緋巫(ひみこ)の事情
『ヒイロ』
小金井緋巫18
私たち兄弟の両親は、何を隠そう、VRの開発者グルーヴの一つだった。
その関係もあって、私たちは被験者によく選ばれていた、
俗に言う、ゲーマー、バイト、バグ屋さん等と呼ばれてる。便利や扱いされてる一人だと思う。
VRが正式に完成して、各メーカによるタイトル発売がなされたのは、今から数年前のことだ、
その頃は、私が高校に入学して間もなくの頃だ。
それから毎年新しいタイトルが、各メーカから発売されるようになって、私たち兄弟も有名ゲーマーとして、βテスター半分バイト半分の生活が始まった。
今年も、新しいタイトルが発売されることになった。また忙しくなるかな……、とか考えていたのだが、
兄貴の小金井喜一郎が、この春大学卒業して、父の新しく勤めてる会社に就職した。
そこで私たち兄弟は、兄貴の為にと、今年の春、兄貴の会社で販売されていたゲームが、
モンスター・イン・エンドアースだった。
モンスターと冒険の終わりなき大地。
って、意味が込められてるとか、父は熱く言っていたが、
正直ゲームにそこまではね………
姉の小金井碧子ほど、ゲームにのめり込んではいない私と致しましては、
夏のコミケが忙しくなるから、それまではって感じのバイトである。
私たちのクランメンバーも大体が、兄貴と同じ会社の新入社員か、私たちと同じ半分バイトで構成されていた。
ようするにバランサーの役目を持っていたりする。
たまに目につくプレイヤーと友達感覚での情報交換したりと、課金プレイヤーとゲーム進行の確認が主な仕事である、
バイトと言えど運営側だ。色々と気は使うが、仕事時間は割とルーズだし、短大生には有り難いバイトだ。バイト代も高いし有り難いことで、
さてさて今回私たちは、あるプレイヤーの一人、クリス君からメインストリーの事で、
クエストに招待された。
ちょっと気になる情報をくれたのもあって、兄貴は二つ返事だった、
私としてもバイトリーダのアイコさんも乗り気だ。
ヒイロ「船に乗れるなんてね♪」
あっ、違う理由らしい。何だかアイコさんらしく。ミドリと二人はしゃいでいた。
海なのに波は荒くなく。風も感じれたし。何よりもこの爽快感が面白い。
不自然に成らず。魔動機による震動と、体感スピードも素晴らしい。
流れる背景、グラフィックも秀逸だなと思えた。
『キイロとクリス君の話を聞いてると━━━』
ギルドごとにメインストリーがあると言う仮説は、確かにと思えた。
私たちバイトには、攻略情報まで流されてこない、でもこうしてプレイヤーの予測を聞いて、日誌に書くことが増えるのは助かるわね。
何もしないと、バイト代にも反映されないので、困るのだ。