イベント最終日、欲望のオークション開催
━━━その日。
大陸中の富裕層が、オークション会場街を訪れていた。
欲望に暗い眼を。仄かに光らせながら………、
今か……、
と、その時を待っていた。
……そう欲望渦巻く、オークション開催を。
セレブリティー、阿鼻叫喚の様を、一喜一憂する様をただ楽しむ為に。
あるいみオークションは刹那的な快楽を与えてくれた。
時にはわざと値を吊り上げたり、時にはあれは駄目だと囁くと。驚くほど安く売れてしまうことがあった。
まるで人の生と死を擬似的に感じられるのだ。
あるものは金を湯水の如く吐き出し━━時に破滅する。
そんな愚かな姿を見るのは……、最高の娯楽であった。
貴族、王族、豪族、あるいは山賊の王と名乗る者、商人として品を出すのは無論、仲介者としてオークションに参加して、極上の品々を手に入れようと企む者。闇のギルド所属者の暗躍。
権力者にとっては、最高の喜劇を見るのだ。
高貴な人々にとって、最高の酒の魚であった。
━━人間の欲望に限りはない、
そんな特殊な風景を、ただ見ることが、ある意味最高の娯楽であった。
━━━貴族階級の淑女は、艶然と微笑み。時に起こるハプニングを楽しむために。
━━ある商人は勝機を見出だして、
莫大な財を金貨に替えていた。
━━ある国の王子は、伝説の秘薬が出るのでは、一縷の望みを賭けてやって来ていた。
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スマホから、イベント最終日のPVを見ていた。
まだ時間はあるけど、残念ながら僕は学生だ。それに今は昼休みである。時間は有限だからね。
僕は、母自作の茶色いお弁当を前に、そっとため息を吐いていた。
「ベッキーのと間違えたな………」
油こい物だらけの昼はちょっと……。
手を出せずにいた。
「おっ、方城のお昼はガッツリか」
「ああ……」
「ん?、どうしたげんなりして」
「ん~、油こいものはちょっとね」
何となく僕の言いたいことが分かったのか、
「そう言えば、方城は部活入ってないんだったな」
「今のところ帰宅部だよ。そろそろ入るか悩ましいところだけどね」
「ああ~、なぁ方城」
「ん?」
「俺のと交換しないか」
みれば何となく。彼の言いたいことも分かった。
彼のもある意味同じ茶色いのでも、彼のは田舎料理の詰め合わせ。
要するに根菜の煮物ばかり入っていた、
炭水化物は里芋とご飯くらいだな。
「いいよ。僕もたまには煮物が食べたいからね」
………その日。
お昼を供にする友達が出来たようだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
帰宅前に。スーパーに寄って、箱ティシュとトイレットペーパーを購入した。
「後は洗濯洗剤と歯磨き粉かな」
母から帰宅時間前にチャットから買い物リストが送られてきた。アプリのおサイフを見ると、入金までしてあるし。
「後は食材か……鶏胸三キロと。今日は唐揚げかな………」
また茶色い物かと。ため息が出ていた。