閑話・その後ランバルト王国
★ワイゲン公爵視点
どうやら上手く行ったが、ベルゲン、プラハ派閥から目先のよい貴族どもが逃げたようで二人とも悔しげにしていた。
「・・・我が方が上手く行き過ぎた分、二人の方が手薄になってしまったか」
つくづく腐った者ほど吉備に聡く。生き汚い物であるがな・・・。
「それにしてもクリス男爵の懸念が当たってしまうとはな、危うく娘を失う所であったわ・・・」
クリス男爵が秘かに娘サニアにプレゼントしてくれた王家も宝物庫に入れる程の品でなくば本当に命を失っていたであろうとは、
「またクリス男爵に助けられてしまったな・・・」
寄り親としては優秀な貴族が寄り子にいることは嬉しい限りであるが、下手に持ち上げて他の貴族からクリス男爵が疎まれてしまってはならないため。クリス男爵もそれを考えてたのか秘かに娘にプレゼントを送るに留めてくれたこと感謝に堪えぬわ。
「旦那様、お嬢様がお目覚めになられました」
「そうか、医者はなんと」
「はっ、健康そのもので、あれが少しばかり精神的なショックとなっておるとのこと、しばらく養生なされば回復されるとのこと」
「そうか・・・、ご苦労であった」
「はっ」
そう告げて、ワイゲン公爵家の執事補佐の青年は一礼して王城にあるワイゲン派が使用している離宮の執務室を後にしていた。
「無事でなによりであった・・・」
我は王家に連なる公爵家の当主であるが、人の親でもある。
愛する娘を失わずに済んで安堵していた。
「クリス男爵よ。この恩我は忘れぬぞ」
そっと呟いていた。
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★レティー・カガレイ視点
お嬢様がまさか、舞踏会の最中命を狙われてしまうとは、なんて恐ろしい事件が起きてしまったわ。私は子爵家の次女ゆえお嬢様と一緒に舞踏会に出ておりましたが、あまりのことに咄嗟に体が動きませんでしたの。
「・・・お嬢様」
「レティー、お嬢様は大丈夫だよ~。あのクリス様が秘かにサニアお嬢様にプレゼントしてくれた品があったお陰で怪我も大したことにならなかっただよ~」
「ハナ・・・、分かっているはよ。でも、悔しいのよ」
「そうだか~、レティーは生真面目だからな~」
ハナの能天気と言うか、胆が諏訪ってると言うか変わらない彼女には精神的に助けられてばかりね。
「まずはお嬢様の為に美味しいお茶とお菓子を用意するのがええだよ~」
「・・・はあ~、全くハナったらお気楽なんだから」
すっかり毒気を抜かれたレティーは落ち込んでばかりはいられないとばかりにふんと鼻を鳴らして立ち上がっていた。
「そうね。行くわよハナ」
「はいさ~、お嬢様の大好きな紅茶が何時でも飲めるようにしとくだよ~」
にこやかに笑うハナを見てると腹に力が湧いてくるから不思議である。
ハナのこう言う所が憎めないのですわ。
こうしてサニアお嬢様の御付きである二人も動き出していた。