貴族って馬鹿ばかりなの!?
★とある衛兵視点
今宵、あの内戦から王都復興を祝い舞踏会が開催される。
そのため王国貴族が一同に会する事になるため、我々王城勤務の衛兵、下級紋章官、城務めの多くの使用人が半月前より慌ただしく働いておる。
まず。貴族とひとくくりに例えるが、実際に舞踏会に参加出来る資格が与えられるのは士爵以上の貴族家の当主のみからである。
俗に、騎士も貴族と呼ばれるがブルーブラッドと呼ばれる貴族家には数えられていない。
士爵も父が子爵の三男までに我が国の宰相閣下に願い出て、金で与えられる名誉貴族であり、その子供はもはや貴族ではなくなり名主や元貴族の一族扱いとなるわけだ。
それとことなり騎士爵とは貴族では一応あるが、平民に与えられる名誉職との側面が高く、そこから成り上がるには並大抵の功績では難しい話であった。
もっともつい最近までは・・・。
今や王都の民でクリスと呼ばれる異界の民の成り上がりの物語を知らない者はいないであろうな・・・。
「クリス男爵閣下!、王城へようこそお越し下さいました」
我々、王城の衛兵にとっても憧れの人物であるので、自然と口調や敬礼にも力が入ってしまう。
普通、成り上がった貴族てのは、後々ろくでなしになる人物が多い中、
クリス様は平民に優しく、我々王城勤務の衛兵、使用人にも気を使ってくれる。数少ない本物のブルーブラッド様であるからだけどな!。
「バノン衛兵長さんお久し振りです~。勤務ご苦労様ですね。先日お子が生まれたとか、まことおめでとうございます」
「はっ!、ありがとうございます」
「舞踏会中は、色々と大変で無理でしょうが、これは僕からお祝いと、こっちらは後日皆で飲み代にでも使って下さいね~」
ずしりとした皮袋の上に衛兵の給金では買えないクリスタルデパートのオーダーメイドチケットと、見事な長剣、それに守りの懐刀が添えられていた。
背筋に電撃が走る思いで受け取り、クリス男爵閣下に深々と一礼していた。
たかが衛兵隊長の一人のでしかない俺の名前を覚えてくれて・・・、
このようなことが自然と出来る貴族を俺は知らない。彼こそが真の貴族であろう!。
思わず鼻の奥がつんとしたが、なんとかクリス男爵の馬車が城門を潜るまで堪える事ができたが、
程なく仲間に肩を叩かれ涙で滲む中。クリス男爵閣下の馬車に、衛兵一同一礼していた。
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★とある子爵視点
「ウダン殿、それにしてもようやくですな~」
「うむうむしかり!」
「我々の尽力が認められこうして、ワイゲン閣下からお声が掛かるのだ、それ相応の利権が期待できるのではないか」
「うむうむそうであるな!」
「我々のような王国貴族の鏡を閣下も寄り子に出来て鼻が高かろうて、ワハハハ」
「しかりしかり、ヌハハハハ」
ここは王城の広間の一つ、時に晩餐会会場とされる大広間の特別な水晶の間と呼ばれる豪奢な広間であった。
(・・・またであるか、自分達では何もせず。ワイゲン閣下に集っていた寄生虫の分際で!)
表面上は穏やかな笑みの仮面を張り付け、有象無象な底辺貴族の自慢話に耳を傾けながら、ブルーブラッドと呼ばれる王国貴族の中でもどうしょうもない者達を平眼する。