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新米城主、ノリと勢いで。  作者: 大紅三
第一章 敵国、西ベルン城へ
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処遇の決定と

「酔っ払いの抜刀ほど見っとも無い物はないな!」

 刺さった剣を押し返すと、バルガは剣と一緒によろけて床に転倒した。

「こ、小僧め! この小僧め!」

 その後も何かを叫んでゲオルグを罵倒したが、呂律が回らず言葉にすらなっていなかった。よろめく体を兵士に支えられ、酔っ払ったバルガが部屋を後にする。

 静寂を取り戻した部屋で、最初に口を開いたのはソフィーティアだった。

「貴方、ゲオルグって言ったわね? ありがとう、良い人なのね」

 ソフィーティアが微笑みをゲオルグに向けると、テレーズは声を張上げた。

「敵国の城主が良い人間のはずがありません!」

「でも私をかばって助けてくれたわ。テレーズに今のような行動が出来る?」

「そ、それは……その……」

 悔しそうな表情で口をつむぐテレーズ。

 ソフィーティアが血を拭っているゲオルグに言う。

「そうだわ! ゲオルグ、貴方を今から私の正式な配下に任命するわ!」

 ゲオルグはすぐにその意味を察した。

「本当か!? じ、じゃあ処刑は?」

「処刑もしないし拷問もしないわ。基本的な身の安全は私が保障するから」

「おおーっ! た、助かった!」

 喜ぶゲオルグを歯ぎしりしながら睨みつけるテレーズ。

「ソフィーティア様! 処刑は決定事項ですが!」

「私は一言も処刑に同意するなんて言っていないわ、テレーズ」

「こんな恐ろしげな男を生かしておくと言うのですか!」

 声を荒げるテレーズとは対照的に、ソフィーティアは落ち着いて喋る。

「私って、人を見る目があるのよ」

 ゲオルグもここぞとばかりに加勢する。

「そうだっ! 言っておくがな、俺はすこぶる有能なんだぞ!」

「貴方には聞いていません!」

 間髪入れず、テレーズが遮断する。

「この男が反逆したらどうするのです!」

「俺はそんな真似はしない! 騎士道精神の誇りにかけて誓約を――いってえ!」

 テレーズの扇子がゲオルグの頬を直撃した。

「いい加減に黙りなさい!」

「た、助けてくれソフィーティアっ! 今、俺の身の安全が侵害されたぞ!」

 ソフィーティアはゲオルグの手を引いて城主の椅子に腰掛けた。

「反逆なんか起こしても、すぐに城中の兵士達が止めるわ。彼らの力を信用できないの?」

「そういう問題ではありません! いいですか、とにかく決定事項なのです!」

 テレーズはソフィーティアに背を向けた。そしてやり取りを静かに見ていた兵士の一人に命令する。

「この男が何か問題を起こしたら、すぐに斬って捨てなさい! それと、一刻も早く東ベルン城に使いの馬を出すのです!」

「使いの用件はなんでしょうか?」

「身代金をたっぷりと要求しなさい! 一刻も早くこの男を追い出すのです!」

 それだけ言い残し、テレーズは乱暴に扉を開けて部屋を後にした。

 同時に、またソフィーティアがけらけらと笑い始める。

「アハハ……あーあ、完全に嫌われちゃったわね、ゲオルグ」

「そんなことはどうでもいい。それより助けてくれたことに礼を言うぞ」

「あら、先に助けてもらったのは私なんだから、おあいこよ」

 ゲオルグは思考をすぐさま次の行動へと切り替えた。

「ところで俺の城が見える場所はないか?」

「えっと、南東の大きな塔からなら……」

「南東……そうか、分かった」

 踵を返し、赤い絨毯の上を走り抜ける。

「少し自由にさせてくれ!」

「ち、ちょっと! ちょっとーっ!」

 背後から響く声を無視して、ゲオルグはあっという間に館を後にした。


 走りながら、ゲオルグは改めてこの城を見回してみる。

 風車が回る塔、パンの焼ける香りがする塔、衣類やシーツが干してある塔……。この城には様々な機能を備えた塔が設けられていた。攻防の拠点としての機能だけではなく、単独でも十分に日常生活を行える機能も整っているらしい。水場も豊富に確保されており、ゲオルグは飲み水の確保すらまともに出来ていない城をいくつも見てきているので、その点ではこの城がまともな部類に入ると評価した。

 石畳の続く途中にぽっかりと開いた井戸に立ち寄る。水を汲んで火照った体に流し込むと、恐ろしく冷たい水が喉元を中心に体温をぐんと下げる。

「馬にばかり頼っていると、体が鈍るな」

 乱れた呼吸を整え、傾いた太陽を背にまた走る。程なくして、ソフィーティアの言っていたと思われる南東の大きな塔に辿り着いた。

「なんだ、結局は戻ってきただけじゃないか」


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