閑話・その頃の北条家
★北条兼光視点
この度、遠縁にあたる方城家に夏休みを利用して、娘と息子を連れて行ったのだが、わしと妻はかなり困惑していた。
「あなたこれはいったい・・・」
「・・・分からん」
そうとしか医者でも言えない。ありきたりであるが、『怪しい宗教家ならば奇跡が起きました!。』とか言って騒ぎそうであるが、得てして事実は小説より奇なりが、この場合あっているのか分からんのだ。
「どうしてこうなっておるのだ?」
素直に言えば喜ばしいことである。我が家の跡取り二人が回復し始めたのだからだ。
ただ素直に喜べるかと言われれば、良かったと言う親としての気持ちと、なにやら得体のしれない何かが起こった。
そう考えてしまうのは職業がらゆえか、
我が北条家は医療関係の総合商社と呼ばれる物でもある。
特に多くの大病院、大学病院に海外の最先端医療器具販売、リースも請け負っておるが、
うちとて開発の一環として寝たっきりの患者のためにVR事業も行って来たし。その会社も上場して本社をアメリカに移している。
無論とある大学の理事も何代も引き受けているので、グループ傘下には大学病院等もある。
それゆえ北条家の成り立ちを辿ると、古くは仏門の漢方医から成り立った家とも伝わっておる。
戦国の世では、世継ぎ以外仏門に入れる習わしがあったのだ。特に戦国の世では大名であろうとどうなるか分からぬ世であったそうだ。それゆえ北条の家も多くの子を仏門に入れたり名を変えて流れをくんでおる方城家等も残っておるのだ。
古くから北条家は名家と呼ばれるようになったからか文武の理を幼少より学ぶ古き名残があるゆえか遠縁である。
方城家のように道場を古くからやっている分家も沢山残っておるのだ。
そのせいか、古い文献や言い伝えが残っておる。その中にはとても信じらるぬ物語も残ている。
「奇跡としか言えぬな」
「・・・そうですわね」
何とも煮え切らない夫妻には、とある思惑があったので色々と予定が狂わされたのであった。
それはとても素晴らしいことなのだが、古い名家の当主ゆえ夫妻としても素直に喜べない気持ちがあったのだ。
特に妻は、娘の莉奈を方城の栗栖を婿に迎える算段をつけていただけに困惑はひとしをであろうか、
「悪いことではない。莉奈の回復を待ってから改めて考えれば良いのだ」
「そうですわね~」
兼光の妻香住は残念そうに嘆息していた。