さ迷う幽霊船
━━━ゴウタス……
再びPVが流れた。
『あぁ………、まさか………こんなことになるなんて』
今度の交易が上手く行ったら………。
妻と息子、何よりも生まれたばかりの娘
四人で、ゆっくり出来る筈だったのに………
荒れた海、高い波、小川の木葉のように。
船はいつ波に飲まれても可笑しくない。
一人減り、
二人流され、
三人海の藻屑と化してゆく
あまりにも無力
『あっあぁ………』
予想外な季節外れの嵐にあった。
何時もなら出航を見合わせる風の中。
無謀にも海に出てしまった。
━━━ああ……
済まない
済まない
━━━すま……………………………………な……………………………………………い
確かにゴウタスの父は、嵐にあっていたようだ。
今見てるPVをゴウタスは見れていない。
にもかかわらず固い表情をしていた。
ややうつむき加減に、肩を震わせ、手を強く握り締めていた。
こいつ、NPCなんだよな………
泣きそうな顔をしてるアイコさん、ミドリ、ヒイロ、キイロも沈鬱な顔をしていた。
皆の視線の先に。
大きな船があった。
そうだ。
ゴウタスの父が所有していた。大型の公益船の幽霊船が━━━━、
『父の遺言』
クエストのログが流れた。
何とも言えない気持ちになる。
僕の船は、ゆっくりと進み、
やがて幽霊船に接近して、止まっていた。
「………船長」
ゴウタスがパーティに入りました。
キイロ「NPCがパーティに………」
城塞都市ガレン、王都バーレンからの追加メインストリーでは、NPCとも希にパーティを組むこともあるようだ。
アイコ「さあ~て、何が出るかな何が出るかな」
鼻唄混じりに、幽霊船に乗り込んでいった。
ヒイロ「ワクワク、そわそわ」
キイロ「……………………」
ミドリ「兄貴大丈夫?」
ん?、キイロの顔が強張ってるような………
キイロ「だっ、だだだだ大丈夫だし」
クリス「な~る」
キイロ「ちっ、違うし、クッ、クリス気のせいだし」
口調まで怪しい。
幽霊船に乗り込み、甲板から、船室に入る扉を開ける。
びくびく、ヒイロわざとらしく足を鳴らした。
びくっと首を竦めた。
やはり幽霊が怖いらしい。
キイロ「やっやっやっ、止めろよ」
恐がり過ぎないか?
ヒイロ「…………ッス」
笑いを堪えてるヒイロとミドリ、アイコまでニマニマしてるよ。
前までヒイロは男の子だと思ってたが、女の子だったらしい。よく言えばボーイシュ、悪く言えばスレンダーな?、
女の子なら邪推なしで、お姫さま扱いしないと、女の子の感が怖いしね。
ヒイロ「ん?どうしたのクリス君」
クリス「キイロって、落ち着いてるイメージあったんだけどね」
ヒイロ「あぁ~、分かる」
こんどはミドリが、わざとらしく扉を強く閉めた。
キイロ「ヒッ………」