意により未熟ではありますが、司会と進行を受け回りました。カトレア・ロード・ランバルトがお送りいたしましょう』
侯爵の名前バルツね。でもさ侯爵が魔道具を使ってるのに対して、カトレア王女は、恐らく風の精霊魔法を使ってるのか、開場全体にカトレア王女の声が届いていた。
━━後日分かった事だが、
カトレア王女の声は、王都中に響いていたと。話題になっていた。
何よりも精霊魔法が、話題になったのは言うまでもない。
未だに【精霊魔法】と職業【精霊使い】がどうやったら修得出来るのかが分からない。
NPC冒険者の中に。【精霊魔法】【精霊使い】が要るのだ。覚える方法があるのだろう。
『第一試合クラン・ランクルバーンサブリーダー戦士タケル』
既に闘技場に出ていたタケルは、緊張した顔をしていた。
『対するは我が国有数のクラン・聖騎士団副団長セルゲーリ』
カトレア姫の司会に合わせるよう、闘技場が歓声で揺れた。