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第01話 儚き夢の結末に 前

こんにちは! 作者です^^

お久しぶりのファンタジーとなりましたので、変な所に気合いが入っています。後書きとか変なテンションになっていますが、全く気になさらないでください(´∀`)


こんな駄作の小説を開いてくださった皆様に、感謝いたします!


では、ごゆっくりどうぞ!!



―――ここは、地球という“世界”のもうひとつの異世界、“クローン世界”。


 クローン世界はこの世界と並行して存在し、同じように時は流れていっている。でも、不思議なことにそこだけが地球の民の目には映らないんだ。


 クローン世界はこの世界と同じような環境、空間だけど、島や国によって文化が違うように、まったく発達しているものや流行が違った。その世界では化学の代わりに攻撃用の“魔術”、生活用の“魔法”が発達していた。しかし、その魔術や魔法が使えるのは限られた一族のみだ。そのうちのひとつが、俺たち『魔獣族』だ。


 魔獣族は『魔獣』という、強力な力を持つ獣をそれぞれ司っている。彼らが魔術を使える唯一の一族で、その人口は1000にも満たない。昔はもっと多かったが、『神族』との戦争でかなり減少した。長寿で頑丈な魔獣族でも、その“戦争”では耐え残ることができなかったのだ。


 神族とは、人間にもっとも神に近い存在と言われる、人間のような姿をした悪魔だ。俺達は奴らのことを“偽りの神”と呼び、早く奴らを滅ぼして本当の“女神”を蘇らせたいと思っている。奴らは俺達の女神を封印し、魔獣族から真の力を奪ったんだ……。


 その“偽りの神”である神族が、“幻術”を操る。魔術と互角である迷惑な存在で、それがなければ“戦争”で勝利を得ることができただろう。あの力さえなければ、我々は負けることがなかったのに……


 神族は幻術を用いて、村や町を滅ぼしていった。同時に、自分達に従うと決めた人間だけは殺さなかった。人間はやがて神族を尊び敬うようになり、神に願い乞うことで自分達も幻術を手に入れて行った。



 しかし、本当に神族や幻獣族だけが善とされ、正義と言えるのだろうか。


 ―――それは違う。ただ神族や幻獣族は人間に間違った信頼をされているだけだ。そんなものを祀っちまう人間はどうかしている。本当の“神”はもっと偉大なる存在なのに……。



 ……いつか、俺たちみんなで平和な“世界”を創ってみせるから。絶対に、誰もが羨む“世界”を築き上げてみせるから。お前が望んでいた、理想の“世界”を。


 ―――それまで待っていてくれ、リクル。


































「リクルー! 朝よっ 早く起きなさい〜」


 今日は珍しい。いつも鬼のような形相で起こしにくるお袋が起こっていない。やけに声が弾んでいる。あ、そうか。今日は珍しく親父が帰ってくるんだな。


 「分かったよー。今起きるから。本当はもっと寝ていたいけど」


 寝ぐせの目立つ髪を掻きあげ、布団から身を起こした。ベッドではなく、布団だ。根っからの布団派なのだ。そしてゆっくりと立ち上がり、教科書やお菓子のゴミが散乱する部屋を見渡した。


 ドアのすぐ横に掛けられている縦長たてながの鏡の目の前に立つ。そこには、短めショートの女の子風の顔が映っていた。……やっぱり自分はお袋似だ。断言できる。


「あら、リクルちゃん。寝ぐせでせっかくの可愛い顔が台無しよ? ちゃんと髪を梳いておきなさいよー」


 お袋……。おれ、男なんですけど。









「リクルリクルリクルリクルリクル。なんでおれはこんな名前なんだよ……」


 呟いていた通り、おれの名前はリクル・エリル。日本人の親父と日系イギリス人のお袋を持つ、いわばハーフだ。なんでこんな可愛げな名前になったのかなんて、おれには分からない。でも、これはお袋がくれた大切な名前だ。こんな所で簡単に捨てようとは思っていない。




 おれはごく普通の中学生。ちょいとお馬鹿な成績で、オマケに運動オンチ。趣味はあまり立派なモノではないが、読書と冒険。どんな所を冒険したいかなんて、日によって何度も変わるけど。っていうかなんでおれはこんな性格になっちゃったんだろうね。


 親父はこの街でも有名な科学者。国自体では有名かどうかは知らないけど。お袋は名の知れたピアニスト。でも、あの性格からして裏では何やってるかなんて分からない。そんな親から生まれた息子だから、結構期待されていたんだけどなぁ……。




 おれはとにかく生まれたときからやんちゃ坊主だったらしい。親父のメガネをたたき割ったり、お袋のスカートを破ったり、金魚鉢の中に手を突っ込んで金魚を丸飲みしたりと とにかく恐ろしい事ばかりしていたらしい。金魚の味は覚えていないけど。


 でも、そんなやんちゃぶりも小学生に上がると大分収まったらしい。おれは異常なほどの天才的な才能を見せ、見事立派な中学に入学した。でもそこでは恐ろしき天才ぶりは発揮されず、それどころか落ちこぼれって感じだ。何が原因だったかなんて分からないけど、多分周りがあまりにも優等生すぎたからだろう。


 ……ちょうどその時ぐらいだったかな。おれが何年も言われ続けた約束を破ったのは。両親や祖父母から耳にイカ……じゃなくてタコができるほどこう言われていた。




『―森は邪悪と狂気が渦巻く、足を踏み入れてはいけない聖地。その森に足を踏み入れた者は、神の裁きに遭う』ってな。




 冒険好きなおれは目を離した隙に何処かへ消えてしまうから、両親や祖父母も心配でたまらなかったのだろう。だからあれほど昔話のように聞かされたんだ。



 おれの家の裏には大きな広葉樹の森がある。この森は祖父のさらに祖父の時代以前から続く、神秘的で怪しげな森だ。広さは……並みの中学校の敷地より少し広いかな。


 おれは何度もこの森を探検したいという衝動に駆られた。でも、好奇心よりも恐怖心の方が大きく、探検するどころではなかった。まだ幼くして神の裁きなんかに遭いたくないからな。冒険心よりも命の方が大切だ。


 でも、おれの両親は仕事が忙しく、あまり家には帰ってこない次期もある。―――今はお袋だけお休み中だ。ゴールデンウィークも仕事だったからな。親父は今日早く帰ってくる予定だけど―――その隙をついて、おれはこっそりと森に忍び込んだんだよな……。そしてすぐに怖くて引き返してくる。そんなことしなければ良かった、と今更後悔しても遅いんだけどな。









「たっだいまぁぁぁ………」


おれは今日も早く家に着くと、勢いよくドアを開けた。でも、広々とした家の中に人の気配はまったくせず、孤独と悲しさだけが自分の身に伝わってきた。最近いつもこんな状態なので、少しは慣れてきた。でも、やっぱり孤独というものは何だか虚しい。


 今日はお袋がいたはずなのに……。そう思いながらテーブルの上に置かれた夕食と可愛らしいメモを見、すぐに事情が分かった。




 ―――お父さんとデートに行ってくる。10時には帰る。お母さん




 おれはリビングのテーブルの上に置かれていた冷めた夕食をたいらげると、そそくさと自分の部屋に向かった。先ほどよりも散らかった、おれだけの空間だ。この部屋だけ電気を点け、窓を少し開けて椅子に座った。

 




 机の上にはいつもお決まりの本が置かれている。この本はおれが10歳の誕生日の時に買って貰った本だ。今思えば、結構おれって物持ちいいんだよなーって思ってしまう。教科書の束を本棚に押し込み、読書できそうなスペースをつくった。


 その本の内容は主人公の少年が大きな原生を探検して、次々とモンスターをやっつけるというありきたりな話。でも、主人公がその親友の女の子を助け出し、最後には二人で故郷へと戻るベタなストーリーがおれは大好きだ。


 冒険好きなおれにとって大きな森の冒険というのは、心からの憧れだった。幼い頃からの夢がこんなのって、少々恥ずかしい。でも、夢をずっと諦めないってのもいいかも。そう思うおれだった。


「冒険が、憧れか……」


 おれはその本の表紙を開くと、早速冒頭のページを読み始めた。読んでいるうちに、窓から優しく吹く春の風の子守歌によって、おれはそのまま熟睡してしまった。










 ………。


 こんな馬鹿げた幼いころの憧れを、実際に体験することになるなんて誰が思うかな。でも、実際にはあるんだよ、リクル。


 ―――俺たち魔獣族だけの世界が。魔獣族だけの希望が。












 蛍光灯がやけに眩しい。まるでおれの真隣にある窓からこぼれ落ちているような…。ってそんなことありえないじゃん! 朝になっちまったんだ!


 隣の寝室を覗いてみると、親父とお袋は別々のベッドで爆睡していた。まったく、おれのことを放っておいて……


 朝風呂に入ろうと、おれは着ていた服を全て脱ぎ去り、素っ裸でカーテン開けっ放しのリビングを猛ダッシュで駆け抜けた。


 隣のおばちゃんに見られた。















 ――大切なものは、いつのまにか失っているものだ。

 だけど、まれにそれに気づいてしまう人が居る。


 大切なものを失うことを見る、それはとても辛いことだ。

だけど同時に、新たなる力を得ることができる……。














 おれは軽く焼いたトーストのかけらを口に放り込んだ。すこし咳き込んで吐きそうになったけど、どうにか生き延びることができた。こんな事で死んだら笑い物にしかならない。


 まだぼさぼさのままの髪の毛を掻き上げ、視界を良くすると覚束無おぼつかない足取りで数十メートル先の交差点へと走った。途中石につまづいて倒れそうになったが、どうにか気合いで持ちこたえた。気合いは本当に大切だ。


 ちょうどそこで、どこかで見たことのあるような女の子が立っていた。えーと、彼女の名前は……思い出せない。ってアンタ! 何しようとしているんだよっ!!


 目の前に立っていた女の子は、向こうから猛スピードで走ってくる大型トラックに向かって、道路を歩いているのだ。……もしかして、おれって今、自殺という行為を目の当たりにしようとしている!?


「あんた! 何しようとしているんだよ!!」


 彼女はおれを振り向きながらも、足を止めようとはしなかった。彼女はおれと似たような制服を着ていることから、同じ学校の生徒だと分かった。


「ちょっと! 自殺はダメだって。親から貰った命なんだぞ? ちゃんと大事にしなきゃ……っておい!!」

「離してっ!!」


 彼女はおれの手を振り解き、トラックの目の前に立った。どうしても助けたいおれは、自分の身など捨てて彼女を突き飛ばし、目の前に迫る鉄の塊の攻撃に耐えた。その瞬間、目の前が真っ暗になってしまった。












 リクル、お前はこんな所では死んではいけない。お前は俺たちの出来なかった、果たせなかった希望を実現させる力を持っている。だから、死んではいけない。


 ……いや、俺は何があろうと殺させない。お前をわが身が朽ち果てるまで護ってみせる。


















 気が付けば、そこは病院だった……ってシチュエーション、結構ベタすぎないか!? ま、その代わりに自分は生きることができた……。それでいいんだけどね。


 おれがベッドから起き上がったのを見ると、お袋は嬉しそうにおれのもとへと飛び込んできた。腕や頭が痛むと思ったら、生々しい真っ白の包帯が巻かれていた。


「リクル!! 良かった……。生きていたのね」

「母さん、生きていちゃ悪いのかよ」


 おれのお袋、リリス・エリルは美人で人の眼を引く存在だ。そんなお美しい母親の息子なんて、うらやましがるのが当然だろう。親父はありきたりな科学者だけど。なんでこんなデコボコ夫婦になったのかは知らないけど、お袋が親父を気に入ったらしい。


 でも、その二人の出会いがなければおれはこの世に存在してすらいなかった。それだけは感謝しないとね。


 っていうかおれは何故こんな事になっちゃったんだっけ。ああ、そうだった。確か登校中に自殺未遂の女の子を助けて……って彼女はどうなったのだろう!? とても心配だ……。


「おれが助けた女の子はどうなったんだろう……」

「ああ、あの子の事ね。リクルが自分を助けてくれたのに、事故に巻き込んでしまったって通報してくれた子よ。アナタが事故にあったなんて、お母さん死ぬかと思ったわ〜。この可愛いリクルちゃんにもし、何か恐ろしいことがあったら……!! お母さんも身投げしちゃうわ!」


 お袋は自分の肩を抱き、身を震わせた。おれは少し引き気味だけど、こんなにおれの事を心配してくれるお袋で良かったと思う。親父もさっきまでは付き添ってくれていたらしいけど、また実験の為に研究所へと戻ったらしい。


 ……改めて自分の身体を見てみる。どうにか骨折はせずに済んだようだ。でも至る所に包帯が巻かれており、その中を覗く気にはならなかった。


「リクル、お母さんちょっと買い物でも行ってくるわ。食べたいものはある?」

「いや、特にないよ。気晴らしにでもしばらくぶらぶらしてるといいよ」


 おれはお袋を見送ると、ふと病室にある小さな窓から外を眺めた。ここは3階だと聞いたから、それなりの高さがあった。ごく普通の町並み、ごく普通の景色だった。そして、 おれはまた病室内を改めて見回してみる。小さな机が置いてあって、そこには小さな花瓶と小さな一輪の鼻……じゃなくて花があった。


 ありきたりな病室の一角だ。はじめて事故に遭い、はじめて怪我で病院に来たけれど、まったく違和感などはない。それどころか、妙な安心感を抱いたほどだ。


 ……気のせいかな。意識が戻るまでの間、おれは変な言葉を聞いた。『殺させない。護ってみせる』と。そんなただの夢に希望を抱いていただけかもしれない。気のせいか、懐かしい感じもしたけど。


 再び眠りに就こうとしたとき、何か聞き覚えのない雑音が頭の中で響いた。言うなら、たまにテレビに映る砂嵐のようだった。その雑音はどんどん大きくなり、ついにはまわりの音が聞こえなくなった。
















 この音を振り払おうと、必死で眼を閉じていた。しばらくすると雑音は収まり、まわりの音も戻ってきた――って何これ!?


 おれはいつの間にか、家の裏庭にあるような大きな広葉樹の森の前に立っていた。体中の傷による痛みは消え、ちゃんと地面に足をつけて立っている。どういう事なんだよ……


 おれはまた病院に戻ろうとしたが、後ろにはいつもあるはずの自分の家がない! ただの荒野と廃家が広がり、所々に大きな木が立っているだけだった。おれは異世界に飛ばされたような気がして、知らない街で迷っているように思えて仕方がなかった。




 ……目の前にあるのは馬鹿でかい森だけ。後ろに引き返そうにも、別の道を選ぼうにもおれは何もできない。―――おれは祖父母や両親から言われ続けていた約束を破り、とうとう森に入り込んでしまった。






第2話に続く。


続編に続きます!!

お楽しみに〜☆

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